第2話.海上戦
「あの船は……第1区を侵略しに
来たのか…?」
「恐らくは……」
背伸びして籠から下の海を のぞき込んでいたギンは、小さく呟いて再び籠の中に座った。
『さぁーて?第1区も安全とは言えなくなって来たなぁー?
どーするよボスさん♪引き返すかぁー?』
じゅんが笑いながら俺の肩に手を回して来た。
「引き返したら、追って来てるネオの爆破スイッチ圏内に入って爆発すんのお前なんだけど?」
『行きも地獄~♪帰りも地獄~♪俺ぇ、死ぬならお前らと一緒がいいな♪…っいって!!』
ケラケラ笑う じゅんの手が俺の肩から物凄い勢いで弾かれた。
ノアは じゅんを睨みながら、その手を掴み上げる。
「ここで落とすぞ。いいわよね?いち。」
『………冗談です。』
お前が言うと冗談に聞こえねんだよ……。
大人しく座った じゅんを見て溜息をついたギンが、再び話に戻った。
「今いるこの海と、5、6、7区との間に第1区がありす。
陸路で行けば隣なんですからすぐなのに、わざわざ遠回りをして反対側の海から向かっているのは気になりますね……」
「陸路に何か危険があると…?」
「そう考えるのが妥当でしょうね…」
ギンに続き、シュカさんもギンの隣に座って話し始めた。
「もし仮に5、6、7区が手を組んだ …または侵略しようとしているという情報が入っていれば、領土の境界付近には兵を固めて迎撃体制を引くでしょうし…
防御が薄くなった海側から攻めようとしても不思議ではないですが…」
「しかしですよ?
もしその様な情報などが第1区に入っていたのならば、わざわざ海側の防御を薄くしてまで境界付近に兵を固めますか?
もし僕なら、薄い海側を狙うのは分かりきってるんですから海側にも防御線引きますけど。」
「…そうなんですよねぇ……」
何この軍事会議。
頭いい人が2人揃うと、空飛ぶ籠のファンタジー世界が一気に高層ビルの会議室化してしまうな。
「ねぇ、なんで空路って選択肢は出ないの?」
今俺達は、まさに空路。
「かなり高度なレーダーで飛んでる機体は探知されてしまいますから。
だから僕らはこうしてある意味ふざけた空路をしている訳です。」
きぃちゃん、ぎぃちゃんが籠を垂らして飛び、その籠に乗って移動………確かにふざけている。
下手すりゃ、超大型キメラの空中散歩だわ。
「しかし……海路は一番危険だと思うんですが……」
「あ、やはりギンさんもその情報はお持ちでしたか。」
「シュカさんが持ってる情報で、僕が持ってない情報はないと思いますけど。」
「………」
泣きたくなってきた……
なんでこうもこの子は人との会話が下手なんだ。
人を腹立たせるのは上手いのに。
後で、ギンに友達の作り方を教えてやろう……。
「で?ギン。海路が一番危険って、どういう事?」
「すぐにわかりますよ?……ほら。」
ギンが指を指した所を見ていると、
突然海の中から赤い柱の様な物が沢山飛び出してきて船を突き刺した。
船はそのまま海中に引きずり込まれて行く。
「あばばばばばばばばば」
突然の出来事に、久しぶりに言葉にならない言葉が口から飛び出した。
沢山いた船は、見事にほとんどが海中に引きずり込まれ、しばらく渦を巻いて荒れていた海も 穏やかな波に変わった。
「船どうなったの!?」
「見とったやん。今頃は海中や。」
「引きずり込んだあれは何!?化け物!?この海には化け物が住んでるの!?」
「タコですよ。」
オロオロしながら籠の中をウロウロしていた俺は、ピタリと足を止めてギンを見た。
「…今、なんて?」
「タコです。」
「あんなタコがいるかぁああああああ!!でかすぎだろ!?船よりでかいタコって何!?しかもタコの要素なんて赤い色だったって事ぐらいしかないんだけど!!」
「でも、どう見てもタコだわ?」
「タコの足はふにゃふにゃしてるの!!あんなシュッとした柱みたいな棒はタコの足じゃないから!!!」
ふと見ると、なんとかタコの突き刺しを逃れた船がいくつかいる。
その船は、一斉にタコに向かって大砲やら銃弾などを撃って応戦していた。
「ねぇ、あのタコって第1区のタコなのかな?」
「だと思います。海の守備は化けタコが担っているっていう情報を手に入れた事があるので。」
「だったら、タコを助けた方がいいよね?これから俺らは第1区に行くんだから、下手にタコと戦ったりしたら侵入者に間違いナシになっちゃうじゃん!!」
「しかし、あの残った5区の船をどうやってやっつけますか?白兵戦狙いで5区の船に降りても、今タコが攻撃している以上僕達も5区の仲間だと思われそうなんですけど。」
「シュカさん、弓矢にワイヤー付けてあの船の浸水してる部分にワイヤーを刺せますか?」
「……あぁ……なるほど。面白いですね。分かりました。」
シュカさんは弓矢の矢にワイヤーを縛り付け、5区の船の浸水場所目掛けて弓矢を放った。
ワイヤーがついた矢は、見事に浸水に慌てて必死に水を掻き出している5区の兵士の足元に刺さっている。
俺はワイヤーをシュカさんから預かり、両手でしっかりと握った。
「皆は危ないから下がってて?間違ってもワイヤーには触らないでね。」
俺はそう言うと、サクが作ってくれた自慢の手袋を外し、ワイヤーを掴んで思いっきり電気を流し込んだ。
電気はワイヤーを伝い、さらに浸水している水を伝って水を掻き出している兵士を襲う。
他の兵士達も、水を伝ってきた電気により感電してしまい、船の上に立っている兵士は一人も居なくなった。
「成功した……」
ホットして座り込んだ俺に、シュカさんが 見事です!!と拍手をしてくれた。
誰かに触ったら大変だと、すぐにサクの手袋をつける。
まだ多少でも電気が出てるかもしれないからね。
しかし、ホッとしたのも束の間。
いきなり目の前が真っ暗になった。
いや、周りが真っ赤になったとでも言うべきか。
気づかないうちに、俺たちのすぐ後ろに真っ赤なタコの本体が立っていたのだ。
足が出てるから、本体まで海から出てきた事に気付かなかった。
「んなっ!?何これデカッ!!!」
タコは空を飛んでいる訳ではない。
海から顔を出しているだけだ。
しかし空を飛んでいる俺達を普通に見ている程のデカさ。
「あかん!!きぃちゃん、ぎぃちゃん!!全速力で前に飛びいや!!!」
久遠の声に弾かれるように前に飛び出そうとした2匹だったが、時は既に遅かった。
タコはぐにゃんと形を変え、俺達を包み込む。
そして自分の頭(?)の中に俺達を閉じ込めた。
「え?え?何!?何これ?タコの頭の中に入ってんの俺達!?」
スケルトンのタコだからか、外の海の様子も見える。
そしてタコの中からだからか、海は真っ赤に見えた。
「あかん……食われてもーた……」
久遠がガックリと膝を落として呟いた。




