第111話 くせぇ
猪。
捕まった。
肉。
皆で食った。
かなりうまかった。
炭火。
塩。
脂。
囲炉裏。
久しぶりの肉。
子供達。
かなり機嫌良い。
「うまっ!」
「脂すげぇ!」
「まだ食える!」
だが。
食い終わった後。
残る物がある。
・毛皮
・脂
・骨
。
小屋。
少し静か。
「……で、
これどうする」
普通なら。
捨てる。
だが。
黒田万吉。
捨てるの。
嫌。
「もったいないな」
まず。
脂。
鍋。
入れる。
火。
掛ける。
じわじわ。
溶ける。
女衆。
少し離れて見ている。
「何始めたんです?」
万吉。
真面目。
「灯り」
溶けた脂。
布へ染み込ませる。
皿。
置く。
火。
付ける。
ぼっ。
皆。
少し感動。
「おお……」
「付いた」
「明るいな」
だが。
数秒後。
「くっさ!」
「煙やばい!」
「なんだこれ!」
小屋。
大騒ぎ。
子供。
鼻押さえる。
護衛。
しかめ面。
井上之正。
かなり嫌そう。
「若様」
「これは流石に……」
万吉。
かなり嫌そう。
「……どうにかならんか」
そこへ。
通いの女。
呆れ顔。
「ああ、
何やってるんですか」
皆。
止まる。
女。
普通に言う。
「灰使うんですよ」
「あと、
杉とか松混ぜると」
「少しマシになります」
周囲。
感心。
「知ってるのか」
女。
苦笑。
「獣油なんて、
昔からありますよ」
「臭い抜かないと、
使えませんけど」
万吉。
止まる。
「灰?」
女。
頷く。
「灰汁取るんです」
「一回煮て」
「汚れと臭い抜くんですよ」
万吉。
かなり真面目に聞いている。
すぐ。
試す。
灰。
湯。
脂。
また煮る。
さらに。
杉の木片。
少し入れる。
再び。
火。
付ける。
ぼっ。
皆。
少し待つ。
「……あ」
「前よりマシ」
「煙減った」
「ちょっと木の匂いする」
万吉。
少し満足。
「なるほど」
かなり納得。
さらに。
毛皮。
これも問題。
「暖かいな」
「でも臭ぇ!」
「獣が近い!」
かなり不評。
万吉。
また真顔。
「……どうにかならんか」
女。
普通。
「だから」
「灰を溶いたのに、
一回つけるんです」
「臭い抜けますよ」
「あと、
干す時に風通してください」
周囲。
また感心。
井上。
ぽつり。
「最近」
「女衆の知恵、
かなり重要ですな」
女衆。
少し笑う。
「毎日使ってますからね」
「保存も臭い抜きも」
「生活の方が、
細かいんですよ」
万吉。
毛皮。
じっと見ている。
「……暖かいのに」
かなり惜しそう。
すると。
女まとめ役。
苦笑。
「若様」
「世の中」
「暖かければ全部良い、
って訳じゃないんですよ」
周囲。
笑う。
だが。
その日。
小屋では。
また一つ。
知恵が増えていた。
今まで。
「万吉が試す場所」
だった。
だが今。
「皆の知恵が、
集まる場所」
になり始めていた。




