第24話 「作業場」 あるいは 「置く場所」
小屋作りは。
思ったより早く始まった。
若者達が木を切る。
村人達が土を運ぶ。
縄で組む。
杭を打つ。
山裾には、
朝から木を叩く音が響いていた。
最近では。
もう誰も。
「何故作るのですか?」
とは聞かない。
「若様」
「柱はここで?」
「屋根もっと伸ばします?」
「木、
もう少し切りますか?」
普通に話が進む。
まるで。
最初から決まっていた仕事のように。
万吉は地面を見ながら、
指示を出していた。
「雨、
こっちから来る」
風向きを指差す。
「だから、
ながく」
屋根の張り出しを示す。
さらに。
「水、
こっち流す」
小さな溝へ線を引く。
井上之正は、
もう驚かなかった。
この子は。
まず。
「水」
から考える。
雨。
流れ。
溜まり方。
そこから全部始まる。
やがて。
小屋が形になっていく。
木組み。
簡素な壁。
広めの屋根。
まだ粗い。
だが。
人が集まり。
作業するには十分だった。
すると万吉。
周囲へ当然のように言った。
「ここにも、
たてる」
村人達が、
少しだけ変な顔をする。
「まだ増えるのか」
そんな顔だった。
万吉は頷く。
「ここは」
「かよいでくる、
おんなたちの」
少し考えて。
「さぎょうば」
之正は少し驚いた。
確かに最近。
縄。
俵。
草鞋。
そういう細かな作業は。
女達が多く担っていた。
だが今までは。
外。
庭先。
軒下。
全部、
天気次第だった。
万吉は小屋を指差す。
「雨でも、
できる」
「風も、
だいじょうぶ」
女達が顔を見合わせる。
「……確かに」
「屋根あるだけで違うねぇ」
さらに万吉。
別の場所を指差した。
「こっちは」
「つくったもの、
おく」
「あと」
「どうぐ」
之正は静かに周囲を見る。
作業場。
保管場所。
人が集まる場所。
荷が置かれる場所。
もう。
ただの遊びではない。
「仕事場」
が出来始めていた。
しかも。
自然に。
誰かが命じた訳でもない。
万吉が。
「必要」
と思ったから作った。
その横で。
万吉はまた、
地面へ線を描いていた。
小屋。
道。
川。
さらに。
その周りへ、
また線が増えていく。
之正はその線を見る。
そして静かに思った。
(……この子は)
(もっと人が来るつもりでいる)




