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出陣、ギルドマスター!  作者: あみーご
1.学園に通いたい!
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21/26

どうでも良いから服を着ろ



 と、いう訳で。やって来ました聖白訓練所。



「うおぉらあああ!! かかってこいやああ!!」


「ひぃいい!!」


 さっきまでの落ち込んだ気持ちを吹き飛ばすべく魔法と剣をフル使用で暴れまくる。実践訓練と称して俺vs隊員全員の戦いが繰り広げられていた。あれだからね。決して八つ当たりとかじゃないからね。ちなみにマリムは不在で、エスカは見学だ。



粒砂りゅうさ!!」


 右手を上に突き上げて叫ぶと、地面が砂漠の砂のように変化して隊員たちの足を沈めていく。回避できたのは数人かな。何人かが腰まで沈んでしまったところで、壁に剣を突き立てて踏ん張っていたロイが魔法を発動した。



「流れし突風は竜宴の運び手! 招来、烈風陣!」


「ぶはあっ!」


 ロイの放った風の魔法は渦巻きながら砂を舞い上げ、そのまま俺の体を巻き込む。



「ゲホゲホ!! おえぇ!!」


 待ってめっちゃ口に入った! うおお超ジャリジャリする!


 たまらず魔法を解除して砂を消し、剣に風をまとわせ空を切り裂いた。それは斬撃となり、烈風陣を掻き消して一直線にロイへ向かっていく。その瞬間背後に感じる気配。振り向くよりも先に剣をかざし、それは誰かが放ったらしい雷針撃を弾いて消滅させた。これはマリムがよく使う攻撃魔法だけど、針の数も威力もだいぶ劣ってる。あとでマリムに指導してもらおう。



「さて、次は……」


 なんの攻撃が来るかなとか思いながら前に向き直ると、俺の斬撃を間一髪避けたらしいロイが剣を構え直してた。やべッと身構えたと同時に足下に大量に放たれる矢。この矢はアルトだな畜生。バックステップでそれを避けるけど、三歩ほど後ろに下がった瞬間隊士の一人が斬りかかってくる。



「あぶなッ!」


 咄嗟に強化した生身の腕で剣を弾く。その勢いで宙に飛ばされた隊士に追撃しようと地面を蹴るが、タイミングを計ったように何処からか魔法が発動された。



「捉縄呪縛!!」


 詠唱破棄だからツルの数は少ないが、俺一人に対してなら十分な量が地面を突き破って伸びてきた。つーか俺空中なんですけど! やっべ!


 これはマジで舐めてかかったらヤバい。目をつむって集中し、手のひらを前につき出す。



火蛇ひだ断空だんくう


 目の前に現れたのは巨大な炎の壁。この前マリムの雷針撃を防いだ断空に、炎を加えた応用技。ただの断空なら弾くことしか出来なかったであろうツルも、一本残らず燃え上がって消えた。体勢を持ち直し、床に着地する。



「な、マスター……。今の技は?」


 エスカが眉をひそめて呟く。誰かが撃ってきた風属性の銃弾を躱しながらエスカの方を振り向いた。



「俺が作った! 結構使えるぞ!」


「成る程、そうですか。パクります」


 エスカ! なんて堂々としたパクリ宣言! こいつ結構腹黒いな!


 それにしても、かれこれ三十分はこうして戦ってる。そろそろいいかな? 四方八方から撃たれる魔法をなんとか防ぎながら、俺は隊員達に向かって怒鳴った。



「よおっしお前ら!! 最後だぞ!!」


「はい!!」


「今からすっげーの撃つから、全員耐えろ!! 詠唱中に攻撃してきたって良いからな!!」


「はい!!」


 一気に表情を引き締めた隊員達を見回し、自分の周囲を断空で囲む。それをされる前に……と何人かは魔法を放っていたようだけど、断空が展開する方が僅かに早く、全てを弾き飛ばした。さすがに断空だけで攻撃を防ぎながら詠唱はきつい。深呼吸して集中する。



「極地の理。振動せし鼓動と破壊……」


 詠唱を聞いた隊士たちが顔を青くさせ、慌てて攻撃から防御へ転換した。何人かは訳も分からずうろたえ、その間に地面が唸り始める。隊員達の防御が粗方完成したのを見て、それを発動させた。



