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第121話 「春」


冬。


長かった。


山裾。


雪。


風。


寒さ。


ずっと続いた。


小屋。


かなり静かだった。


飯。


減る。


薪。


減る。


干し物。


減る。


囲炉裏。


前より小さい。


鍋。


前より薄い。


皆。


少しずつ。


痩せた。


冬の間。


話も減った。


食う。


働く。


寝る。


それを。


静かに回していた。


それでも。


汁を増やし。


山を使い。


売れ残りを集め。


干し物を刻み。


どうにか。


繋いだ。


ある夜など。


鍋の中。


ほとんど汁だった。


だが。


万吉。


普通に飲む。


「温かいな」


周囲。


少し笑う。


そんな冬だった。


その朝。


囲炉裏。


火。


かなり穏やか。


薪を入れていた女。


ふと。


顔を上げる。


「……寒さ、


 少し抜けましたな」


外。


雪。


かなり減っている。


ぽたり。


ぽたり。


水。


流れている。


山。


少しだけ。


色が戻り始めていた。


春。


来ていた。


小屋。


少し静か。


皆。


何となく。


外を見る。


流れて来た者達も。


黙っていた。


冬。


越えた。


それが。


かなり大きかった。


黒田万吉。


外へ出る。


空。


見る。


少し冷たい風。


だが。


冬ほどではない。


万吉。


ぽつり。


「生きたな」


かなり静か。


だが。


その一言で。


小屋。


少し笑った。


井上之正。


苦笑。


「若」


「春一番が、


 それですか」


万吉。


普通。


「大事だろ」


本当に。


その通りだった。


冬。


越えられぬ者も。


いる。


村ごと。


消える事もある。


だが。


この小屋。


越えた。


しかも。


人を増やしたまま。


与吉。


外を見る。


冬前。


あれほど


・狭い


・汚い


・村人小屋みたい


と思っていた場所。


今。


少し違って見えていた。


干し場。


倉。


樽。


薪。


囲炉裏。


全部。


冬を越えるために回っていた。


そして。


本当に。


越えた。


与吉。


小さく呟く。


「……本当に、


 越えたんだな」


ふと思う。


冬は。


耐える季節だった。


だが春は違う。


黒田万吉。


普通に戻って来る。


「井上」


「春だし」


「ため池見るか」


周囲。


少し止まる。


井上。


苦笑。


「若は、


 休みませんな」


万吉。


普通。


「春だからな」


「また流れるぞ」


その言葉に。


小屋の空気。


少しだけ変わる。


冬。


終わった。


つまり。


また


・人


・荷


・市


・普請


動き始める。


春。


それは


「生き残った者達が、


 また動き出す季節」


だった。


外。


山裾。


雪解け水。


流れる。


その音の中。


小屋でも。


また少しずつ。


春の支度が始まっていた。


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