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第7話.1区の人間達

『改めまして。

第1区のナンバー1番を所持しています。

世良(せら)と申します。』


サラサラの黒い髪が風で揺れ、なびく髪の間から見える黒い瞳がまっすぐと俺を見つめる。


ナンバー1番を所持する者…。


「1番所持者は、双葉さんだと思ってたよ…」

『…?何故です?』

「第1区のリーダーは双葉さんなんだよね?第2区は、リーダーのネオが1番所持者だから…」


喋っている途中で、俺は言葉を飲み込んだ。

身体中に冷気が走り、全身に鳥肌が立ったからだ。

俺がネオの名前を口にした瞬間に目の前にいる世良(せら)さんから、物凄い殺気が走って来た。


そして世良さんはゆっくりと俺の頭に手を伸ばすと、俺がかぶっているフードコートのフードごと頭を鷲掴みにした。


『何ふざけた事ほざいてんの?』

「ちょっ…いだぁぁぁあああ!!頭潰れるっ…頭つーぶーれーるー!!死ぬって!!これダメなやつだって!!ちょっとぉぉおおお!!」

『あんな男と双葉様を一緒にするとか万死に値するな。

一回死んだ方がいいよお前。』

「いやいやいやいや!!よくねぇよ!?

いだだだだだだ髪の毛一緒に引っ張ってる!!ちょっと!!ハゲるハゲるーー!!ハーゲーるーーー!!」


何コイツ!?いきなり別人レベルなんですけど!?

二重人格!?二重人格だよコイツ!!

つーか、片手で頭を鷲掴みにしての この握力おかしくない!?

あれだよね?

片手でリンゴを軽く握り潰しちゃう感じだよね?この人。


頭の中に、潰れてぐちゃぐちゃになったリンゴがリアルに浮かんだ。



ーーーいやいやいやいや!!死ぬから!!



頭を鷲掴みにしている世良さんの手を離させようと、必死に両手で世良さんの手を掴んだものの、ビクともしない。


しかし

真っ青になりながら、再びリンゴが頭の中に浮かんだ瞬間だった。


フッ…と、頭を掴んでいる世良さんの手が緩んだ。

その時俺の目に映ったのは、世良さんのオデコに当たっている小さな赤い丸の点だった。


「…リーヴゥゥーー」


涙目で振り向くと、リーヴが右手を世良さんに向けていた。

親指と、人差し指、そして中指の3本を立てて こちらにそれを向けている。


「その辺にしておけ。いちを離せ。」


リーヴの言葉を聞いた世良さんは、しばらく頭のフードを掴んだままだったが、手は緩めていた。

そのまま、世良さんの黒い瞳がリーヴに向く。


『…右手、随分と変わったDeathねぇ。』


「いちを離せ。」


『…………はいはい。』


世良さんはため息をつくと、俺の頭から手を離した。

そして、無表情のまま言い放ったのだ。


『冗談Death。』


いや、おかしいだろ。

“です”が、“Death”になってんぞ?


『では、行きま死ょうか。あまりモタモタ死てはいられません。』


物凄く、言葉に殺意を感じるんだけど。


「それなんだけどさ、世良さん。」

『灰にな……はい?何で死ょう?』


おい…今、灰になれとか言おうとしなかった?

恐ろしく腹が黒いぞこの人…。


「俺達が今から行くのって、陸路の境界で始まってる5、6、7区との戦いの戦場だよね?」

『そうDeath。よくわかりま死たね?』

「いや、さっきナンバーの3人に“先に行け”って言ってたから。先に、って事は後から行くって事だろうし。」

『その通りDeath。説明が省けて助かります。』


もはや黒キャラを隠す気はないらしい。


「俺達と一緒にいる人間達は戦闘には出したくないんだよ。

何処かで保護して貰えたら助かるんだけど…」

『……では、車を2台用意死ますので、人間の方達はそちらに乗ってシェルターに逝って下さい。』

「…あ、助かる。ありがとう。」


シェルターがあるのか…

戦いになった時とかに、非戦闘員をそこに避難させる為のシェルターかな?


