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第10話.戦場の動き

よくよく考えたら、少し妙な事に引っ掛かった。


「……あのさ。リーヴは双葉さんの顔、知らないんだよね?」

「ああ。俺が頼まれた時はフードコート被ってて見えなかったしな。」

「俺の顔見て反応してなかったって事は、ギンでさえ双葉さんの顔知らなかったって事だよね?」

「はい。顔を表に出さないリーダーは多いですよ?暗殺されやすい立場ですし。」

「うん…。ノアでさえ、ネオの顔知らないしね…」


あれ……?



「……じゃあさ。なんでシュカさんは双葉さんの顔知ってるんだろう?」

「……あ…。確かに…。

いちさんの顔見て、似てるって初めに言ったのはシュカさんでしたね。いくらナンバーとはいえ、他の地区のナンバーですからね…。他地区のリーダーの顔を知るなんて…どうしてでしょう…」


結局、この1区に着いて落ち着いたら話聞こうと思ってたのに、いきなり戦争始まっちゃったしなぁ…。


『シュカならば、よくこの地区に来ては双葉様と直接何か密談してますよ?』


世良さんがケロッとした顔で言った台詞に、ギンが目を見開いた。


「直接!?他の地区のナンバーがですか!?」

『はい。』

「シュカさんが第1区に来ていたのは、双葉さんと密談する為だったのか……。

てか、何を密談してたの?」

『さぁ…。私は、あまりあの男が好きではありませんので。なんかナルシスト入ってそうで。』


入ってそう ではなく、ナルシシストです。


「双葉さんの恋人って、俺じゃなくてシュカさんなんじゃないの?」


俺の言葉を聞いた皆が、眉間にシワを寄せた。


「大事な男を探してるって、聞いたばかりじゃないですか。

シュカさんだったら探すまでもないですよ。ナンバーはどの地区も公表してますから。」

「シュカが片想いしてるんじゃないか?

お前抱きしめたいと言われていただろ。」

「言われとったなぁー。しかも、いちはんじゃなくて顔だとかなんとか。」


思い出させないで欲しかった……。


ダメだ。どんどん話が逸れていく。

俺のせいなんだけど。


「…あのさ。とりあえず、脱線した話を戻そうか…」


今この話題を続けたら、絶対に止まらない。



今ね、俺達戦場へ向かってます!!

闘いに向かっているのだよ!?

しっかりしろ俺!!


『しかし…、このモニターには味方の反応は映るのだが、敵の反応は映らないので…瞬時な戦場の把握がむずかしいのです。味方からの連絡無線に頼るしか……』


「チャー!!!チャー!!」


ふいに、メルが俺の腕を掴みながら上を向いて叫んだ。


「どうした?メル?上に何かあるのか?」


空を見回してみると、少し離れた所で鳥が群を成して飛んでいる。


渡り鳥か……?



その思った瞬間、運転席のモニターがブツンッという音とともに真っ黒になった。


「何!?故障!?」


『屋根を開けてくれ!!ブレイカーギン!!操縦の知識はあるでしょう!?』

「楽勝です。」


運転席に座ったギンは、パチパチと色んなボタンを押したり上げたりしている。


その歳で車の免許持ってるんだろうか……。



「自動操縦が解除されてます!!手動で動かすしかありませんよ!?」


『手動で頼みます。ひとまず、あの鳥を叩き落とす。リーヴ隊長。あんたの銃の腕を見込んで協力を頼みたい。

落とせますよね?』

「止まってる的みたいなもんだ。…というか、隊長はやめてくれ…」


世良さんは笑いながら立ち上がって屋根の上がった機体に足をかけると、頭につけていたゴーグルを下げて目に装着し、鳥の群れを確認した。


『やられた……。』


世良さんはそう呟いて、唇を噛み締めた。


リーヴが飛んでいる鳥をレールガンで丁寧に落として行く。

どこに敵が潜んでいるかもわからない以上、サイレンサーをつけたレールガンで落とすのが最善の様だ。


全ての鳥を落とした事を確認すると、世良さんは鳥が落ちた場所に車を止めた。


「黒子。この鳥はわかるか?」


リーヴの質問に、待ってましたァ♪とばかりに、黒子がすっ飛んできた。


「あぁ、電波孔雀ですね。

改造でもされて、電波を遮断する機能でも埋め込まれたのでしょう。」


「あれ?でも、そしたら敵だって困るんじゃないの?自分の味方の位置わかんないじゃん。」


黒子は両手をふりふりと振って、ため息を付きながら俺に言った。


「彼らが使ってる回線のみを遮断させたんでしょう。」

「そんなこと出来んの!?ハイテクにも程があるんだけど!?」

「簡単ですよ?戦場では、情報の混乱は必須。あらかじめ決められた極秘コードで自陣と連絡を取ったりするのは常識ですから。」


「この鳥達が電波を遮断したということは

極秘コード、取られたってことですよ?相手に。」


ギンの言葉に、周りの空気がピリッとした。


どこかの城門が落ちて極秘コードを奪われた。


そんな最悪なシナリオが、全員の頭の中に浮かんだからだ。


『……そのドラゴンの力を、借りたい。』


世良さんが頭を下げた。


「俺達は、メルを奪おうとしなければ構わないよ。

メルを仲間と、大切な戦力と思ってくれるなら協力はする。」

「ナ、カマー…メル、ナ、カマー」


メルは嬉しそうにふさふさの尻尾を振りながら俺の胸に顔を埋めた。


「でも、無理はさせられないよ?メルにだってエネルギー残量限られてるんだからね?」


『恩に着ます。』


メルは一度目を閉じ、再び開いた。

クリクリとした瞳は真っ赤になり、探知モードがONになった。


「メル、頼むね。」

「アイサ!!」


『しかし……、城門が落ちるとは考えにくいのですが…』

「それぞれにナンバーを置いているとはいえ、相手は3つの地区です。

単純に考えれば、敵にはナンバーが30人いるって事になるんですよ?

まぁ、ナンバー全員を連れて来るとは考えにくいですが…」

『それでも、うちのナンバー3、4、5は特に戦闘に特化しているナンバーなんです。それに聖獣キメラだっています。

やはり落ちるとは考えにくい…。』

「お前ら…“考えにくい”ばっかりじゃねーか…」

『だって考えにくいんですよ。』


余程強いんだなぁ…あの3人…。


「じゅんは、闘った事あるの?3人と。」

『あぁ。前にネオ様がここに戦争仕掛けた時にな。俺も参加したし。』

『来てましたねぇ。そこのリーヴ隊長さんも。』

「………」


戦争を仕掛けた側と、仕掛けられた側が共にいるとか、何このカオスすぎる状況。


『俺はあの3人とは闘ったけど、世良とは直接闘ってはないんだよなー。闘ってみてぇなぁーー♪』


物凄い笑顔で世良さんを見つめる じゅん。

世良さんは無表情のまま、冷たい目で じゅんを見ていた。


頼むから、ここで暴れんなよ じゅん。


すると、メルが俺の袖をクイクイと引っ張った。


「どした?メル」

「イパイ、ウゴキ、ハゲシスバショアルデスオー」

『なんと?』

「激しい動きがある場所が…あるらしい。」


俺たちは全員、ゴクリと唾を飲んだ。


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