第45話 「見世」 あるいは 「税は取るぞ」
銅細工の小屋が出来て。
数日後。
山裾。
カン。
カン。
銅を叩く音。
割れた鍋。
曲がった金具。
少しずつ。
直されていく。
万吉。
その様子を見ながら。
流れ商人へ聞いた。
「どうだ」
「売れるか?」
流れ商人。
少し考える。
「直りは良いです」
「鍋なんかも、
ちゃんと使えます」
「ただ……」
少し困った顔。
「売りづらいですね」
万吉。
止まる。
流れ商人。
周囲の品を見る。
縄。
草鞋。
紐。
修理した鍋。
「今は」
「市へ持って行って、
売り歩いてますが」
「数増えると、
少したまってきてます」
万吉。
少し考える。
流れが。
止まり始めている。
すると。
流れ商人。
ぽつり。
「見世でも出せれば」
「違うでしょうが」
沈黙。
万吉。
即答。
「じゃ、
父に聞いてみるか」
数刻後。
黒田屋敷。
黒田職隆の前。
職隆。
最近。
少し慣れて来ていた。
万吉が来る時。
大体。
何か増える。
そして今回も。
来た。
万吉。
当然のように言う。
「父」
「城下の市に、
見世出させたいのですが」
少し考える。
「端っこでいいので」
職隆。
止まる。
「……見世?」
「お前」
「今度は何を売る気だ?」
万吉。
普通に答える。
「紐とか」
「直したやつとか」
「そのあたりです」
職隆。
静かに万吉を見る。
紐。
縄。
修理した鍋。
つまり。
山裾の小屋の流れ。
そのもの。
職隆。
しばらく考える。
そして。
ぽつり。
「まあ、
良いが」
万吉。
少し顔を上げる。
職隆。
続ける。
「その代わり」
「売り上げから税は取るぞ」
「嫡男だからといって」
「特別扱いはせぬ」
その場。
少し静かになる。
之正。
少し万吉を見る。
どう返すか。
すると万吉。
即答だった。
「それでいいです」
職隆。
少し止まる。
万吉。
当然のように続ける。
「流れれば、
問題ない」
職隆。
思わず少し笑った。
この子は。
本当に。
「止まらない事」
しか見ていない。
その後。
万吉が部屋を出た後。
職隆は。
静かに之正へ聞く。
「……之正」
「お前」
「どこまでやらせておる」
之正。
少し困った顔。
「私にも、
分かりません」
「気付けば、
ここまで増えておりました」
職隆。
苦笑する。
城下に見世。
つまり。
黒田の嫡男が。
自分で流れを作り。
自分で商いを回し始めた。
という事だった。
だが同時に。
職隆は少し感じていた。
万吉の作る流れは。
ただ銭を集めるものではない。
人。
仕事。
技。
全部を。
止めずに回している。
だから。
人が集まり始めているのだと。




