第4話 ステージの始まりだ
A6939とP1169そして一人の若い男は、東京湾にかかる巨大な橋の上に立っていた。
男が運転する車でここまで懸命に逃げてきたが、橋の両側を治安警察の車にふさがれてしまったのだ。
1月の吹きさらしの大橋に吹く風は、凍えるように冷たい。
「こんな逃げ場が無い所に、、ごめんなさい。
僕が車で検問に突っ込んで、おとりになります。
混乱してる隙に、逃げてください。」
「いや、無理だ。敵が多すぎる。
、、、、、、海に飛び込むしかないか。」
「無茶ですよ。
あなたは大丈夫でも、この子は。」
「ミク姉ちゃん、大丈夫だよ。
でも、私が動けなくなったら姉ちゃんだけ逃げて。」
「ムク、、その時は私も一緒だ。」
「海か、初めてだよ、お魚とかイルカさんとかいるかな。
ちょっと楽しみ。」
「いっぱいいるさ。
ムクなら、みんな友達になってくれる。」
「済まなかったな。巻き込んでしまって。
感謝する。
監視カメラに映像があるだろうから、お前は罪には問われないだろう。」
「助けてくれてありがと、優しいお兄ちゃん。」
「そんな、、駄目です。
絶対駄目です。やめて、ください。」
「さあ、行くか。ムク。
海面衝突の衝撃は、私が全部吸収する。」
「うん、ミク姉ちゃんと一緒なら心配ないよ。」
A6939はP1169を抱き上げた。
「ミク姉ちゃん!」
「任せておけ、ムク。さあ、行くぞ。」
A6939が、P1169を抱えて欄干に向けて走り出したその時、
爆音を上げて真っ黒な車がぶっ飛んできた。
〜ドッカーン!、キュキュキュ〜
急停止した車の窓から、むさ苦しいロングヘアーの男が叫んだ。
「俺が来る前に勝手に盛り上がりやがって!
乗れ!
これからが、ステージの始まりだ。
止まるな、ロックし続けろ!」
「ミク姉ちゃん、、、。」
「大丈夫だ。あいつは、、本物だ。」
「僕も一緒に!」
「お前?」
「かまわん、乗ってけ。
ただし、片道キップだ、覚悟しておけ。
衝撃に備えろ。
兄弟、マックスでぶっ飛ばせ!」
〜ズッドドーーーン!〜
A6939とP1169そして一人の若者を乗せ、真っ黒な車は、さっきの数倍のロケット噴射の爆音を響かせ、はるか遠くにぶっ飛び闇に消えていった。




