第40話 「使いにくい」 あるいは 「こっちで使ってやれ」
小屋の中。
万吉は。
戻って来てから。
ずっと確認を続けていた。
物。
銭。
人。
流れが止まっていないか。
全部見ている。
その後。
ふと。
若い僧へ向く。
「城から、
子供は来てるか?」
若い僧は頷く。
「ええ」
「ちゃんと来てます」
「今日は朝から、
三人ともいましたよ」
万吉はさらに聞く。
「字」
「姿勢」
「よくなったか?」
若い僧は少し考える。
「多少は」
「字は、
かなり丁寧になりました」
「姿勢も、
前よりは」
万吉は頷く。
次。
流れ商人を見る。
「変な動きは、
よくなったか?」
流れ商人は少し笑う。
「ああ、
あの子ですか」
「荷運びについて歩かせたら」
「前ほどではないかと」
「周り見て歩くようになりました」
万吉。
少し止まる。
そして。
静かに聞いた。
「見てたか?」
流れ商人は頷く。
「えぇ」
「ちゃんと見てます」
「道も」
「人も」
「荷も」
万吉。
少しだけ安心した顔。
その後。
ぽつり。
「そうか」
少し沈黙。
そして。
万吉。
当然のように続ける。
「あれらは」
「城では、
使いにくいと思われてるから」
小屋の皆。
少し止まる。
万吉は気にせず言う。
「こっちで使ってやれ」
静かになる。
若い僧。
少し目を見開く。
流れ商人も。
組紐の女も。
言葉を失う。
使いにくい。
確かに。
そういう子供達だった。
字が雑。
姿勢が悪い。
落ち着きがない。
城では。
評価されにくい。
だが万吉は。
「使えない」
とは言わなかった。
「使いにくい」
と言った。
つまり。
置き方を変えればいい。
万吉は。
人も。
「どこへ流すか」
で見ていた。
その時。
組紐の女が。
少し笑う。
「……若様」
「それ」
「私達にも言ってません?」
沈黙。
万吉。
きょとん。
若い僧。
苦笑する。
流れ商人は肩を竦めた。
確かに。
ここにいる者達も。
皆。
どこかで。
「半端」
と言われた者達だった。
寺で埋もれていた僧。
一流になり切れなかった女。
店を失った商人。
だが今。
ここでは回っている。
働いている。
必要とされている。
万吉は。
そんな空気に気付いていない顔で。
普通に言った。
「動けば、
いいだろ?」
その一言に。
誰もすぐには返せなかった。