「揺るがせ。陸上双破」


 発動したと同時に地面のある一角が盛り上がる。そのまま破裂したように爆発した。でもそれで吹っ飛ばされたのは僅か数人。この魔法はこれで終わりじゃない。俺は片膝をついて地面に手をつき、そのまま続けた。



「────連動八陣!!」


 その瞬間至るところでさっきのように地面が盛り上がり、地雷のように連動して大爆発を起こす。声を上げる間もなく巻き込まれる隊士達。物凄い破壊音を轟かせながら、砂煙が辺りを覆い尽くした。


 風を起こしてそれを収まらせれば、目に入ったのは力尽きた隊士の姿。粉々に砕けて積み重なった瓦礫に引っ掛かり、ほとんどが気絶してる。ちょっとやり過ぎた。


 でも何人かは意識があるな。視界の端に見えるのは剣を杖代わりに立ち上がろうとするロイとリーヤ。アルトは駄目だったみたいだ。他にも五・六人がなんとか防ぎきれたらしく、荒い呼吸を繰り返して座り込んでいた。けどもれなく満身創痍なので、これ以上は続けられない。そして何より俺が疲れた。頑張りすぎた。帰りたい。


 だがカッコ悪いから疲れた様子を必死に隠す俺! 素敵!



「ふははは!! 見たか! これが俺の実力さ!!」


「マスター! やりすぎです!」


「うわエスカ! いて!」


 見学していたエスカにはたかれた。おかしいな。ちゃっかりエスカがいた位置まで巻き込んで発動させたはずのに、当の本人は頬が少し汚れただけで済んでいる。すっげー。流石幹部。



「それにしても連動八陣ですか。凄いですね」


「エスカも八までなら余裕だろ?」


「ええ。でもそれだけの強度の断空を展開しながらだとギリギリかもしれません。そういうマスターは、あの状況でいくつまで出せたんですか?」


「十二……くらいかな」


 今回の魔法は、発動だけだったらAランクくらいのやつなら誰でも打てる中級魔法。でも地面の爆発を連動させることで威力と難易度がかなり上がるから、いくつ連動させられるかは発動主の力量次第だ。



「今回の連動はとりあえず八回にしておいたけど、何人かは耐えれたみたいだし。次はもう少し増やしてみっかな」


「全滅させてどうすんですか」


 呆れたような視線を送ってくるエスカをスルーして、側に倒れていた隊士を起こす。



「……う」


「お。起きたか。お前な、なんか意味も分からずワタワタしてたろ。落ち着いて断空を展開しとけば、お前の位置なら耐えられたんだぞ? しっかりしろ」


「は、はい……」


 弱々しく頷く隊士。続けて少し遠くにいた隊士にも声をかける。



「それからお前!」


「は、はい!?」


「お前は周りが見えていなすぎ。足下が爆発しそうんなったとき、風を使って上に逃げたろ。ここは天井があるし、超意味無いからそれ」


「すみません!」


「後ろは発動域から外れてたから、上じゃなくて後ろに逃げればたぶん助かったぞ。もうちょっと落ち着け」


 そんな感じに、半分くらいの隊士に教えていく。



「こんなもんかな。よし、俺は帰るぞ!」


「ええ!? 待ってくださいよマスター! なんで半分くらいにしか声かけてくんないんスか!」


「俺たちは!? 俺たちはどうすれば助かったんですか!?」


「お前らは……、無理だな。どうやっても爆発してたな。そういうこともあるさ」


「ひでえ!!」


「つーことでお疲れ様でした!!」


「お疲れ様でしたあ……」


 動きやすいように脱いでいたローブを羽織り、仮面をつける。夜に行く任務決めてこなきゃ。



「マスター。帰られるんですか?」


「夜に行く任務決めてからな! そういえば、畑を荒らす魔獣の群れの討伐行ったんだろ? 大丈夫だったか?」


「ええ。数と種類がハッキリしていなかった為に最高ランクが設定されていただけで、あまり大したことはありませんでした」


「そっか! じゃあまた明日な!」


「はい。お気をつけて」


 柔らかく笑うエスカに見送られてロビーへ戻った。やばい。結構時間が押してる。みんな忘れてるけどセリスが来るから。マジで急がないとヤバイから。もうなんか史上最速くらいの勢いで任務を二つ決め、中庭へと移動した。


 転移する前に時刻を確認すると、九時ちょっと過ぎ。これはもう確実に訓練所に居すぎた。最後の俺vs隊員全員は三十分程度だったけど、それまでにエスカと学校生活について話したり個別訓練もしてたからなぁ。え、つーか忙しくない!? なんか俺超忙しいんだけど! 



