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第8話.戦闘準備

もう一つの車。

20人乗り程の大きさがある。

俺達はこれに乗るんだろう。

車というよりは、戦闘機に近い形をしている。

戦闘機に、大きな車輪が後ろに2つ、前に2つ付いている感じだ。


『今からこれに乗り、陸路の側の境界線に攻めてきている5、6、7区との戦闘に向かいます。恐らくは、もう外門にまで敵が来ているかもしれない…。

あなた方 、かなりの腕をもっておられる方ですよね?

共に戦っていただきます。』


ノアを人質にしているというなら、お願い口調じゃなくて、命令口調にすればいいのにね。


第2区は、おそらくネオによる絶対支配地域。

だけどこの1 区は、絶対支配とは少し違う気がする。

なんだか、人間味を感じるんだよなぁ。


案内された車に乗ろうとした時、シュカさんが俺の服を引っ張った。


「どしたの?シュカさん」


「申し訳ないのですが、私は戦場へと行く事は出来ません。」


「…え」


あぁ……そうか!!

シュカさんは4区の、しかもナンバー3所持者だ。そのシュカさんが戦闘に参加しちゃうと、4区自身が戦闘に参加するという事になりかねない。



「…世良さん。シュカさんは戦闘には参加出来ません。いいですか?」


俺がおずおずと言うと、世良さんは あぁ と小さく頷いた。


『 そうですね…。正式な第4区の者となると勝手に動かす訳にはいきませんし…。

ナンバー5じゅんの戦闘力がありますから、まぁ妥協いたしましょう。』


思ってたより話が早く通じたな…。


「じゃあシュカさんは、コロニーの皆と同じ車に乗って?シュカさん、凪ちゃんと共に、皆の護衛頼むね。」


シュカさんが頷いたと同時に、俺の元に楓ちゃんが走り寄って来た。


「あのっ…いちさんも、私達と一緒に行く事は出来ませんか?」

「へ?」

「一緒に…シェルターへ。」

「…………」


心配してくれてるのかな?

俺は、楓ちゃんの頭をポンポンと優しく叩くと 「ありがと」と呟いた。


「俺は、戦場の方に行くよ。ノアを治してもらうんだ。そのぐらいの働きしなくちゃ。」

「で……でも…」

「だぁーいじょーぶ!!ちゃんと全員ぶっ倒して帰ってくるからさ。」


かなりポジティブに言ったつもりなんだけど、楓ちゃんは不安そうにうつむいた。


『では、二手に別れて出発しますよ。』


世良さんの合図で、車の開いていた屋根の部分が大きく円を描きながらウィィーン…という機会音と共に降りてくる。

そして同時に様々な場所にライトが灯り、運転席のモニターには細かなマップと 先程エアバイクで向かったであろう3人と思われる赤い点が映し出された。


「…うっわ…すっげ。なんか、一気に近未来に来たって気がする。浦島太朗な気分だよ。」

「それ僕知ってますよ。いちさん、浦島太朗さんだったんですか?」

「…あぁー…なんか、合ってるような間違ってる様な…。いや、違うけどね?」

「どっちなんですか。」

「気分的な話をしたんだよー。なんか、文明進んでる気がするんだもん。この第1区に来て特に。」

「第1区は、特に文明が進んでますからね。ほら、あそこに見えるのが首都ですよ?」

「首都…」


ギンが指差した方向を見て、俺の目はやっぱり飛び出た。

たくさんの高いビル。エアバイクで移動する人々。

腕時計から人が出てきて普通に会話をしている人達。


「ねぇ、腕時計から人が出てきたよ!?あの腕時計ワープ機能ついてるの!?」

「ホログラムですよ。人が出てきている訳ではありません。」

「あーやって電話してるんだ。」


「TV電話の、立体的バージョンってことかな…?」


ギンが、やれやれとため息をついた。


「TV電話って…いつの話をしてるんですか。」


……今なら浦島太朗と友達になれる気がする。


第2区は、そんなに近代的って感じはしなかったんだよなぁ。

建物は全部四角のキューブだから、殺風景っていうか…。

首都を超えると、門が見えてきた。


『あの門を超えると、外壁までは殺風景になります。』

「門の外にも門があるの!?」

『首都を守る中門、そして、外からの敵から区域を守る四方の外門の二重構えDeath』


「前線までは、後どのくらいなんですか?」

『30分程Death。』


世良さんは運転席に座ったまま、モニターを見ながら背中越しに答えた。


「もっとスピード出ないんですか?急いだ方がいいんじゃ……」


『外門の四方門は鉄壁Death。青龍門には3番が、朱雀門には4番が、玄武門には5番が向かいました。あの3人がいれば3つの門が破られることはないでしょう。大丈夫Death。』


すると、ギンが席から立ち上がって運転席のモニターをのぞき込んできた。


「白虎の門にはナンバー配置してないのですか?2番がそこに?」


『2番の(みやび)は双葉様のお傍についております。私と同等の強さを持っておりますので、双葉様の護衛を任せているのDeath。

白虎の門には、ナンバーの6~10の5人を配置しています。

ぬかりはありません。』


「いえ…ですが、5区だけの侵略ならまだしも、6区、その後ろに位置する7区までもが合同で攻めてきているという事を考えますと……」


『ブレイカー=ギンさんでもこの戦いは厳しいと思います?』


「…………」


ギンの顔が曇る。

もちろん、ギンは2区から出た事はなかったし、戦場という場所にも自ら足を踏み入れる事はなかった。

でも俺達と一緒に逃げて、いくつかの闘いだってしてきた。


ギンが怖いのは“未知”だ。

第2区の時は、ほとんどの情報を盗んではいた。

しかし他の地域となると、多少ハッキングして盗んだとしても、すべての情報を盗んだ とまではいかないだろう。


特に今回は、一つの区域が侵攻して来ている訳ではない。

三つの区域が、同時に侵攻して来ているという、特殊的な侵攻なのだ。


「ハッキングして手に入れた情報は、第2区には領土を守る為に外側に4つの城門があり、それぞれ

“東の青龍門””北の玄武門”“西の白虎門”“南の朱雀門”と名付けられ、守獣としてそれぞれの聖獣をモチーフにしたキメラが守りを固めていると聞いています。」


『ほぅ。やはり我々の所にもハッキングしておりましたか。さすがはブレイカー。

しかしその程度、わざわざハッキングなどしなくても知られている事Deathが?』


「しかし外門ではなく、首都を守る中央門の聖獣については…」


ピリッ…


ギンの言葉を聞いた世良さんから笑顔が一瞬で消え、わずかながらの殺気が漏れたのを感じる。


「中央に聖獣が位置しているという事までは盗めましたが、何の聖獣なのかまでは盗んでいません。ご安心くださいな。」


『……かなり重要機密でございます。そこのドラゴンの子どもと対等くらいの価値はあるかと。』


「アゥ…」


世良さんの視線を受けたメルが、プルプルと震えながら必死に俺の胸にしがみつく。


自分がどれだけ貴重なのか。そして、この先どれだけ狙われるのか。

メルは小さな体で 、もうイヤという程自覚してしまっているのだ。


「メルを…よこせと?」


俺はメルを力いっぱい抱きしめて世良さんをニラんだ。


『ノア=エイルが どうなってもよいと?』



“人質”


ギンが言ったあの言葉が胸に深く突き刺さった。



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