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第112話 半分


 それから。


 村。


 稲刈りの季節を迎えた。


 金色。


 広がる。


 風。


 揺れる。


 山裾。


 かなり忙しい。


「刈れー!」


「そっち運べ!」


「濡らすな!」


 刈る。


 運ぶ。


 干す。


 秋。


 最後の忙しさ。


 女衆。


 干し場。


 走り回る。


 子供達も。


 束。


 抱えている。


「落とすなよ!」


「わかってる!」


 そして。


 小屋側も。


 保存。


 かなり増えていた。


 栗。


 干し柿。


 生姜。


 梅干し。


 塩。


 樽。


 高床の棚。


 去年まで。


 無かった物。


 かなり増えた。


 その日。


 普請場。


 ため池。


 土手。


 積まれた石。


 井上之正。


 帳面を見ながら。


 口を開く。


「今年は」


「当初の計画の、

 半分ほど進みました」


 周囲。


 静かに頷く。


 本来なら。


 もっと進めたかった。


 だが。


 今年。


・市

・倉

・保存

・害獣

・人手

・収穫



 やる事。


 増え過ぎていた。


 それでも。


「半分」


進んだ。


 それは。


 去年までを知る者ほど。


 大きく見えた。


 去年。


 ここ。


 ただの山裾だった。


 今。


 ため池。


 石積み。


 倉。


 干し場。


 棚。


 全部。


 少しずつ。


 形になっている。


 万吉。


 土手を見ながら。


 ぽつり。


「まぁ」


「流れたなら、

 いいか」


 井上。


 少し笑う。


「若は、

 本当にそればかりですな」


 万吉。


 普通。


「止まると腐るだろ」


 かなり本気。


 周囲。


 少し笑う。


 だが。


 実際。


 流れていた。


 人。


 物。


 知恵。


 仕事。


 全部。


 少しずつ。


 回り始めている。


 木工の男。


 倉。


 増やしている。


 樽屋見習い。


 古い樽。


 直して回る。


 女衆。


 保存。


 かなり慣れた。


 子供達。


 字。


 帳簿。


 少しずつ覚えている。


 井上。


 それを見ながら。


 ふと。


 去年を思い出す。


 最初。


 川さらい。


 そこから始まった。


 それが今。


 ここまで来ている。


 そして。


 稲刈りが終わる頃。


 播磨。


 少し空気が変わる。


 秋と冬の間。


 短い。


 乾いた季節。


 風。


 冷たくなる。


 すると。


 村人達。


 少しずつ。


 口数が減る。


 理由。


 皆。


 知っている。


 この季節。


 毎年のように。


「小競り合い」


起き始める。


 国衆同士。


 水。


 境。


 山。


 奪うほどではない。


 だが。


 放ってもおけない。


 そんな小さな争い。


 その夕。


 囲炉裏。


 男達。


 そんな話をしていた。


「今年も、

 北の方で揉めるかねぇ」


「山境は毎年だ」


「水少ない年ほど、

 荒れる」


 井上。


 静かに聞いている。


 そして。


 万吉を見る。


 万吉。


 火。


 見ている。


「……?」


 まだ。


 空気。


 分かっていない。


 井上。


 少し苦笑。


「若様」


「そろそろ」


「播磨が、

 騒がしくなる季節です」


 万吉。


 少し考える。


「……また水か?」


 井上。


 頷く。


「大体は」


「水か、

 境か」


「山ですな」


 万吉。


 少し黙る。


 そして。


 ぽつり。


「面倒だな」


 かなり本音。


 周囲。


 少し笑う。


 だが。


 井上。


 静か。


 播磨。


 今。


 少しずつ。


 流れ始めている。


 だからこそ。


 この先。


 その流れを。


 奪おうとする者も。


 必ず出始める。


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