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現代勇者協会の送迎係のおっさんは異世界帰りで元最強剣士 ーー知らない世界で病んじゃったので慎ましく生きる……予定でしたーー  作者: いくかいおう


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第9話 襲われるおっさん、林藤

 突然のアキラの来訪。

 もうすぐ日付が変わる時間帯なのに。


 明らかにしょんぼりしているアキラくん(激ウマギャグ)。

 十中八九、最近の不甲斐ない自分を責めているのだろう。


「少し、お話いいですか?」


「話とは?」


「その……ご相談が」


 となると、個室の中じゃあダメだろうな。隣のドライバーに丸聞こえだろうし。

 非常階段までアキラを連れ出す。ここなら大声でも出さない限り、誰にも聞かれないだろう。


「えーっと、どうしたんですか?」


「敬語はやめてください。今は仕事中じゃないんですから」


 いや勤務中だよ。待機しているだけでバッチリ時給は発生しているんだよ。

 しているよね? たまに不安になる。やることがないと本当にボーっとしているだけだから。


「えっと、もしかして、伸び悩んでいることへの不安とか?」


「はい。僕、大事な防御係なのに、2回も気絶しちゃって、パーティーを護れませんでした」


「うーん。ごめん、それを俺に相談されても……」


「林藤さんだからです。林藤さんはすごい人です。そりゃあ林藤さんにスキルはありません。でもいつだって冷静で、恐れず、僕らを心配して飛び込んでくださるじゃないですか。聞きました、今日もわざわざ囮になったって。だから、尊敬してます」


 俺からしたらイケメンで礼儀正しくて責任感も度胸もコミュニケーション能力も未来への可能性もある君の方が尊敬に値するよ。

 少年時代は別の世界で過ごしていたから比べるものでもないけど、俺が君くらいの頃はウンコのことしか考えていなかった気がする。

 ウンコのこと考えながら魔王討伐の旅をしていたはずだぞ。


 それに引き換えアキラくんはどうだ。

 絶対ウンコについて思いを馳せたりしないだろ。


「僕は、これからどう戦っていけばいいんでしょうか。こんなの、ツキホやリュウセイには相談できません。仲間だからこそ、言えないんです」


「そ、そうだなぁ。うーん」


 言うて昨日今日と戦ったモンスターはイレギュラーみたいなものだからな。

 普段の、彼らのランクに合ったモンスターなら負けはしないだろうに。

 本当、真面目な子だ。


「ハッキリ言って、ここでアドバイスを貰っても一朝一夕で強くなれるほど、現実は甘くない。結局戦いは仕事ですから。仕事とは苦悩とストレスの積み重ね。新卒ホヤホヤでも超大口の契約を取ってこれるような凄腕新人銀行マンみたいな極一部の天才でもない限り、みんなそうです。もしアドバイス一つで変わるなら、誰も苦労しません。そうでしょう?」


「は、はい」


「自分にできることを精一杯やって、毎日毎日反省会を開きながら美味い飯を食う。君ぐらいの年齢ならそれで充分です。いつか、そう遠くない未来に、成長を実感するはずですから」


「…………」


「もし間違った道に進みそうならーー周りの大人が声をかけてくれます。君は大人から好かれるタイプですから、ほっとかれませんよ。実際、上からの印象は良いみたいですからね」


「林藤さん……」


 どことなく甘ったるい口調。

 目も煌めいている気がする。気のせいだろう。気のせいであれ。

 しょうもない中年の言葉なんか聞き流すぐらいでちょうどいいのに。


「あなたが僕らのドライバーでよかった」


「俺も君らが担当で嬉しいですよ。ほら、もう寮に帰って寝なさい」


 わかりました。というアキラくんの声と同時にスマホが鳴った。

 渋谷にゴブリンの群れが出現したらしい。どうせならまたダンジョンそのものが出現してくれたら、俺の体内のマナも少しは蓄えられたのに。


 さて、深夜はあのギャルトリオが担当だ。

 きっとパパッと倒してくれるだろう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おっさん、おつー」


 案の定、ゴブリン退治はすぐに終わった。

 ピンク髪のギャル、ルイナが率いるギャル三人組が手を降って戻って来た。


「お疲れ様です」


 直接後ろのドアを開けて、スムーズに座れるようにしてやる。

 金髪、ミワが大きくアクビをした。


「ねぇおっちゃん。シート倒してさ、眠れるようにしてよ」


「それではシートベルトを装着できないでしょう」


「ちょっと仮眠したーい。どうせまだ2時だよ? 早く戻ったっておっちゃんの仕事は終わらないんだから、よくね?」


 そりゃそうだ。

 でも俺としてはさっさと帰ってリクライニングチェアでのんびりYouTubeでも見ていたいのだ。


 今度は紫髪の、シズクが眠そうに目を擦る。


「んー、林藤ちゃん、キビしい」


 ピンク髪のルイナが申し訳無さそうに手を合わせた。


「おっさんお願い。寝かせてあげて!!」


 お願いするならせめておっさん呼びはやめてほしいところだが。

 この子たちの自由奔放っぷりは俺には御しきれないので、注意はしない。

 みんなが寝ている時間帯に命をかけて戦っているんだ、わがままくらいは聞いてやるか。


「はいはい」


 2列目のシートと3列目のシートの位置を調整し、それぞれ倒す。

 本当はマットレスでもあれば完璧だったんだが、あいにくそんなものはない。

 それでも高級SUVなんだ。辺にゴツゴツして寝づらいなんてことはない。


「ふぅ、はいどうぞーーうわっ」


 ビックリした。

 急にギャルトリオに押し倒された。

 なにこれ、何なの? みなさん目が怖いんですけど。


「おっさん、騙してごめんね」


「今日の林藤ちゃん、エロい匂いしてる」


「おっちゃんさぁ、まーたどっかで男見せてきたでしょ。出発のときからアタシら心臓バクバクだよ」


 3人の顔がぐいっと近づいてくる。

 おいおいおい、これは本当にマズイって。冗談じゃすまないって。

 こちとら数時間前まで悩める若者に助言をしていたんだって。


 勇者と肉体関係を持ちました。35歳と19歳ですなんて、ダサすぎて太めの縄を買ってしまう!!


「いや、あの、ダメです、マジで!!」


「ダメなのは〜」


「ウチらの理性だよん♡」


「林藤ちゃん、人生めちゃくちゃにされちゃお?」

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