だとしたら、非戦闘員とはいえ…アンドロイドと一緒のシェルターに入るって事になるよな…

ここの第1区の人間に対する感情によっては、マズイ気がする。


「この地区の人間は、どこにおるん?」


俺と同じ事を思ったのか、久遠が口を開いた。

事情が事情とはいえ、出来ればここの人間と早めに合流したい。

少しでも多くの人間と。

それは、一緒に来たコロニーの皆も同じ気持ちだっただろう。

安全なシェルターじゃなくてもいい。人間がいる所がいい。

そう思うのも当然なのかもしれない。


俺達は第2区で、たくさんのコロニーの仲間を失ってしまったのだから…。


ふいに、サクの顔が頭に浮かんだ。


『1人でも多くの人間を、助けてあげて下さい』


サクの願い。

これだけは絶対に叶えたい願いだ。

俺も、久遠も。そして、コロニーの皆も。



『いませんけど。』


世良さんの言葉を、初めは理解出来なかった。


「…え?何が…?」

『ですから、人間ですよ。いませんけど。』

「…いない…?」

『いませんけど。この第1区には。』


人間がいないー…?

ちょっと待って…それって、まさか…


「殺したんか!?お前ら、人間全員殺したんか!?」


久遠の叫び声が、怒りに満ちているのがわかる。

コロニーの皆も、信じられないといった顔をしながら ヘタリと地面に座り込んでしまった。


世良さんは、そんな俺達を見て首を傾げている。


『人聞きの悪い事を。殺してませんけど。』


「ほな、どこにおるんや!?おらん言うたんは、お前やろぉが!!勝手に消えたとでも言うつもりなんか!?」


『おぉ。どっかで見た顔だと思ったら…手配書にある顔じゃないですか。久遠さんで死たっけ?』

「あぁ!?」

『怖いんですけど。ちょっと。誰かこの人何とか死て下さい。』


お前のが怖ぇよ。

いつまで「し」を「死」に変換して喋ってんだよ。


世良さんは、はぁ…と一度ため息をつくと、面倒くさそうに話始めた。


『まぁ…、違う言い方をすれば、いますよ?人間。』

「違う言い方って、どーゆう意味や?」


『純粋な人間ではないという事Death。

どんな生物でも、生きていく環境に合わせて進化していくものでしょう?人間だって例外ではなかったと言う事Death。』


進化した…人間?


「つまり、普通の人間じゃないって事なんか?ここにおる人間は。」


『僕達アンドロイドに蹂躙されてしまったこの世界で生きて行く為に、この地区にいる人間達は皆進化する事を選びました。

ある者は腕、ある者は足、下半身全部を変えた者もいます。』


変えた…?

身体の一部を…って事だよな?

まさか、それって……


驚く俺達を一通り見渡した世良さんは、ハッキリと事実を口にした。


『ここにいる人間達は、身体の一部だけの者もいますが、ほとんどの者が半分アンドロイドになっております。』


開いた口が、塞がらなかった。

改造人間…って事なのか!?


「心は!?感情は!?残ってるの?」

『もちろん。ベースが人間Deathので。貴方達と変わりませんよ。彼らは、自分を人間だと言っていますし。』


世良さんは、久遠やコロニーの皆にそう言った。


「…会ってみたいです。」


初めに口を開いたのは、楓ちゃんだった。

その後にコロニーの皆も頷く。


『では、予定どおりシェルターでよろ死いですね?彼らはそこにいますので。』


楓ちゃんも、コロニーの皆も、深く頷いた。

それでも、何があるかわからない。

何かあった時に皆を守って貰える様に、凪ちゃんにも一緒にシェルターに行ってもらう事にした。


大きめの車の中に、楓ちゃんを先頭にコロニーの皆も乗り込んで行く。



最後に凪ちゃんが、入口で俺を振り返ってくれたので、俺は精一杯の声で叫んだ。


「凪ちゃん!!皆を頼むね。」



凪ちゃんは 深く頷いて、車の中に姿を消した。



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