第31話 また懐かれるおっさん、林藤
わからせたシグレを連れて、そそくさと俺の家に戻る。
下を向かせてカメラに映らないように配慮したが、大丈夫だろうか。
大丈夫であってほしい。たまには少しくらい安寧をくれ!! 俺に!!
日も暮れてきたので、ギャル三人娘も帰らせる。
狭っ苦しい六畳一間の部屋に、シグレとふたりきりになった。
「さて、どうしますかね。これから」
とりあえず今日が休日でよかった。
ゆっくり考えられる。
「ね、ねぇ」
「なんですかシグレさん」
照れくさそうに、というか不服そうに? シグレが話しかけてきた。
「なにかしてほしいなら、するけど」
「は?」
「か、家事のことよ家事の!! なに勘違いしてんのよ!! お世話になる以上家事ぐらいはするわよ。ワタシはお姉ちゃんなんだから、妹のお手本にならなくちゃでしょ」
「そうですか。とりあえず何もしなくていいです」
「そ、そう。ふーん。まぁワタシも好きで家事したいわけじゃないし」
いちいち一言多いな。
「それでなんですが、俺は千歳と契約を交わしています。遥か過去から結んでいた契約で、彼女が念じれば彼女の居場所がわかり、助け出すことができます。というか助けなきゃいけないんですけど」
「じゃあ安心じゃない。さっさとシュートたちに復讐して組織を取り戻すわよ」
なんで俺まで蛮勇側になっているんだ。
ていうかお前が組織を取り戻したところでそのまま検挙されて終わりだろう。
「そうしたいのは山々なのですが、いまだにその緊急アラートがないんですよ。来ないんです。つまり千歳が、助けを求めてこない」
「あ〜、あんたしょせんキープでしかないのよ。本命じゃなかったのよ」
「ガキの恋愛ごっこをしているんじゃないんです」
「てか、結局どんな関係なのよ。あぁいう女王様タイプの女が好きなの? そういう意味ならワタシもお姫様タイプだし、割とあんた好みじゃない? 言っておくけど、惚れるんじゃないわよ。共同生活をする以上お互い好印象なタイプのほうがいいんじゃないかなってことよ」
「あーはいはい」
「あしらわれた!!」
「シグレさん、話は戻しますが、あなた達のアジトはどこですか? あの倉庫以外の拠点です」
「葛飾区にあるけど」
なんて渋い場所にあるんだ。
しかし葛飾区なら、あの埠頭の倉庫からでも、渋滞にハマったとしても戻っていてもおかしくない。
ではどうして千歳は助けを求めないのか。
シグレが俺と共にいる以上、懐柔されてアジトの場所を教えられると踏んで別のところへ向かっているとか。
千歳が気絶しているとか。
あいつがシュートらと交わした契約、協会と関わらないという内容により、協会のドライバーである俺を呼べないとか。
理由ならいくらでも思いつく。
「参りましたね……。あのシュートがいるのなら、シグレさんでもたどり着けない場所にいるのでしょう。あぁ、ところでシグレさん、あのフード野郎は何者なのですか?」
シグレの壁をぶち破った男。
銃からマナを発射したあたり、おそらくこっちの世界の人間ではない気がする。
マナを飛ばす技術はスキルではなく、特殊な格闘術の類だから。
この世界の人間には無理な芸当のはずなのだ。
それに、魔王の遺体の一部も持っていた。
「さぁね。ワタシがシュートに拾われて蛮勇入りしたときからいるわ。素顔を見たことはないし、一緒にごはんも食べたことない。シュートもしっかり紹介してくれないし」
「そうですか」
「あいつとあんた、どっちが強いの? ワタシのスキルを破るなんて、あんた達しかいないもん」
「どうでしょうね。俺のマナが満ちていたなら、わかりません」
裏を返せば、そうじゃなきゃ厳しいってことさ。
シグレが首をかしげる。
マナが満ちているというのはなんだ、といった顔だった。
仕方ないので語ってやる。
俺の強さの秘訣。スキルはないけどマナで戦えることを。
だが異世界人であることは上手く伏せておいた。余計なトラブルを生むような気がしたからだ。
「つまり、俺はこれからどうにかしてマナを補充しなくちゃいけません。そのうえで千歳の居場所をつきとめないと」
「……」
「どうしました?」
シグレが長考する。
やがて顔を赤くすると、
「じゃ、じゃあこういうのはどう」
「?」
「ワタシがあんたにマナをあげる」




