第54話 余った銅
秋。
山裾の小屋。
流れは。
少しずつ増えていた。
縄。
草鞋。
組紐。
修理した鍋。
そして最近は。
銅細工の小屋も。
前より忙しい。
カン。
カン。
金属を叩く音。
火。
煙。
熱。
以前より。
明らかに仕事が増えていた。
その日。
銅細工の男が。
万吉のところへ来た。
少し困った顔。
「若様」
「相談が……」
万吉。
顔を上げる。
銅細工の男。
少し考えながら言う。
「流石に」
「直せん物は、
銅塊にしてたんですが」
割れ過ぎた鍋。
砕けた金具。
使えない破片。
それらを。
溶かし。
まとめ。
銅塊にしていた。
「ただ」
「修理の差材としては、
少し余ってまして」
「そのまま売るか」
「何か作る方がいいのか……」
万吉。
少し考える。
余る。
止まる。
流す。
いつもの思考。
そして。
流れ商人を見る。
「何なら売れる?」
流れ商人。
少し考える。
銅。
量。
加工。
そして。
ぽつり。
「そうですね」
「槍の刃の留め具とかだと」
「少量の銅で、
数作れます」
「益も出ると思います」
さらに。
少し真面目な顔。
「他にも」
「武具関係の金具は、
いいと思います」
之正。
少し反応する。
武具。
戦国。
需要は尽きない。
万吉。
さらに聞く。
「武具の職人に、
流せるか?」
流れ商人。
頷く。
「ええ」
「渡りを付ける事は可能です」
沈黙。
万吉。
銅塊を見る。
小さい。
だが。
量はある。
そして。
ぽつり。
「小さくて、
数作れるのはいいな」
流れ商人。
少し笑う。
「若様らしいですね」
普通なら。
武具。
と聞けば:
「強い」
「立派」
「高い」
を見る。
だが万吉は。
「小さい」
「数作れる」
「流しやすい」
を見ている。
銅細工の男も。
少し驚いた顔。
万吉の目には。
武具ですら。
「流れやすい形」
として映っていた。
その後。
万吉。
銅塊を指差す。
「これ、
止まってるの嫌だな」
銅細工の男。
少し笑う。
「若様は、
本当にそればかりですな」
万吉。
普通。
「止まると、
もったいない」
その場。
少し静かになる。
壊れた鍋。
余った銅。
普通なら。
捨てる。
積む。
終わり。
だが万吉は。
そこから。
「何へ流せるか」
を考える。
流れ商人。
静かに思う。
この若。
本当に。
全部を。
流れで見ている。




