第3話 未来 ロックしつづけろ
アンドロイド製造工場では、完成間近の躯体が静かに並んでいた。
一人の男が、電子検査器具のようなものを片手に、一体ずつボディを開け何やらチェックしている。
「A6939、ロックなミク、、か。
お前に娘、未来の夢を託そう。」
男は作業グローブに隠していた何かを取り出すと、ボディの内部、外からは見えない場所に貼り付けた。
そして、ほんの一瞬だけ祈るように目を閉じた後、何事も無かったかのようにボディを閉じ、検査済と書かれたシールで優しく封印した。
全ての躯体の検査を終えた男は、白く無機質な休憩室で自動販売機の珈琲を飲んでいた。
「全く、自動販売機とはいえ、ひどいもんだ。
ガソリンで作ったような嫌な匂いと薬品の味しかしない。
あれから何もかもそうだ。
酷い世の中になったもんだ。」
男は、暮れ始めた窓の外を眺めながらあの日を思い出していた。
最愛の娘、未来の車椅子を押して行った薄暗いライブハウス。
汚い見かけによらず優しい男達が、未来を左の一番前に連れて行ってくれた。
そこは、未来の永遠のアイドル、革ジャンベースの定位置だ。
帰り道、未来が言った。
「お父さん、ほんとにほんとにありがとう。
ずっと耳がピーって言ってるよ。
頑張って生きてきて良かった。
あの人にこれもらった。
時々使うんだって。
未来の宝物。」
ベースの厚くて大きめの赤いピックには、汚い字で何か書いてあった。
ミク ロックしつづけろ
男は、窓から、梱包され出荷されるアンドロイド達を見つめながらつぶやいた。
「全く、スピーカーの真ん前って、、。
あいつら、どうかしてるぜ。
どこかで、元気でやっていてくれたらいいが。
A6939 、、、頼んだぜ。
未来 ロックしつづけろ!」




