悲しげな瞳
「小娘……」
大きな淡紅の眼がぎろりとルナを睨みつける。
やっぱり……。
ルナはなんとなく感じていた違和感を口にした。
「あなた、目が……」
目があまり見えてないんでしょ? だから動きが少し遅れた。アルビノは元来視力が弱い個体もいるっていつか文献で読んだことがあるわ。
「うっ」
ガシッとガルの鋭い爪を持つ手がルナの胴を掴んだ。
しまった、腕は動くんだった。
「だったら何だ」
「ぐっ」
ガルの手に力が込められていく。だが、弱っているせいだろうか、耐えられない程ではない。
「あ、あなたたちは間違っているわ。こんなことをしても私たち人間は屈しない。これからも強く生きていくわ」
「そうか」
「ええ。捉えられていたたくさんの人間を、私の……私の大切なお父さんを返してもらうわ!」
グッと鞘を握る手に力を込める。
睨みつけた先にあるガルの瞳はどこか悲しげだ。
突然、地下全体が震えたかと思うとドオォォンとすさまじい音がした。
「ぶっ、ぶほぉ! ごほっ、ごほっ! おい、こら! お前! ごほっ、か、加減しろ! ごほっ」
摩擦で削られた岩肌の粒子が舞い上がり、出来上がった立派な煙幕の中、咳き込む男の声とともに現れた巨大な影。
影は4本の触角をうじゃうじゃとせわしなく動かすと、舌足らずな声で叫んだ。
「ルナ、ルナ、ドルモン、ルナ、ガル、好き!」
ドルモン……?
そのとき、ルナの後頭部で何かが弾けるような音がした。
一瞬、目の前が眩しいほど白くなったのち、じわじわと漆黒の闇が支配してゆく。
ルナ――――――
あぁ、誰? 誰かが私を心配して呼んでる。ナイト? ガレスかな? もしかしてノアかしら? それとも、お父さん……?
ガルの胸の上でルナはどさりとうつ伏して倒れた。
長く白い尾がびたりと地面をひとつ叩いた。




