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第26話 「役割」 あるいは 稼いでくれ」


書写から戻った万吉は。


止まらなかった。


山裾の小屋。


そこへ戻るなり。


また新しい小屋を建て始める。


村人達はもう慣れていた。


「今度は何です?」


「ここ掘ります?」


「木どれだけ要る?」


誰も。


「何故作るのか」


とは聞かない。


万吉は当然のように答える。


「こっち、

ものおき」


「こっちは、

さぎょうば」


木が運ばれる。


柱が立つ。


縄で締める。


杭を打つ。


気付けば。


山裾に。


小さな集まりが出来始めていた。


人。


物。


仕事。


流れが、

そこへ集まり始めている。


そして。


万吉は書写から連れて来た三人を呼んだ。


若い僧。


組紐の女。


流れ商人。


三人とも。


まだ少し居心地悪そうだった。


万吉は、

建てかけの小屋を指差す。


「今建ててる小屋で」


「売り上げとか」


「周りのこと」


少し考え。


「管理して、

保管してくれ」


三人は少し止まった。


万吉はまず。


物置を指差す。


「作ったもの、

置く」


「縄」


「紐」


「草鞋」


「なくしたら、

だめ」


真剣な顔。


かなり本気だった。


さらに。


別の小屋を指差す。


「こっち、

作業場」


「近くの村の女が、

通いで来る」


「見てやってほしい」


組紐の女は少し困った顔になる。


「そこまで出来るかは……」


まだ自分も未熟。


そういう顔だった。


だが万吉は気にしない。


「やりながらでいい」


当然のように言う。


出来る者に、

出来る事をやらせる。


それだけだった。


次に。


流れ商人へ向く。


「市で売ってほしい」


「塩とか、

銭とか」


「良さそうなのと換えて」


商人崩れは少し苦笑した。


「……完全に商いですな」


万吉は当然のように頷く。


「うん」


悪い事を言われたと思っていない。


ただ必要だから、

流しているだけ。


そして。


若い僧へ向いた。


「売り上げ」


「ちゃんと書いて」


「働いた者に、

対価払って」


若い僧は少し目を丸くした。


「私が帳面を?」


万吉は頷く。


「字、

きれいだから」


あまりにも単純な理由だった。


だが。


だからこそ。


変な気負いが無い。


そして最後。


万吉は後ろにいた。


井上之正を見る。


之正は少し嫌な予感がした。


万吉は当然のように言う。


「あと井上は」


「川さらい」


沈黙。


之正は静かに目を閉じた。


やはり。


やはりそうなる。


もう逃げられない。


完全に、

川担当である。


万吉はさらに続けた。


「川さらいしたものにも」


「ここから、

対価出す」


物置。


作業場。


売り上げ。


全部を指差す。


「だから」


少し考え。


「しっかり、

稼いでくれ」


三人は少し止まった。


流れ商人が苦笑する。


「……若様」


「それ」


「完全に雇い主の台詞ですよ」


万吉は意味が分かっていない顔だった。


「そうか?」


横で。


之正は静かに思う。


この子は。


もう自然に。


仕事を作り。


人を配置し。


利益を回し。


対価を払おうとしている。


しかも本人は。


多分。


「流れを止めたくない」


それだけなのだ。


だが。


だからこそ。


人も物も。


自然と万吉の周りへ流れ始めていた。


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