赤い糸なんて糞喰らえ!
「運命の赤い糸」シリーズ第二話目。男性視点です。
俺はこの自分の小指に巻きついている糸の先が、どこに繋がっているのか考えていた。赤い糸が自分の小指に巻かれたのは、実は今回で二度目だ。
あの頃の俺はまだ若くて、「運命の人」とか「永遠の愛」を何の疑問も抱かずに信じていた。だが、その運命の人であるはずの女性と出会った瞬間、現実はとても非情だと思い知った。
「何でもうすでに結婚してんだよぉ!?」
そのときの自分は、女性の薬指に忌々しく光る指輪を睨みつけながら、ただ心中で嘆くしかできなかった。
相手が最早、自分と結ばれることが叶わないと知った途端に、決して切れることのない赤い糸がほろほろと小指からほどけ落ち、そして地面に吸収されたかのように消え去った。
その後、人気のないトイレに立てこもり、俺は一人でぶつぶつボヤいた。
「おかしいだろ! 縁結びの神様がそういう運命に決めたはずなのに、どうして相手は別の奴と一緒になっていやがる!」
――それは、相手には赤い糸が見えていなかったからだ。それで彼女は、自分の判断で他の男性を選んでしまった。彼女にとっては、その男性が運命の人だったんだよ。
突然、頭の中に声が響いてきて、その今まで経験したことのない奇妙な感覚に、思わずびくっとしてしまった。
「……誰かいるのか?」
――いつもいるよ、君の中に。
「怖ぇよ!」
――ごめん、ごめん。でも神様はいつだって、全人類の幸せを願っているからね。
その声は老人のしわがれた声のようにも聞こえたし、かと思えばまるで母のような包容力のある声にも聞こえた。
――神様というのはね、一度の失敗では挫けたりしない。どんなに大きな物事が失敗しても、その瞬間すでに次の手段を考え始める。神様は一番の努力家で、いつだって人間の幸せのために先を見据えて行動するんだ。だから、君もあきらめずに信じて頑張ってほしいな。人間が神様を信じるように、神様も人間を信じているんだよ。
「……嘘臭せぇ。神って何なの? 無能なの? てか、あんた誰よ?」
頭の中の不思議な声は、静かに答えた。
――神の子です。たまに月下老人と呼ばれることもあるが……神様はただ闇雲に縁結びをしているわけではないよ。その人の先祖をたどって見ていってから、その先の子孫のことも見据えて、縁を結ぶんだ。だから必ず幸せになる……否、幸せに、なってください。頑張って。
そう言って、声の気配が去っていくのが感じられた。ふと手を見ると、そこには新たな赤い糸が結ばれていた。だがそれは何だかだらんとしていて、糸の先にはまだ何も繋がれていないような感じだった。
To be continued.
※同人誌『うさぎの短編集』にも収録されています。
詳細は活動報告を読んでください。




