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ロックンロールレジスタンス 2069  作者: 浜乃海人


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13/15

第13話 ロックが消えた日

男は深夜の病室に来ていた。

面会出来ない時間だが、主治医の男がこっそり手を貸してくれたのだ。



「未来、ライブに行くぞ。」

「ライブ、、お父さん、、、。」


治安警察の有害娯楽の摘発は、ついには病室にまで及んだ。

未来が大切にしていた、音楽プレイヤー、ソフト、ベッドフォン、雑誌の切り抜き、全ては治安警察に没収されていた。



男は未来を車椅子に乗せ、毛布を丁寧に掛けて病室を出た。

屋上に出るとドアを閉め、しっかりと鍵をかけた。



「さて、未来、星空の夏フェスといくか。」

「星なんて見えないよ。夏、終わっちゃったし。」

「見えるさ。

雲が掛かってるだけで、星はちゃんとその向こうにある。」


男は、持ってきた映像再生プレイヤーに、バカでかいスピーカーを接続した。

「えっ、スピーカー、音出すの、警察が来るよ。」

「かまわんさ、街中に聞かせてやるのさ。」


男は、あの日2人で行ったライブの映像を流し始めた。


「お父さん、あの日の。」

「奴ら、俺を侮ってるな。

しっかり、コピーを取っておいたんだ。

さあ、ボリュームを上げるぞ。

スペシャルライブの始まりだ。」


「この音、あの日、、スピーカーの前で。

体中ビリビリ震えて、ヒリヒリするリアルのベース、心の音、魂の叫び。

生きろって。

激しくて、優しくて、温かくて、悲しい。」



母が亡くなってから、体の弱い未来は沈み込み、ただ毎日をあてもなく生きていた。

そんな時、あの人のインタビューとライブ映像を見たのだ。


彼は、ベースが下手だという音楽評論家の批判に答えていた。


「俺のベースが下手くそだって。

バレてたか。

俺は毎日12時間練習しても、たいしてうまくならなかった。

正直、止めようかと思ったぜ。


でもな、思ったんだ。

俺の音は俺そのもの。

馬鹿で、どうしょうもなく弱くて、何をやっても半人前、それが俺。


いいじゃねえか。

救いようもない弱くて、何をやっても駄目な俺。

それでも、生きていく、生きていくんだ。


うまく出来ないから、ロックを止める?

そんな訳ないだろ。

弱くても、悲しくても、駄目な俺でも。

生きたい、愛したい、叫びたい、そんな魂の声がある限り弾き続ける。


誰がなんて言おうがかまわない。

俺のきったねえ音とリズムで、一音一音、ありったけのリアルな気持ちを込めてな。


馬鹿にされても、虐げられても、


生きろ、生きろ、生きるんだってな。


それが俺のベースさ。


誰か一人にでも、伝わればそれでいい。


下手くそ、関係ねえ。

それが俺。

俺は、誰に何と言われてもロックし続ける。

俺に出来る、たった一つのことだからな。


それにな、それがいいって物好きが結構いてくれてな。

最高のメンバーと最高のファンさ。


そんなの、嬉しくてたまらないだろ。

だから、何があろうと絶対に止められないのさ。

永遠にな、ロックし続けることを。」




「お父さん、私守れたかな。

あの人との約束。

ロックし続けろって。」


「ああ、未来は、ずっとロックし続けてる。

最高だ。

間違いない、俺が100%保証する。」


「良かった。」



「うわっ、お父さん、凄い、星が見えるよ。」

未来は見えない星に向かって、ゆっくりと手を伸ばした。

「ああ、母さんが未来を褒めてくれてる。」

父は娘の肩をやさしく抱きしめた。


未来は、伸ばした手を力なくゆっくりと下ろした。

その手に、未来が唯一守り抜いた宝物を握り締めて。


「未来、いっぱい頑張ったよ。

リアル、、わたし、ロックし続けたよ、、、。」


そうつぶやくと、けして覚めることのない深い眠りに落ちていった。




漆黒の夜の町には、ただ未来が愛した真実の音と、けたたましいサイレンだけが響いていた。






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