第23話 「欲しい物を言え」 あるいは 「小屋」
# 第23話
## 「欲しい物を言え」
あるいは
## 「小屋」
そこからの万吉は。
凄かった。
最初は。
縄だけだった。
川で使う為。
木を縛る為。
土を押さえる為。
必要だから作らせた。
だが次第に。
作る物が増えていく。
縄。
草鞋。
紐。
木杭。
俵。
村で作れる物を。
万吉はどんどん集め始めた。
そして。
それを市へ持って行く。
塩へ換える。
銭へ換える。
米へ換える。
流していく。
さらに。
それをまた。
褒美へ使う。
「頑張った」
「だからやる」
万吉にとって、
それは自然な事だった。
働く。
↓
褒美が出る。
↓
また人が集まる。
↓
もっと作れる。
流れが出来ていた。
しかも万吉は。
不思議と出し惜しみしない。
「これ、
持ってけ」
「次も頼む」
すると皆。
また来る。
気付けば。
万吉の周りには。
常に人が集まるようになっていた。
村人。
若者。
職人。
農民。
しかも最近では。
向こうから聞いて来る。
「若様」
「今度は、
何してほしいんです?」
「どこ掘ります?」
「何作ります?」
井上之正は、
少し遠い目をした。
(完全に流れが出来ている……)
しかも。
本人は多分。
半分遊び感覚。
面白い。
必要。
だから作る。
それだけ。
その日も。
万吉は地面へ座り込み。
枝で何か描いていた。
周囲には村人達。
皆、
自然に集まっている。
「若様、
次は何です?」
万吉は少し考える。
「うーん」
そして。
当然のように言った。
「小屋」
村人達がきょとんとする。
「小屋?」
万吉は頷いた。
「欲しい」
すると。
もう自然に質問が返って来た。
「どこに欲しいのですか?」
之正は、
その瞬間少し驚いた。
もう誰も。
「何故そんな物を?」
とは聞かない。
まず。
「どこに作るか」
を聞く。
完全に。
「若は何か考えている」
前提で動いていた。
万吉は少し考え。
地面へ線を描く。
姫路城。
その北。
さらに。
北山の裾。
「ここがいいかな」
万吉は地面を指差す。
「水がある」
「木もある」
「川も近い」
之正は、
その場所を頭に浮かべる。
山裾。
川。
木材。
水。
人が動くには、
確かに悪くない場所だった。
そして。
少し気付く。
(……人を集める気か?)
小屋が出来れば。
人が集まる。
荷が置ける。
休める。
飯がいる。
物が動く。
流れが生まれる。
万吉は。
そこまで考えているのか。
それとも。
ただ「便利そう」と思っているだけなのか。
之正にはまだ分からない。
だが。
一つだけ確かな事があった。
万吉は。
もう次の流れを見ていた。




