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第122話 「抱えるという事」


春。


山裾。


雪。


消え始めている。


水。


流れる。


土。


少し柔らかい。


小屋。


冬。


越えた。


流れて来た者達も。


近隣村へ。


少しずつ流れ始めていた。


「助かりました」


「春仕事、


 探してみます」


「また働きに来ます」


そんな声。


少しずつ増えていた。


その頃。


姫路。


黒田屋敷。


部屋。


黒田職隆。


報告を受けていた。


相手。


井上之正。


「……全員、


 春を越えました」


職隆。


少し目を閉じる。


「そうか」


短く。


それだけ。


だが。


少し安堵した空気。


確かにあった。


井上。


続ける。


「ただ」


「来年も、


 頼られるやもしれませんな」


職隆。


静か。


井上。


さらに。


「この冬の話」


「周囲へ流れれば」


「“あそこへ行けば、


 生きられる”」


「そう思う者も、


 出ましょう」


部屋。


少し静か。


井上。


視線を落としながら。


続ける。


「毎年受け入れれば」


「今度は、


 小屋の者達が思います」


「何故、


 自分達の飯を削るのかと」


職隆。


静かに頷く。


問題は。


もう。


「善意」


だけではない。


「抱え続けられるか」


それは。


領主側の話だった。


その後。


黒田万吉。


呼ばれる。


部屋。


職隆。


座っている。


万吉。


普通。


「なんです」


職隆。


少し見て。


「冬」


「越えたそうだな」


万吉。


頷く。


「うむ」


「なんとか」


少し静か。


そして。


職隆。


真面目な声。


「万吉」


「飯が足らんから、


 村を出された者を」


「受け入れるという事は」


「その命を、


 背負うという事だ」


万吉。


静か。


職隆。


続ける。


「今年は、


 越えた」


「だが」


「受け入れておいて」


「“出来ませんでした”では、


 済まん」


「それは、


 黒田の名を下げる」


かなり静か。


万吉。


少し考える。


冬。


囲炉裏。


薄い汁。


干し物。


痩せた顔。


全部。


少し思い出していた。


職隆。


さらに。


「助けるなら、


 最後まで責を持て」


「持てぬなら、


 最初から抱えるな」


部屋。


静か。


万吉。


少し俯き。


ぽつり。


「……難しいな」


職隆。


少し苦笑。


「領主とは、


 そういうものだ」


万吉。


少し考える。


そして。


小さく聞く。


「父は」


「ずっと、


 これやってるのか」


職隆。


少し止まる。


それから。


静かに答える。


「だから、


 皆苦しむ」


短い言葉。


だが。


かなり重かった。


春の風。


少し暖かくなり始めていた。


外。


姫路。


人。


流れ始める。


冬を越えた播磨が。


また。


動き始めていた。


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