第16話.シェルターマンション
どの位、立ち尽くしてたんだろう。
そのくらい長い時間、俺は青龍が飛び去って行った方角の空をずっと見つめていた。
“会えて良かったよ…親友”
親友……。
確かに聞こえたんだ。親友って。
やっと会えたんだ。俺を知ってる奴に。
親友がいたんだ。俺に。
「……なんで……」
もっと…
もっと色々話がしたかったのに……。
「敵って…なんだよそれ……」
なんでそーなるんだよ…。
「いちさん!!!!!」
立ち尽くす俺の目の前に、ドンッという大きな音と地響きを連れて 天馬に乗ったギンが現れた。
「…ギン……」
「…え!?何ですか!?ちょ…泣いてるんですか!?何があったんです!?」
「うぅ…ギンー…それが…」
『大和のクソ野郎はどこだああああああああああああ!!!!!!』
ドカンッという更なる爆音と地震並の揺れを連れて、白虎に乗った世良さんが騒音を吐き出しながら俺の目の前に着地した。
『大和は!?いちさん!大和のクソ野郎はどこDeathか!?ぶち殺してやるぁあああああああああああ!!!』
すっごいうるさい。
「もういませんよ。青龍に乗ってどっか行っちゃいました。…こっち来て大丈夫なんですか?朱雀門は?」
『青龍がいきなりどこかに飛んで行ったのと共に、蜘蛛の子を散らすかの様に散っていったDeath。』
「え?敵、引いたんですか?」
「…そうなんですよ。いちさんの救助を求めて朱雀門に天馬で行ったら、もう敵いなくて。
だから、世良さん連れて来たんです。」
「…どゆこと?」
そこで、俺はギンからこの闘いの流れを聞いた。
あれだけ激しく四神の門を2つも破壊したにもかかわらず、そのまま一気に流れ込んで来るのかと思いきや、
5、6、7区の連合区の奴らは 中央棟を狙おうとはしなかった。
朱雀と青龍の門を破壊した事に満足したのか、それ以上の攻撃を仕掛けて来ようとしなかったのだ。
意外な事に、連合区は青龍&大和の撤退に合わせたかの様に、共に境界線まで撤退した。
『本格的な戦争を始める前の、下調べ……とでも
言いたそうDeathね。』
「こちらの戦力を測ったと……そういう事?」
「5、6、7区が手を組んだという事、そしてその脅威を示す……これが目的だったのですかね。
腹立たしいDeath。」
「ねぇ、世良さん。正直に言ってさ、5、6、7区が組んで連合って派閥になっちゃった以上、この第1区だけじゃ正直きついよね?」
世良さんは悔しそうに両手を握り締めた。
『青龍の裏切りがかなり痛いDeath。なんたって、大和は双葉様に一番信頼をおかれていました。
その大和が……まさか、こんな…』
大和の裏切…。
大和は俺に、はっきりと自分を敵だと言った。
目を見てればわかる。あれは嘘じゃない。
でも……だったら…!!敵だって言うんなら!!
なんで俺に攻撃しなかった!?
“双葉を頼む”!?
だったら…双葉さんを守る立場になる俺は、敵にとっては消しておかないといけない敵だろ!?