「はーー。風呂入りたい……」



 思わず独り言を零しながら消えていく俺の体。絶対に汗臭いであろう身体を引きずりながら、寮の自室へと転移した。


 それから数秒。部屋に到着したのを感じて瞳を開ける。ふう、と一息ついたところで、なにやら廊下が騒がしいのに気付いた。不思議に思って耳を澄ます。



『どうしよう! 全然フィアの気配がないんだってば!』


『ほ、本当ですか? どうしようエリちゃん!』


『大袈裟ね。どっか行ってんじゃないの?』


『違うもん! ミーアさんに聞いたけど、寮を出るとこは見てないって言ってたもん! きっと中で倒れてるんだ!』


 俺のことかあぁああ!!!! 待て待て待て!! やっべ!! 超やべえ!!


 最速でローブと仮面を消し去る。あああ服も砂だらけだ!! き、着替えねえと……ッつーかセリス早くない!? 十時頃じゃなかったんかいいい!!



『馬鹿馬鹿しい。あたしは部屋に戻るわね』


『待って下さいエリちゃん!』


『よおし! 僕が扉をこじ開ける!』


『ええ!? セリスさん落ち着いて……』


『行くぞー!』


 いやああああ!! 待って!! ちょっと待って!!


 部屋着に着替えて玄関に走る。だがそこで気付いた。髪色が! 髪色がそのまま!



『必殺! 身体強化で扉破壊攻撃ぃいい!』


『セリスさん! ネーミングセンスが……!』


 ちょ、ティリーが突っ込んだ! すっげ超レア! いやそんな場合じゃなかった! 髪色を……と、もう一人でてんやわんやしていたその瞬間。俺の部屋の扉はぶっ飛んだ。


 可哀想なことになってしまった俺の部屋の扉。真ん中でへし折れ、俺の脇に崩れ落ちる。その向こうにいるセリスとティリーと目が合い、俺は汗びっしょりで笑みを浮かべた。



「や、やあ。イラッシャイ」


「あれ? なんだあ、フィアいたの?」


 はいセーフ。超ギリギリだったけどなんとか茶髪の俺が完成していました。うわあ、寿命縮むかと思ったわ。



「心配したんですよフィアさん」


「あ、ご、ごめんよ! 寝てました……みたいな」


「もう、人騒がせなフィアだなあ」


「フィアあああッッ!!」


 そのときどこからか、いや、間違いなく隣の部屋から飛び出してきた奴から雄叫びが上げられる。そうですね。言うまでもなくアークですね。



「どうしたフィア!! なにか破壊音が……ってなんじゃこりゃああ!!」


 へし折れた扉を見て絶叫するアーク。もうなんか色々と崩壊してるよこの人。なにこれ。誰。



「きゃ! あ、アークさん!!」


 突然ティリーが頬を染めて顔を覆った。そこでようやく気づく。この人、全裸だ。



「ん? ああ、すまない。風呂に入ってたんだ。で、この状況はなんだ?」


 そう言いながら手に持っていたタオルを素早く腰に巻く。そうだね。それなら大丈夫……って、いやいやいや!! なに何事もなかったかのようにクールに決めてんの!? なんで先に巻いてこなかったの!? 馬鹿なの!?



「は、恥ずかしいです!」


 顔を覆ったままティリーは走りだし、凄い勢いで自室に飛び込んで行ってしまった。アークは濡れた髪を掻き上げてティリーの去って行った方を見つめる。



「どうしたんだあいつは。騒がしい奴だな」


 駄目だこいつ。早く何とかしないと。


 そのあとなんとか服を着せたアークに扉を直してもらい、セリスに本を貸し、そしてようやく落ち着いた。ちなみに夜の任務はアークと行きました。任務をこなしながら全裸についてきつく叱っておきました。たぶんこいつはアレだな。羞恥という言葉を知らないんだな。

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