第14話 学校占拠④ 立ち向かう少女、ツキホ
※まえがき
今回は三人称です
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ツキホとアキラは他の生徒たちや教師と同様に、教室の奥に座らされていた。
できることならすぐにでも戦ってゴブリンたちを蹴散らしたいが、無力な一般人が多すぎてそれも叶わなかった。
辺に怒らせたり興奮させたりせず、機会を待つしかない。
ふたりはアイコンタクトで各々の思いを伝える。
幼馴染なだけあって、ツキホとアキラは以心伝心であった。
いま、この教室にはゴブリンは三体。
ザコが二体に、一回り大きなボス個体が一体。
女子生徒が泣き出す。
堪えていた恐怖心が決壊し、嗚咽を漏らす。
癪に障ったゴブリンが女子生徒の髪を引っ張る。
マズイ。すぐに助けないと。
こうなっては機会など待っていられない。
ツキホがスキルを発動しようとした瞬間、遠くから窓ガラスが割れる音が響いてきた。
助けか、ゴブリンか、逃げようとしている生徒か。
あらゆる可能性が脳内で逡巡する。
当然、ゴブリンたちも。
彼らの視線が一斉に廊下の方へ向けられた。
今だっ!!
「創弓光矢!!」
発光する弓が具現化される。
素早く矢を放ち、女子生徒を襲っていたゴブリンを射抜く。
残り二匹がツキホに気づく。慌ててもう一匹のザコゴブリンを殺す。
ボスゴブリンの顔つきが変わった。ビンビンに殺気を放つ憤怒の相好。
叫ばれるのはマズイ。アキラがスキルを発動する。
「断壁断盾」
右手に現れた盾をボスゴブリンへ投げ、怯ませる。
だが、この程度でやられるボス個体ではない。
すぐに起き上がるなり、結局、
「ギャアアアス」
高らかに叫んでツキホの方へ突っ込んでいった。
アキラが間に入り、両手をかざしてシールドを展開した。
盾がなくても魔法の壁は作れるが、強度は下がる。
「ツキホ!! あの技を!!」
「うん!!」
ツキホが天井に向けて矢を放った。
矢は急旋回してカーブを描き、降下。
シールドの先にいるボスゴブリンへ直撃した。
しかし、浅い。というより、皮膚が硬い。
技を加えた直線的ではない攻撃は、威力がグッと落ちるのだ。
「グギャアアアアア!!」
ボスゴブリンが棍棒を振るう。
アキラのシールドが粉砕された。
「くっ!!」
そのまま追撃。ゴブリンの棍棒がアキラの顎に当たり、彼は脳震盪の末に気絶した。
「アキラ!!」
動揺している余裕などない。
ツキホは力いっぱい矢を引いて、放った。
見事ボスゴブリンの腹に突き刺さり、吹っ飛ばす。
なのに、
「ギャアアアアアス!!」
ボスゴブリンはピンピンしていた。
なんという耐久力。このまま暴れられては生徒たちに危害が加えられるのは必至。
見誤った。殺せると勘違いしてしまった。
ツキホの脳裏を過る、あの男の顔。
父の面影を重ねているあの中年。
「パパ……」
ボスゴブリンは走って距離をつめてくる。
途端、何かが教室の扉をぶち破って乱入してきた。
というより、廊下からふっ飛ばされてきた。
えらく筋肉質で真っ黒な人型の化け物。
おそらくはモンスター。
立ち上がり、ツキホたちに視線を向ける。
ジュルジュルとよだれをたらし、獲物として認識しているのは明らかだった。
その場にいた全員の血が一気に冷めていく。
ライオンを目にしたウサギのように、抵抗など一切無駄だと本能で悟る。
「ハラ……ヘッタ……」
続けて、今度こそ見知った顔が入ってきた。
人型モンスターもビクッと視線を向ける。
「てめぇ、勝ち目がないからって急に逃げ腰になってるんじゃねえよ。確実に殺してやるからガクガク震えながら覚悟を決めろ」
「パ……林藤さん」
「ん? あっ、え? うそ、なんでいるんですか?」




