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第5話.願い出

『全員、持っている武器を捨てて両手を地面に付きなさい。』


男の声が響き渡る。

前も横も、銃口をこちらに向けている大量の兵士。

そして後ろは海。


『うっはー!!主戦力を海岸に……ね。

なるほどなるほどぉ♪こーりゃ絶景だぁ!!本当に主戦力が来てるじゃねーかぁぁあああ♪♪』


緊迫した空気をぶち壊したのは、じゅん だった。

大喜びで興奮しながら、前に数歩出やがった。


それを見た男の顔が曇る。


『……お前は…っ…』

『よーぅ♪久しぶりぃ!!何だよー♪嬉しいなぁ♪

………逢いたかったぜぇ?』

『何故……2区のお前がここにいる…?

5区が来ているはずでは………


そこまで言って、男は一瞬息を呑んだ。


そして怒りを込めた声で叫んだ。


『………2区が…………………………5区と手を組んだという事かぁぁ!!!』



まぁ、そうなるわな。


俺達と共に砂浜に置かれた船の残骸は、まさに5区の船。

5区が海上から攻めて来ているという事から、この主戦力の人達はここに来ているのだ。

タコで捕獲して迎え撃とうとした所に、俺達がいる訳だから 誤解されても仕方が無い。


何よりも、最初に口を開いたのが第2区のナンバー5を持つ男なのだから。


『んんっ?

何言ってんのお前?』


脳みそが筋肉で出来ている この男は、そんな緊迫した空気を全く読む気がないらしい。

こいつがここまで食いつくという事。


喋っているこの男は…恐らく、ナンバーレベルの実力者。


シュカさんが

ナンバーは その地区の戦力を現す核だと言っていた。

数十人にも及ぶ兵士達が この男の合図無しで攻撃して来ない事を踏まえると……


コイツだ!!!



『じゅん。

貴方とは会話が成立する気がしません。

ひとまず貴方達を拘束し…』


「ちょっと待って!!

その前に、血を下さい!!!!!」


『……………はい?』


いきなり叫んだ俺に、男が目を丸くして首を傾げる。


「血!!血です!!この子に、血を下さい!!早く!!」

『……え、あ…………は?』

「珍しい型の血らしくて、えっと、P……P……何だっけ!?ちょっと!!ギン!!」

「ほぇ!?」

「血液オイル型!!P何だっけ!?」

「えっ、あっ、APRです…」


「それ!!その血を下さい!!早く!!」


『…な…何をいきなり…!?馬鹿な事を言わないで下さい!!敵にそんな事をする奴がどこに…………………

………A…APRだと?』


男の目が、俺が抱いているノアに向いた。


『……その女の顔を……見せなさい。』


ノアの血液オイル型が よほど珍しい型の血なのだと、それだけでわかった。


『早く見せなさい!!!』


「あ、失礼。ちょっと待って下さい?」


男の怒鳴り声を遮ったのは、シュカさんだった。


「えーっと、この男ですね?独占欲の塊みたいな男らしくってですね?

この女の方の顔を見るならば、覚悟をなさってからの方がいいと思います。」


おいコラ。

え、何なの?

何で皆 こんなにも空気を読まないの?


違うよ?ノアの顔をなるべく隠してたのは、そーゆう理由じゃないよ?

俺達 お尋ね者だからだよ!?


『……っ!?

シュカ………!?』

「はい。えーっと、初めまして…ですかね?」

『馬鹿なっ……!?

第4区までもが、5区と組んでるという事…なのか!?』

「違います、違います。

僕達は関係ないです。タコを助けようとしたら、巻き込まれたのです。」

『……は?』

「それよりも、海岸線に貴方達が来ている事が問題ですよ?こちらは囮の様ですけど。」

『……!?

