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現代勇者協会の送迎係のおっさんは異世界帰りで元最強剣士 ーー知らない世界で病んじゃったので慎ましく生きる……予定でしたーー  作者: いくかいおう


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第4話 弄ばれるおっさん、林藤

 この世界の人間にスキルなんて異能が目覚めたのは、俺の故郷ーー異世界から漏れた魔法の粒子『マナ』のせいだ。

 マナに感化された一部の人間にのみ、力に目覚めるのだ。

 スキルを手に入れた者は協会本部から徹底的に管理され、意思のあるものだけが勇者となる。


 怪我の耐えない危険な仕事。下手をすれば死人もでる。

 いくら高額な報酬がでるとはいえ、未成年まで戦地に出すのはいかがなものか。

 不満の声は耐えないが、子供の力を借りなくては手が回らないほど、厄災は頻繁に発生してしまうのだ。

 大勢の一般人が死ぬより、一人の少年が死ぬ方が幾分かマシ。

 おいおいとツッコミたくなるが、たかが10年では異世界への研究も法律の整備も間に合わないのだから、混沌極まるのも致し方ないのかもしれない。




 厄災が発生した場合、ドライバーは駐車場からSUVを発進させ、勇者たちが住まう寮へ向かう。

 そこで担当の勇者たちを待ち、車に乗せて、現場に向かうのだ。


 女性専用の寮の前で、眠気覚ましの缶コーヒーを飲む。

 セキュリティガチガチの高級マンション。タワー型ではないが、3LDKが最低クラス、ジム付きスパ完備、映画館や保育園まで一体となっているのだとか。

 マンションから、三人の女が降りてくる。

 それぞれ髪を金、ピンク、紫に染めたギャルたち。

 一応、全員19歳。


 ピンク髪が手を降ってきた。


「おっさん、うぃすー」


「あ、はい」


 とスマホをイジりながら車に乗り込んでくる。

 彼女たちは楽でいい。礼節はなっていないが生意気ではないし、心配するような実力でもないからだ。

 勇者はそれぞれ強さに見合ったランクを割り当てられる。

 彼女たちは最高ランクのS。おそらく彼女たちなら、先程の怪鳥も倒せただろう。


「ん?」


 ピンク髪が一旦車から降りる。

 と思いきや俺の隣、助手席に座った。

 じーっと、愉快そうに俺を見つめてくる。


「な、なんでしょう」


「おっさんさぁ、なんか今日かっこいいじゃん」


「え」


「どっかで男を見せてきたでしょ。わかるんだよね〜、ウチ」


 男を見せたってなんだ。

 戦ったことを言っているのか?


 他の二人も後ろから身を乗り出してきた。


「ホントじゃん。なんかおっちゃん凛々しい顔してる」


 と金髪が。


「んー、ちょっといい感じかもね。フェロモンでまくり」


 と紫髪が。


「えっと、出発するんでシートベルトをしてください。ターゲットは葛西に出現した人形のモンスター。油断なさらないように」


「「「はーい」」」


 ギャルトリオが元気に挨拶。

 したのはいいが、


「じゃあ、おっさんがシートベルトつけて」


「いいね〜、ワタシらシートベルトの仕方忘れちゃったわ」


「林藤ちゃんなら、触ってもいいよ。ちょっとだけね。くくく」


 触っていいわけないだろ。

 しかし彼女らはニヤニヤしたまま、じっとシートに座ってピクリとも動かない。

 このままだと出発できないぞ。どうする、さっさとやってしまうか。

 あとから訴えられたりしないだろうか。


「くっ……うっ……」


 姿勢を捻らせ、助手席のシートベルトを握る。

 瞬間、


「えい!!」


 ピンク髪が自分の豊満な胸をワザと腕にぶつけてきた。


「うわっ!!」


「んへへ〜、おっさん驚きすぎ。顔真っ赤じゃん。かわいい〜」


 俺で遊べて満足したのだろうか。彼女たちは自分でシートベルトを装着した。


 前言撤回。

 こいつらもこいつらで楽じゃない。

 弄ぶな、おっさんを、若い女が。


 一周回って照れくさくて縮こまっちゃうんだよ。

 どうして俺が担当する勇者たちは若い子ばかりなんだ。

 同世代の……せめて25歳以上の男性が入ってきてくれないだろうか。

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 翌日、午後8時。

 今日もアキラくんチームを乗せて、現場に向かっていた。

 厄災発生場所は千代田区、秋葉原。

 出現したのはーーダンジョン。


 開幕喋りだしたのは、アキラだった。


「大丈夫か? ツキホ」


「え、えぇ」


 バックミラーで2列目の席に座るツキホの様子を伺う。

 アキラに心配されている彼女の体に、異常はない。アキラもだ。

 協会の医療班は実に優秀だ。よっぽど重症でもない限り、一日二日で治してしまうのだ。


 ツキホが話しかけてきた。


「あの、林藤さんって、いつからドライバーをやっているんですか?」


「……どうしてそんなことを?」


「いえ、別に。私、林藤さんのことあんまりよく知らないなって思ったので」


「もう5年になりますね」


「それまでは、なにを?」


「…………」


 まだ何か疑っているのか。昨日の件で。

 そりゃそうか。リュウセイが怪鳥を単独で倒した、なんて信じられないもんな。

 だけど残念ながら、君らに真実を話すつもりは一切ない。


 最後部席から、リュウセイが足を上げて強引に前の座席に移ってくる。


「そんなことよりよ、俺に質問するべきなんじゃねぇの? なんせSランクのモンスターを倒したんだからな!! 強くなる秘訣、教えてやろうか?」


 リュウセイがツキホの肩に腕を回す。

 なまじ車内だから逃げ場がない。


「おいリュウセイ!!」


「黙ってろザコアキラ。お前は男としても勇者としても俺より劣ってんだよ」


「っ……」


 ツキホが強引に引き剥がそうとリュウセイを押す。


「気持ち悪い!! 触らないで!!」


「なぁ、一回、一回だけでもいいからさ、遊ぼうぜ。そしたら諦めるからさ」


「やめて!!」


 ったく……。


 ここは一般道。後ろに車はいない。

 俺は思いっきりブレーキを踏んだ。

 とうぜん、シートベルトをしていないリュウセイは慣性で運転席と助手席の間まで体が飛んだ。


 危ない危ない。


「な、なにしてんだよクソじじい!!」


「すんません。うだつの上がらないおっさんなもんで」


「ふざけやがって」


 リュウセイが大人しく席に戻ると、シートベルトをしっかりと装着した。


 ほどなくしてダンジョンが見えてくる。

 秋葉原の昭和通り口がまるまる、砂漠と化していた。

 手前に車を停める。


 厄災におけるダンジョンの出現とは、空間の差し替えである。

 敷き詰められた石畳からブロックを一つ抜き取り、別のブロックをハメるようなもの。

 ダンジョン奥地にあるコアを破壊しない限り、元には戻らない。

 逆にいえばダンジョンを消滅させれば、消えてしまった建物や生き物は、何事もなかったかのように復活するのだ。


 リュウセイが悪態をつく。


「けっ、砂漠かよ。おいアキラ、俺ぁコンビニで飲みもん買ってくるからよ、スキャンしとけ。ツキホ、行こうぜ」


 ツキホが無視する。

 スキャンとは、ダンジョンから漂うマナを感知して仮の地図を作成する術である。


 リュウセイが車から降りる。

 アキラも、手のひらサイズの端末を持って降車する。

 必然的に、俺とツキホのふたりだけになってしまった。

三人娘は今後も登場します。

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