ガルの記憶
暗幕を思わせる闇の中に、ぼんやりとひとつの白いもやが浮かんでいる。
そのもやを取り巻くように、さらに3つの灰色の影も見えてきた。
やがてその輪郭は鮮明になっていき、ルナの目の前でもごもごと動き出した。ギャーギャーと悲痛な獣の叫び声も聞こえてきて、締め付けられるような気持ちになる。
ガル?
白いもやは真っ白なジーグ、灰色の3つの影は……人間の形になっていく。
白いジーグは死にもの狂いで叫んでいる。
いや、叫んでいるのはジーグだけじゃない、私……?
ルナは叫んでいた。それも泣き叫んでいる。身体中が憎しみと悲しみに侵されている。
3人の人間は……笑っていた。
笑いながら手に綱を持ち、その綱は白いジーグに繋がれている。
ジーグの悲鳴はどんどんと強さを増し、やがて耳をつんざくような死への咆哮となって高波のように押し寄せてくる。
嫌!
やめて!
思わず耳をふさぐが、脳の隙間を縫ってその声は入り込んできてしまう。
あぁ!
陽光が差す。
ジーグの体が……溶けていく……!
白い皮膚はただれ、太い血管は剥き出しになり血しぶきを上げ、ドロドロになっていく。
嫌ぁぁ――――――!
------人間たちは舌打ちをした後、笑った。
下卑た笑いを放つ三日月のような口が3つ、ほとんど骨となってしまったジーグとルナを見下している。
あぁ、あぁ、なんてこと……
身体中の細胞がぶくぶくと泡立って熱い。
この悲しみを、憎しみを、私は扱う術を知らない。泡立ち、増殖し、吹きこぼれる憎悪で爆発し、散り散りになってしまいそうだ。
お母さん……!
あぁ、私のお母さん!
私?
違う。
……これは記憶だ、鮮明な映像として消せずに、消えずに残っている記憶。
私じゃない、私のじゃない。
ガル?
ガルだ。
これは彼の記憶、幼き日の彼の……。
ガル……。