「……もぉ……。わっけわかんねぇ。」
つぶやく俺の胸元に、メルがギュッとしがみついた。
「メル?どした?」
「…コ…コワイデ…ス…ナンカ…ナンカ…」
「怖い?もう敵はいないよ?」
「…アウ…コワイ…デシ…」
敵はいなくなった。
でも、メルの目は赤いままだ。
もういいと何度言っても、メルは探知機能をオフにしようとはしなかった。
ただただ、俺にしがみついて震えている。
『ひとまず、敵は境界線までは 引いています。
この間に、本部にて これから対策を練りましょう。
ー…いちさん。双葉様に…お会いして頂けますね?』
「………」
本音を言うと、少し怖かった。
やっと会えた親友の裏切り。
そしてもう一人…俺を良く知る少女。
俺の記憶に関する鍵が、ここにきて一度にいくつも増えたのだ。
でも、大和は363年待ってたって言ってたんだ。
俺が双葉さんを大和に 託したという事を考えると…。
やっぱり双葉さんも同じくらいの年月、俺を待っていた という事になるんだよな……。
リーヴと久遠も(ついでに黒子も)戻って来て、お互いに話をまとめた。
朱雀門にいた4番の類さん、そして玄武門にいた5番の柊さんも合流。
6~10番のナンバー達は、そのまま引き続き4つの門の警備に当たる為に残った。
白虎門と玄武門には、ほとんどの敵がいなかったそうだ。
青龍、朱雀という2つの外門を打ち破ったという事実があれば、今回の闘いでは充分な成果だったのだろうか。
連合区であれば、うち崩すことも簡単だった…というひとつの目安にされてしまったかもしれない。
『いちさん、こちらです。』
「……え?どちらです?」
世良さんが示した場所には、何もない。
「双葉さんはイリュージョンでもするんですか?
なんと!!瞬間移動が出来るのでしょうか!?これは凄い!!僕の知識にはありせん!!」
ギンが目をキラキラに輝かせたその時、世良さんが片足でドンッと地面を突いた。
すると、俺達の目の前に大きな四角い線が浮かび上がって来たのだ。
「…何?この線…」
不思議に思って のぞき込もうとした俺を、世良さんが静止した。
『危ないです。首飛んじゃいますよ?』
「………は?」
首が飛ぶ?どゆこと?
その疑問の答えは、すぐに目の前に現れた。
四角い線に合わせて、四角い物体が物凄い早さで地面から飛び出して来たからだ。
それはあっという間に空高い場所まで伸びてしまい、目視では一番上など とても見えない程の高さとなった。
「…んなっ…何これ!?これって…」
どう見ても、高層ビル!?いや、高層マンションか!?
「…なぁんだ。シェルターマンションですか。つまらない。」
「ちょっと待ちなさいギン!!何がつまらない!?地面からマンションが出てきたんだよ!?ある意味イリュージョンより凄いんだけども!?」
シェルターマンションって言ってたよな?
なるほど…シェルターって地下に作ってそこに入るイメージだったけど、シェルターごと地下と地上を出し入れ自由な上にマンションとか… もうこれ最強のシェルターじゃん!!
「この中に、双葉さんが?」
「はい。最上階におられます。」
『最上階ねぇー♪さっすがVIPは違うねぇぇ』
じゅんの言葉に、世良さんの怒りスイッチが入った。
『あ゛ぁ?
地面の下にシェルターが潜るときは危険な時。
そのシェルターの最上階は、地面の下に潜っているシェルターの中では一番地上に近い為に一番危険な場所になるんDeathけども。頭が筋肉で出来ているとそれすらもわからんのDeathね。なんと哀れな。』
『……今、世良が俺に喧嘩を売った。って事でいいんだよな? 』
「違うから。お前が悪い。」
「じゅんさんの頭が悪い。」
『ちょっと待てこらぁああああ!!クソチビ!!今なんてった!?』
「……クソ…チビ……!?ちょっと…信じられない!!聞きましたか!?いちさん!!チビだけでも許せないのに、この人クソ付けたんですけどー!!」
「今のはギンが悪い。」
「…んがっ!?」
『うひゃひゃひゃ!!バーカバーカチービ!!』
「うるせぇよ じゅん!!キリがないわ!!
あのねぇ!!今俺緊張してんの!!お前らのコントに構ってる心の余裕ないの!!もうちょっと空気読んでくんない!?リーヴみたいにさぁ!!!」
「え?…いや、俺は別に空気読んでる訳ではないぞ?めんどくさいから ほったらかしてるだけだ。」
「ああああああリーヴ様、さすがです!!いいんですよそれで!!私以外の奴らなんか放置してしまえばいい!!」
「これが一番めんどくさい。」
「きゃああああああああああ!!!」
うるさい!!!
何この人達、ほんとに何この人達!!
類さんがクスクス笑いながら俺達を眺め、柊さんは少し不思議そうに首を傾げながら呟いた。
『…賑やかな集団ですね。』
俺もそう思う。




