表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代勇者協会の送迎係のおっさんは異世界帰りで元最強剣士 ーー知らない世界で病んじゃったので慎ましく生きる……予定でしたーー  作者: いくかいおう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/17

第16話 学校占拠⑥ へとへとなので介護してもらうおっさん、林藤

「コンドコソ……クウ……オマエ」


「っ!?」


 気付いたときにはコンバに殴られていた。

 後方に吹っ飛び、花壇を突っ切って校舎に激突する。

 見えなかった。魔王の一部を取り込んで俺より強くなった? というか、俺が衰えているせいもある。

 異世界にいた頃より、遥かに。そして、五分前よりも。


「クッソ」


 あ〜、力が湧かない。

 背中が痛い。ていうか謎の吐き気が込み上げてきた。


「タイシタコトナイナ、オマエ」


「いいよなお前は、餌貰って元気いっぱいで」


「エサ? フザケルナ、マオウサマノウデ、エサジャナイ」


 尊敬している割には躊躇わず食うんだな。


「ちなみに、どうして魔王の腕が切り離されているのか教えてやろうか」


「?」


「俺がバラバラにしたんだよ。お前の大好きな魔王様をな」


「!!」


「とっくにぶっ殺した。この俺が」


 コンバが俺の腹を殴る。

 続けて、肩に噛みついてきた。


「コロス!!」


「ッ……」


 ダメだこりゃ。

 俺の体内に蓄えたマナも、あと大技一つ出すのが限界。

 しかも相手は素早い。当てられるかも怪しい。


 惨めなものだ。

 他所の世界に迷い込んで、複雑な社会に病んだ末にモンスターに食われて死ぬなんて。

 せめて、せめてルイナを本部まで救急搬送してやりたかったが。


 と諦めかけた瞬間、


「「「ガギャアアアア!!」」」


 校舎から、生き残っていたゴブリンたちが飛び出してきた。

 各々殺気立って、棍棒片手にコンバへ突っ込んでいく。

 よくわからないが、いまのうちにコンバから距離を取る。


 なんだ? こいつら。挑みかかるのはいいが、どんどんコンバに殺されていっている。

 なにをそこまで怒っているのだろうか。

 そうか、そうだった。こいつらのボスはコンバに殺されているんだ。

 なるほど、意外にも義理堅い、仲間思いな連中だ。


 さて、今のうちに策を練らないと。

 あいつの動きを封じ、確実な一撃で完全消滅させる。

 どうする。どうすればいい。


 コンバがあっという間にゴブリンたちを全滅させた。

 改めて俺を睨む。


「クウ」


「食ってもおいしくないぞ。喫煙経験もあるしな」


 腹を括るか。

 そう覚悟した瞬間、


「オッ!?」


 コンバが宙に浮いた。

 自由に身動きが取れず、ジタバタと暴れまわっている。

 これは、まさか……。


「おっさん、おっつー」


「ルイナさん……」


 顔面蒼白で、腹を擦りながら、よたよたとこちらへ近づいてくる。

 やはりルイナだった。ルイナのスキルで浮かせたのか。


「大丈夫なんですか?」


「んー? 持続して浮かせるのはちょっとしんどいかなー。でもおっさんのためにウチ、死物狂いで頑張るよ。これしか取り得ないし」


「ありがとう。もう少しの辛抱です」


 もっと良い武器がほしいな。

 リュウセイのやつも連行してくればよかった。


「林藤さーん!!」


 声がする。上からだ。

 廊下からツキホが心配そうに身を乗り出して、俺を呼んでいた。


「私、私にできることはありますか!!」


「おぉ〜、ちょういいところに。ツキホさん、その〜、俺に命を預けるって、できますか?」


 ツキホは首をかしげると、ムギュッと顔をしかめて窓から身を投げた。

 おいおい、勇者だから多少は丈夫とはいえ、危ないだろうに。

 なんとかツキホをキャッチする。意図せず、お姫様抱っこの体勢になってしまった。


「なんと無茶な」


「私、林藤さんに命を預けられます。さっき確信しました、林藤さんは英雄さんで、私のお父さんだってことを」


「えっと、申し訳ないですけど違います。ですが、お気持ちは嬉しいです」


 ツキホを降ろす。


「それで、一体なにをすれば?」


「俺の介護です」


「介護?」


 思うように体が動かない情けないおっさんをサポートしてくれってことさ。

