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現代勇者協会の送迎係のおっさんは異世界帰りで元最強剣士 ーー知らない世界で病んじゃったので慎ましく生きる……予定でしたーー  作者: いくかいおう


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第2話 久しぶりに運動するおっさん、林藤

今回から基本一人称です

 モンスターが逃げ込んだのは練馬区のとある公園。

 対象ーー全長10mの巨大な怪鳥。

 すでに歩行者を2名ほど捕食しているらしい。


 厄災の厄介なところは、出現場所も時間も規模もランダムなところ。

 仮に東京から九州まで避難したところで、今度は福岡あたりでダンジョンやモンスターが大量発生する可能性があるのだ。

 防ぎようがなく、常に迅速な対応を求められる。

 まさに災害。


 俺は公園から100mほど離れた場所に車を停めた。

 モンスターが発生したので付近の住民は避難、もしくは家に籠もって、公園の周りはまったく人気ひとけがなかった。

 警察がパトカーを走らせ、モンスターが現れたことを拡声器で知らせていく。サイレンは鳴らしていない。モンスターを刺激しないためだ。


 勇者たちが車から降りる。

 リーダー気取りの金髪、リュウセイの手元に白い片手剣が出現し、やつはそれをぎゅっと握った。

 同じようにもう方の手には槍。

 これがこいつのスキル【武器錬成】。

 自分の体力が尽きない限り、いくらでも武器を生み出せるのだ。

 まぁ、かなり当たりのスキルだな。


 スキルは人それぞれ。だいたいスキルの強さがそいつの強さと比例する。

 他の二人はどちらかといえば、後方支援タイプだ。

 だから毎度リュウセイが目立つ。だからリュウセイがのぼせ上がる。


 ま、俺はしょせんドライバーだから、こいつらを安全に送迎するだけなんだが。


「けけけ、んじゃさっさとぶっ倒してくっかな。おいおっさん、俺が戻ってくる前にケンタッキー買って来とけ」


「もう店は閉まってます」


「あ? じゃあなんでもいいから肉買ってこいよ。頭わりぃな」


 リュウセイが駆け出す。

 続けてアキラも。


「林藤さん」


 ツキホが申し訳無さそうに頭を下げた。


「代わりに謝ります。すみません。あんなやつの言う事、真に受けなくていいので」


「……」


「どうかしましたか?」


「いや、俺の名前知ってたんだなって……」


「へ? だってお互い自己紹介したじゃないですか。去年」


「あ、あー」


「私、酔いやすいんですけど、林藤さんの車で酔ったことは一度もないんです。くすっ、私たちの誰よりもすごいスキルですね」


「……」


「では」


「あ、はい。頑張って」


 と、小さくなっていく背中に手を振った。

 惚れちまったかって? バカ言うなよ。さすがの俺もそこまでチョロくない。

 ていうか彼女はアキラくんと両思いっぽいし。独り寂しいおっさんでも若者の恋の応援くらいするさね。


 さて、まぁなんだかんだ、今回もリュウセイがいるから問題ないだろう。

 生意気なだけあって実力はあるし。車のなかで適当に時間でも潰そうか。

 ぐいーっと体を伸ばし、シートを後ろに倒す。

 スマホを取り出してソシャゲを……する気力もいまはない。

 SNSもショート動画も開けない。情報を頭に入れる行為に疲れてしまったから。


 現在齢35歳。食欲はあっても胃に入らず、常に気力が湧き上がらず、簡単に足がツルようになった。

 昔はあいつらみたいにエネルギッシュに生きていたんだけどなあ。


「んあ?」


 ポツンと、フロントガラスに水滴が落ちてきた。

 ポツリポツリと数が増えていく。

 雨か。さっきまで晴れだったはずだ。夜とはいえ見間違うはずがない。

 天気予報では降水確率は0%だった。


 となるとこれは、自然現象ではない。

 あの三人のスキルでもない。


「マズイな」


 天候に影響を及ぼすレベルのモンスター。

 事前の通知では怪鳥はランクAだったが、これはおそらくそれ以上。


 おそらく本部からさらに応援をよこさなくちゃいけなくなる。それまであの子たちは帰れない。当然、送迎係である俺も帰れない。


 ていうかそれまであの三人で持ちこたえられるか?

 絶対勝てないぞ。

 殺される前に逃げ切れるだろうが……。


 ふと、ツキホとアキラの顔が脳裏をよぎる。

 はぁ、しょうがない。もしものことがあったら二人の恋も上手くいかなくなる恐れがある。

 おっさんだからな、優しい若者の恋路を応援してやらなくちゃいけない。

 たまには運動するのも、悪くないか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 現地についてみれば、やはり三人は苦戦していた。

 アキラとツキホは気を失って、リュウセイも腰を抜かしている。


 それよりも驚くべきはモンスターの方。

 地面に両足をつけて、巨大な翼を広げている怪鳥は、己の身にバチバチと電気を纏っていた。


 怪鳥が『ギャアアアス』と叫ぶ。

 曇天が稲妻を降らす。


 リュウセイが蹲った。


「ひ、ひぃい!!」


 振り返って走り出そうとしたタイミングで、俺と目が合う。


「おっさん!!」


「どこへ行く」


「な、なんでここに?」


「で、どこに行くつもりだ?」


「タメ口使ってんじゃねえよ!!」


「はぁ……どこへ行くんですか」


「に、逃げるに決まってんだろ。俺の手に負える相手じゃねえ!!」


「ツキホちゃんとアキラくんはどうする」


「そいつらが食われているうちにできるだけ遠くに行くんだよ!! 戻るぞ!! 車を出せ!!」


「ふぅ……」


 うーん、ここで三人とも死ぬくらいなら、って考えは俺も賛同できるが。

 日頃の行いかな、こいつが口にするとため息がでる。


「さっさと行くぞおっさん!! 車を出せ!!」


 と俺を煽ったところで、ツキホが目を覚ました。

 見たところ流血はないが、おそらく怪鳥の電撃攻撃で内蔵に負荷がかかっているに違いない。


「り、林藤さん、に、逃げて……。わ、私たちが……たお……し……」


「あー、大丈夫ですよ」


「え?」


「あの鳥ならたったいま…………リュウセイくんが倒してくれました」


「「は!?」」


 ツキホとリュウセイが同時に驚愕する。

 怪鳥に視線を戻してみれば、確かに撃退され、黒い灰となって散っていた。

 死んだ証だ。


 ふたりとも何が起きたのか理解できずに、ただじっと、怪鳥がいた場所を見つめていた。

 さっきまで元気に威嚇していた鳥が、一瞬で死んだのだ。すぐに事態が飲み込めるわけがないだろう。


「さ、帰りましょうか。報告書も書かなくちゃいけないんでしょ」

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