……おい!!連絡を!!急いで確認しろ!!』

「急いで下さい?こちらも急いでいるのです。確認を取って間違いがなければ、すぐに顔を見る覚悟と血液オイルを。」


覚悟はいらねぇ。


でも、凄い…。

この人達にとっては、やっぱり4区のナンバー3であるシュカさんの言う事には説得力があるんだ。

失礼だけど、シュカさんって……本当に凄い人だったんだな…。

ナンバーの3を持ってるんだもんな…。


「シュカさん…、ありがとう。」

「ええ、本当に。僕がいて良かったですねぇ。」

「……あ、うん。そうだね。」

「はぁ…。とにかく急いでもらわないとですね。

早く風呂に入らなくては。

タコで身体がベトベトなんです。ああ、もう。

早くしてくれないですかね?まだ連絡を取ってるんですかね…。

ちょっと!!急いでくれません!?」


本当に凄い人だ。

感謝と尊敬の気持ちを、一瞬でイラッと感に変える程のナルシシストっぷりに感心してしまう。


急げと言っていたのは早く風呂に入りたいからかよ!!!

ちくしょう!!俺の感動を返せ!!


先程シュカさんと話していた1区の男の周りにたくさんの兵士が集まって何やら話している。

男は静かに頷き、右手を上げた。


それを見た兵士達がピタリと話を辞め、男の一歩後ろに並ぶ。


「か、確認は取れた!?取れたなら、早く輸血をしてください!!俺達は敵じゃない!!」


男は俺が抱いているノアに目を向けると、俺に向かって話始めた。


『彼女は預かります。しかるべく医療施設で治療させて貰いましょう。』

「ほんとに!?助けてくれるんですか!?」

『責任を持って治療に全力をかけさせて頂きます。』

「ありがとう!!ありがとうございます!!」


良かった…!!

本当に良かった!!!


しかし、ホッとする俺の横に立ったギンがその男に厳しい目を向けた。


「APR……あるのですか?」

『かなり希少な型ですが、この1区にも数人この型の者がおります。

先程、その者達に連絡を付けて既に医療施設に向かわせております。』


兵士達の合間を縫って、宙に浮いたストレッチャーと思われる物がフワフワとこちらに飛んでくる。


「…え!?ちょ、何あれ!?浮いてる!?」


『少しの衝撃も与えぬ様に考案されたストレッチャーです。ご安心下さい。』

「……す、凄いな…」


浮いてんだけど。浮いてんだけど!?

どーなってんだこれ…


「……待って下さい。」


恐る恐るストレッチャーにノアを乗せようとした俺を、ギンが止めた。


「…彼女だけを乗せるんですか?」


『二人乗りに見えますか?』


男の言葉に、ギンが眉をひそめた。

それを見たシュカさんが すぐにギンの言葉の意味を理解したらしく、難しい顔をする。

そして、少し遅れて 久遠とリーヴが一歩前に出て男を睨んだ。


「…何?皆……?」


また、俺だけ分からないパターンっぽい。

だけど ただならぬ空気になっているのは俺にだってわかる。


『グズグズしていていいんですか?急いで治療しなくてはならないのではないのですか?』


「……っ……」


唇を噛み締めるギンを見て、シュカさんと じゅんが口を開いた。


「…驚きました。あなたでも、迷うのですか。まさか乗せるつもりで?」

『随分と感化されたんだなぁー?お前。

冷静沈着なブレイカーじゃなかったかぁ?』


ギンはノアをこれに乗せたくない………?

どーゆう事だ?


「ギン、急がないと。ノアが…」

「……わかって…ます。」


とにかく、急いで治療してもらわないと…。


俺は、ノアをストレッチャーに慎重に乗せた。


ノアを乗せたストレッチャーはスィーッと静かに進み、近くに止まっていた車の中に入って行った。


その車も、浮いていた。


そこで、俺はやっとわかったんだ。

ギンが迷った事の意味を。


ついて行こうとした俺を、3人の兵士が静止させたからだ。


この日俺は

とても…本当に、とても久しぶりに…

ノアと離れる事になった。


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