第22話 女の子と戦うおっさん、林藤
「パパ活野郎、ぶっ壊す!!」
シズク姉の髪が逆立つ。
瞬間、俺の体が何かにぶつかったように後方へ吹っ飛んだ。
コンビニの自動ドアを突き破り、再入店だ。
「っつー。なんだよ」
「あんたたち、あいつを捕縛しなさい!! アジトでたっぷり苦しめてやるわ」
部下らしき男三人が店内に入ってくる。
マズいな、レジにいる店員さんが怯えてしまっている。まずは店から出ないと。
「林藤ちゃん」
シズクが手をかざす。
すると男たちは上から押しつぶされるように、地面に伏した。
スキルか。ありがたい。
「ちょっとシズク!!」
「お姉ちゃん、くーるだうん」
「あんたもあんたよ!! 無駄遣いばっかりしているから金欠になるのよ!!」
あいつ、蛮勇なんだよな。
勇者と敵対しているから暴れていたはずだったよな。
いつの間にか勇者と蛮勇の戦いではなく、謎の家庭内事情に巻き込まれているんだが。
「も〜、お姉ちゃ〜ん」
シズクが姉に手をかざす。
だが、
「無駄よシズク。知っているでしょう。ワタシのスキルは【絶対拒絶】。すべてを否定する見えない壁を生み出すって」
「ぬ〜」
「ワタシの生み出す壁は、あんたの重力すら拒絶する」
俺を吹っ飛ばしたのもそれか。
ていうかシズクのスキルは重力操作なのね。姉妹揃って強力だな。
ルイナのサイコキネシスも汎用性が高かったし、おそらく残るミワも便利なスキルを持っているのだろう。
「さて」
俺の体内にあるマナはほぼゼロ。
スマホで例えると電池残量1%の赤表示だ。
だが、力を温存していてもしょうがない。
「はぁ……」
レジ横にある『あたたか〜い』の棚からお茶のペットボトルを取る。
それを逆手に握り、シズク姉に突っ込む。
「バカじゃないの。そんなものでーー」
ペットボトルにマナを流し込み、横に降る。
か弱い斬撃波が放たれ、
パリンッ!!
見えない何かが割れる音がした。
「……へ?」
あー、完全にマナが尽きた。
ここから先はただのおっさんとして頑張ります。
シズク姉の首根っこを掴み、押し倒す。
「な、なんで……」
「ここで気絶させます」
「ふざ……けんな!!」
またスキルを発動され、透明の壁に押され後ろへ飛んだ。
遅かったか。
シズク姉は怒気を孕んだ鬼のような形相で、息を荒げる。
「あんた、なにしたのよ」
「なにって……」
シズク姉が手のひらサイズの端末を取り出した。
「スキルは持っていない。勇者じゃない? じゃああんた、何者なのよ!!」
ほう、マナを測るだけでなく、スキルの有無もわかるのか。
どういう理屈なんだか。どのみち、今の俺にはマナがないのだから、一般人そのものなのは間違いない。
「何者って、ただのドライバーですよ」
「ドライバー?」
「はい。シズクさんらを送迎するドライバーです」
同調するようにシズクが頷く。
シズク姉が訝しげに首をかしげると、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
どうやらコンビニのアルバイトが通報したらしい。
警察組織にスキルを持つ者はいないはずだが、顔を見られるのはマズいだろう。
シズク姉は妹を指差し、
「ちっ、まぁいいわ。シズク!! 勇者なんてやめてあんたもワタシのとこに来なさい!!」
「えー、やだ」
「ていうか夜ふかししないで朝起きて夜に寝なさいよ!! お姉ちゃんもう行くからね!! じゃあね!!」
起き上がった部下と共に、そそくさと去っていった。
あいにく、いまの俺に彼らを引っ捕らえる力は残されていない。
「一緒に暮らしているんですか」
「そんなわけないじゃん」
「上は知っているんですか」
「教えてないよ。……だってわたし、どっちかといえばお姉ちゃん側だもん」
臆することも躊躇うこともなく、シズクは続けた。
「本当は嫌いなんだー。協会も、勇者意外の人間も」