 若い女の子ふたりに介護されないと、もはやモンスターすら倒せないのだ。

 三五歳でこれなら、六〇になったらどうなっているのやら。


「あれを射抜いてください」


「え、でも私、あのボスゴブリンですら貫けなくて……」


「大丈夫、大丈夫です。俺がついてますから」


 ツキホが息を飲む。

 覚悟を決めて、頷いてくれる。


「おっさ〜ん、ウチも辛いんだからはよ〜」


「あ、はい。ではツキホさん、頼みます」


 ツキホが光の弓矢を手に握った。

 鋭い目つきで宙に浮かんだコンバを睨み、矢を構える。


「少し、失礼します」


 ツキホの両肩にそっと手を添える。

 彼女にバレないように、俺に残った最後のマナを流し込む。

 恒星のように眩い弓矢が、さらに強い光を放ち二倍にも三倍にも大きくなる。


「眩しい!! こ、これはいったい……」


「大丈夫です、落ち着いて。あなたには素晴らしい才能があったということです」


「でも今まで、こんなの……。あぁそうか、そうですよね、お父さんが側にいてくれるからですよね!!」


「違います」


 まぁ、近からず遠からずなんだけど。

 ツキホが深呼吸をする。キリッと、再度狙いを定める。

 眩しかろうが関係ない、本能で当てられるはずだ。


 そしてーー。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 数時間後。


「お疲れさまでした、ルイナさん」


「おつおつおっつー。いてて」


 助手席にルイナが座る。

 俺は車のエンジンをかけて、出発した。


 戦いは終わった。コンバは魔王の遺体ごと完全消滅した。

 例のフード野郎の行方はわからない、いつの間にか消えていた。追加の調査は千歳に任せる。


 おそらく魔王の腕が消えたからだろう。開きっぱなしだったゲートも閉じて、各地でのモンスターやダンジョンの処理も無事に終わった。


 やがて学校にも協会の救護班が到着した。

 ゴブリンに乱暴された生徒やツキホにアキラ、そして重症のルイナ。

 みんな手当を受けて、解放されるころにはとっくに日が暮れて、夜になっていた。


 ツキホとアキラも本部にて報告書を提出することになったが、俺の車には乗せなかった。

 正直、いまはツキホの相手をしている余裕がない。またアキラのためのメンタルクリニックを開業してやる余裕も。

 だからふたりには、救護班の車に乗ってもらった。


 そうして現在に至る。


「あの子さー、夕勤の子でしょー? 親子なの?」


「違います。向こうの思い込みです」


「ウチもおっさんのこと、パパって呼ぼっかな〜」


「やめてください」


「じゃあ、おじさま?」


「本当にやめてください」


「んへへ」


「お腹の傷はどうですか? 完治したわけではないでしょう?」


「うん、治療用ジェルで塞いでるだけ。帰ったら手術〜」


 にしては軽いなぁ、本当に。

 彼女も救護班の車で帰ればよかったのに、無理やり俺と一緒に本部へ戻ることにしたのだ。

 それを許してしまえるほど高性能のジェルにも驚きだけど。千歳が開発に噛んでいるらしいが、向こうの技術を流用したのだろう。


「ねぇおっさん。頑張ったご褒美とかないの〜?」


「なにが欲しいんですか?」


「おっさんのはじめて」


「どうして経験無しだって前提なんですか。却下です」


「え〜? じゃあなんだろうなー。焼き肉食べれるお腹じゃないしなー」


 今回、ルイナはよく頑張ってくれた。

 彼女がMVPだし、俺一人ではおそらくコンバを倒しきれなかったかもしれない。

 故に、ご褒美を上げたいという気持ちは、俺にもある。


「では、俺の秘密を教えてあげます」


「ん?」


「俺もあなたと同じで、戦いのために他の人生を切り捨ててきました。いまは第一線から退いて、自己肯定感の低い病んでるおっさんに成り下がりましたけど」


「んへへ、それが秘密?」


「……俺は三五歳ですけど、この地球の住人としては、あなたの方が先輩です」


「おっさんは宇宙人なの?」


「そこから先は教えません」


「んへへ、変なの。やっぱおじさまって呼んじゃお〜」


「勘弁してください」


「な〜んか、今日おじさまと一緒にいすぎてムラムラしてきた。進路変えてウチの家へゴー!!」


「ゴーしません!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