第41話 「何が出来る」 あるいは 「使ってやれ」
最近。
井上之正は。
川普請の指揮を任される事が増えていた。
その日。
村の年寄りから。
相談を受ける。
病。
崩落。
飢え。
親を亡くした子供達。
「食わせるにも、
限界がありまして……」
「どこか、
使える場所でもあれば……」
之正。
少し悩む。
そして結局。
万吉へ相談を持って行った。
翌日。
山裾の小屋。
何人かの子供達が連れて来られる。
痩せた子。
黙った子。
怯えた子。
小屋の空気も。
少し静かだった。
万吉。
その子達を見る。
しばらく。
何も言わない。
そして。
当然のように聞いた。
「おぬしら」
「何が得意だ?」
子供達。
少し戸惑う。
その中。
一人の女の子が。
小さく言った。
「……おっかに、
紐は教えてもらいました」
万吉。
頷く。
次。
男の子。
少し胸を張る。
「おれ、
村で一番足早い」
その瞬間。
万吉。
即答。
「ふん」
そして。
流れ商人を見る。
「足が速いそうだ」
「使い走りに使ってやれ」
流れ商人。
少し止まる。
だが。
すぐ頷いた。
「……分かりました」
次。
紐を作れると言った女の子。
万吉。
最近。
女衆のまとめ役みたいになり始めている。
組紐の女を見る。
「紐ができるそうだ」
「見てやれ」
組紐の女。
少し驚く。
だが。
優しく頷いた。
「こっち来な」
女の子。
少し安心した顔。
万吉。
さらに。
他の子供達を見る。
「お前は?」
「何が出来る」
小さな男の子。
おずおずと言う。
「……いっぱい、
木の枝ひろえる」
別の子。
「きのみ、
あるとこ知ってる」
また別の子。
「おれ、
力ある」
口々に。
出来る事を言い始める。
万吉。
全部聞いている。
否定しない。
笑わない。
ただ。
振り分ける。
「木拾えるなら、
焚き場だな」
「実の場所知ってるなら、
案内しろ」
「力あるなら、
運べ」
当然のように。
役を与える。
その場にいた者達は。
少しずつ気付き始めていた。
万吉は。
「可哀想だから置く」
ではない。
「出来る事を見つけて、
流れへ乗せる」
それを。
当たり前のようにやっている。
そして横で。
井上之正は。
静かに子供達を見る。
さっきまで。
行き場のなかった顔。
怯えていた顔。
それが今。
少しだけ。
前を向いていた。
万吉は。
そんな空気に気付かないまま。
普通に次を考えていた。
「……子供、
多くね?」




