土の匂い
ジーグたちは倒れたガルに群がりはじめ、生気を宿した人々からは嗚咽や歓喜の声が上がる。
そんな囂々とした洞穴の隅に横たわるガレス。彼の傍らには灰色の痩せた馬が一頭佇んでいた。
あぁ、今はあんな色をしているけれどあれはきっと……。
「ノア! ノアね!」
「ルナ! 異国の青年! あぁ、ありがとう……なんと言葉にしたらよいのか……」
「だぁ!」
「うっ!」
こ、声が……。
「あぁ、ルナ……。大きくなったな」
「がぁ!」
ナイトが頭を抱える。どうやら彼にもノアの声が聞こえるようになったようだ。
「う、うん。私も会えてうれしいわ! お父さんは? お父さんはどこ? 生きているの?」
ノアの声の音量はとんでもないものだったが、ルナの頭の中は父のことで今にもはち切れんばかりだ。
「あぁ、ベン……」
ノアがその名を呼んだ途端、ルナの心臓は跳び上がった。
お父さんは生きていたんだ! やっとやっと、やっと会える!
人だかりの中からふらりと現れた痩せた男。
ルナは急いで荷袋から写真立てを掴みだした。緊張しているのか手が震えている。
顔を上げた瞬間、ルナは喜びと興奮で気を失いそうになった。
写真の中よりも皺が増え、髪も髭もぼさぼさ。痩せて目は落ち窪んでしまっているが、彼を支える根の部分は変わってはいない。
その男はまぎれもなくルナの父、ベン・アーネスだった。
「お父さん!」
ルナは叫ぶと同時に飛び出していた。
あぁ、気が遠くなる程の時間、地下に閉じ込められていたはずなのになんでだろう、懐かしい土の匂いがする……。
その匂いはルナの鼻腔をくすぐり、父の骨ばった背に回す腕に勝手に力を入れた。
しかしルナがいくらきつく抱きしめても、ベンの腕はルナの背に回されることはなかった。
「おとう……さん?」
「君は、誰だい?」




