A strange experience ‐奇妙な経験3‐
お別れは突然に ありがとう、忘れない
仕事から帰ったら、自分の部屋が戻っていた。慌ててトイレのドアを開けると、そこにはちゃんとトイレがあった。久しぶりに見る自分の家のトイレ。あんなにうんざりしていたはずなのに、そのあまりに唐突な別れに心境は複雑だった。
奇妙な半共同生活から約七ヶ月。嫌なこともあったが、良かったこともあった。社会人になってから慣れない環境の中、いろいろと不安定になっていたし、不規則な生活になっていたし、それでも同居人みたいな人がいたことで、しっかりしよう、頑張ろうと思えたのだ。
「さようならも何もなしかよ……」
そのつぶやきに答える人は当然おらず、余計に虚しさを強調するだけだった。
「残業がなかったらな。何か違っていたかな」
いつ部屋が戻ったのかわからないが、今朝まではちゃんとつながっていたのだ。気持ちがついていかない。
峯崎さんという人がいた、その痕跡が残ってはいないかと探したが、結局見つからなかった。
――過去と未来。本来は相容れないはずの二つのものが、いつまでも一緒にいられはしないと思うんだよね。原因はわからないけど、ずっとこのままじゃないよ、きっと。いつか戻る。全部、残らず。だけど、何が起こるか知れないから、お互い自分の部屋から外には出ないでおこう? これ以上他の時代の人に接触したら、もっと未来にどう影響するか、考えたら怖いし。
峯崎さん。あんた、知っていたんだろう。こういうこと、初めてじゃなかったんだろう。
何度か同じ目に合っていたんじゃなかろうか。だから、必要以上のことは話さなかったんじゃなかろうか。
名前も、歳も、趣味も、職業も、家族のことも、詳しいことは何も言わずに去ってしまった。峯崎も偽名かもしれない。
俺のことについても、あっちからは何もきいて来なかったし、名前を教えても最後まで呼んではくれなかった。
彼女は今、どこで生きているのだろう。もし、再会することがあるのなら、そのときは……
『A strange experience ‐奇妙な経験‐』シリーズを読んでくださり、ありがとうございました。
こんなのは、ありふれたお話だろうなと思いながらも、短いしすぐに完結だ! と勢いで書きました。
はい。一羽の兎は性懲りもなく、勢いと気まぐれで生きております。こんなんだから、いつまでも上達しないのでしょう……低クオリティ作品ですけども、お許しください。
私は基本的にハッピーエンド主義者なんですけども、気力が落ちるとこういう、ラストがうやむやな話になります。
ラストの補足としては、「名前を呼ばれることの重要性」ということですが、いつかもっと丁寧に書き直してあげられたらと思います。
お付き合いいただき、本当にありがとうございました。
※同人誌『三猿霊媒師』『うさぎの短編集』にも収録されています。
詳細は活動報告を読んでください。




