第8話 二人の絆
「あら、寝ちまったかい。
かわいそうに、泣き疲れたのかね。」
ビッグパティは、ベッドに横たわるミクに抱きつき寝息を立て始めたムクを、優しく抱き上げミクの横に寝かせた。
そして、二人の頬に軽くキスをしてつぶやいた。
「全くこの子、少しだけ無理して笑ってるよ。
あいつが、笑って待ってろって言ったからか。
私にも娘がいたらこんな感じだったのかね。
こんな時代じゃなけりゃ、楽しいことがたくさんあったろうに。
ムクは、本当にミク姉ちゃんが好き、大切なんだね。
あいつ、私にこの子達にロックを教えてくれとか言ってたけど。
ロックとは愛することさ。
二人とも、もうとっくにそんなこと分かってるよ。」
4人を乗せたグレーの商用車は、本部に向かってひた走っていた。
「それで、どうしてA6939があんたの所にいるんだ。」
「それは、、簡単に言うと、ファームから逃げてる所を俺達が助けたんだ。」
「それで、そもそもどういう状況で逃げ出したんだ。
あそこは、警備システムは極めて厳重な筈だが。」
「それ聞くの忘れてたわ。」
「確かに、兄貴それ聞いて無いっすね。」
「で、どうしてそういうことになったんだ。
トミー、それと、何でお前一緒に逃げてたんだ。」
若い男は、いつの間にか当たり前のようにトミーと呼ばれていた。
「すいません。
あれ、聞かれないな、とは思ってたんですが。」
「それで?」
「始まりは、P1169の出荷が決まったことからなんです。」
「出荷って、人間だろ。」
「そうです。
あそこは、人体パーツを培養して製造する医療パーツファーム、なんて言われてますが、そんな所じゃ全然無いんです。
普通の人間を生まれてすぐ母親から引き離し、薬物等を使って考える力を奪い人間らしさを排除し、ただ食べて寝る、それだけの人間を作る。
奴らの為の、交換用臓器製造施設です。
エリート連中への善意の提供者として育て、奴らの永遠の命とかの目的に使うために。
僕も最近になって知ったんです。
そこが、悪魔の施設だって。
そして、あの日、ファームの先輩二人が、P1169を明日出荷するって言ったんです。
それが、全ての始まりです。
ところが、予想外のことが起きたんです。
P1169とA6939は、極めてイレギュラーな存在でした。
人間とアンドロイド、相容れない筈の二人は、絶対に断ち切れない、強固な絆で結ばれていたんです。
そしてその時、僕は二人を何としても助けようって思ったんです。
二人を助けないと、僕も奴らと同じになってしまうって。」




