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第44話 「銅」 あるいは「離れに小屋を建てるか」


書写から。


銅細工の男と。


子供二人を連れて帰って来た。


山裾の小屋。


縄。


草鞋。


荷。


人。


そこへ。


新しく。


金属を叩く音が混ざる。


最初。


周囲も少し戸惑った。


「銅細工?」


「鍋直すのか?」


だが万吉。


普通に受け入れている。


「直せるなら、

使える」


それだけだった。


その日。


万吉は。


流れ商人を呼ぶ。


「銅の壊れたやつ」


「買い付けできるか?」


流れ商人。


少し考える。


「まあ」


「割れた鍋とか」


「壊れた金具とか」


「捨てられてる物なら、

安く入ると思います」


「直せるなら、

売れますし」


万吉。


頷く。


壊れた物。



直す。



また流す。


流れになる。


その後。


万吉。


周囲を見る。


今の小屋。


かなり人が増えた。


通いの女達。


縄。


紐。


草鞋。


帳面。


そこへ。


カン。


カン。


ドン。


銅を叩く音。


万吉。


少し考える。


「……これ」


「近くだと、

気が散るな」


流れ商人。


苦笑。


「まあ」


「どんかんやられたら、

流石にうるさいですね」


組紐の女も。


少し笑う。


「話聞こえなくなりますし」


万吉。


さらに周囲を見る。


山。


木。


少し離れた空き地。


そして。


当然のように言った。


「離れたところに」


「小屋でも建てさせるか」


少し考える。


「火使う場所もいるな」


「炉でも置く」


之正。


少し周囲を見る。


確かに。


火。


煙。


音。


人が増えた今。


混ぜると流れが悪い。


万吉は。


自然に。


編む場所。


置く場所。


売る場所。


直す場所。


を分け始めていた。


山裾には。


少しずつ。


「仕事ごとの流れ」


が出来始めていた。


その時。


銅細工の男。


少し驚いた顔で聞く。


「……俺に、

小屋まで作るのか?」


万吉。


きょとん。


「火使うだろ?」


「危ないし」


「音もうるさい」


「だから離す」


当然。


という顔。


男。


少し黙る。


今まで。


自分の仕事場など。


持った事が無かった。


寺の端。


借り場。


雨漏りする軒下。


そんな場所ばかりだった。


だが今。


万吉は。


「直す仕事を置く場所」


として。


自然に組み込もうとしている。


横で。


流れ商人が小さく笑う。


「若様」


「どんどん増やしますなぁ」


万吉。


普通に答える。


「増えた方が、

流れやすいだろ?」


その言葉に。


之正は静かに思う。


万吉の中では。


もう。


「小屋」ではない。


人。


物。


仕事。


全部を流す。


一つの場所になり始めていた。


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