第5話 ミックとロック
「ムク、眠くなってきた。
この低音、、品のない、革ジャンと煙草の匂い。
嫌いじゃない、どこかで、なんだろう、覚えている。
ミク、信用して大丈夫だ、こいつは、、本物だ。」
「お姉ちゃん!」
A6939は、P1169の肩に額を寄せ活動を停止した。
「兄貴、一人寝ちまったみたいです。」
「ああ、レディ達もさすがにお疲れだな。
よし、本部へ行く。
ジャミングをかけろ、EVサイレントモードだ。
ミュージックはスローナンバーに。」
「ラジャー!」
いくつもの複雑なギミック、迷路、セキュリティポイントを経て、真っ黒な車は、地下深くの彼らが本部と呼ぶ場所に辿り着いた。
かつての映画の、宇宙ステーションを思わせる、無機質で広く美しい構造物だ。
「やあ、ビッグパティ、久しぶり!」
「なんだい、なんだい、
全然顔見せないと思ったら、突然こんな夜中に。」
「ああ、すまない。
ここは、小綺麗過ぎて性に合わない。
なんか、あちこち痒くなってくる。」
「全く、仕方ないね、あんたは。」
「ビッグパティ、レディ達を頼む。」
「おやおや、お前さんが女連れなんて。」
男は、抱えてきたA6939をソファに優しく横たえた。
「寝ているのがミック。もう一人がロックだ。」
「おや、いい名前だね。」
「だろう、2069年、第二のロック元年にぴったりだろ。」
「違うよ、、ミクとムクだよ。」
「そうなのかい。
お前さん、この子、違うって言ってるけど。」
「ああ、それは本名ってこと。
ステージの上では、ミックとロックだ。
ビッグパティ、二人に本物のロックを教えてやってくれ。
とんでもねえ地獄の監獄から、命がけでトンズラしてきた女神達だ。
間違いねえ、ロックなハートと魂は俺が保証する。
お休み中のレディは、明日メカニックにみてもらう。」
「大変だったね、二人ともこんなに可愛いのに。
疲れただろう、まずはゆっくりお休み。
で、その若い男は?」
「こいつか、まあローディー見習いってとこだな。
お前、酒飲めるか?」
「少しなら、、、。」
「よし全然問題ない、これから新年の祝い酒だ。」
「うひょー、待ってましたぜ!兄貴。」
「さあ、行くぜ、ブラザーズ!
ロックの女神達の誕生に乾杯だ。」
「あいつにも、おもしれえ報告ついでに、一杯飲ませてやるか。」
革ジャンの男は、壁に掛けてある傷だらけのテレキャスを見ながら、少しだけ寂しげに笑った。




