57 第2回、深夜の密談
皆が寝静まったあとにユニとベガが話します。
今、この場所で、この世界で何が起きているのかを。
今回は2頭による、この世界の解説回です。
深夜になり、エルフの村の納屋に腰を降ろす、2頭の希少種の馬。
ユニコーンとペガサス。
(ペガサスよ。お前が言っていた精霊魔法を使う少女と言うのは、スコットの妹君のフラックスか。)
(そうです、ユニコーンよ。まさか私が召喚されるとは思いませんでしたわ。)
(召喚を拒否すれば良かったのではないか。お前ならできただろう。)
(もちろん可能です。しかし贖えなかったのです。とても魅力的な、どうしても召喚に応じたくなる力があの娘にはあるのですよ。そして直接召喚に応じてみてハッキリ分かりましたわ。あの娘の召喚魔法は世界最高峰です。)
(そこまでなのか?)
(私だけなら疑問も残りますが、あの気難しいフェニックスすら召喚に応じてます。間違いないでしょう。)
(まだ幼いのに……末恐ろしい娘だな。)
(それよりもです!今この場はどうなってしまったのですか?世界は新しい時代を迎えるのですか?それとも破滅を迎えるのですか?)
(そなたの言っているのは、ここに集う者の事だな。)
(そうです!白氷竜様の事は聞いていました。いや、実際に会ったらチョー怖かったです。ユニコーンよ、あなたと私、どちらが美味しいか吟味していましたよ。)
(まじか。)
(まじです。)
(そのユキ様以外に、この森の守護者であられる深緑竜様に、南の火山の守護者であられる獄炎竜様までいるじゃないですか。それに最上位精霊のドライアド様にウンディーネ様まで……今、この世界で何が起ころうとしているのですか!)
(……それなんだがな、どうやら違うようなのだ。)
(どういう事ですか?)
(まったく逆なのだよ。この場所にいる者でいちばんの脅威は、間違いない、タイヨーと言う少年だ。)
(いましたね。先程も普通の馬と、馬車ごと空中に浮かべて落下していた、お馬鹿な少年ですね。)
(そうなのだ。お馬鹿なのだ。力加減も常識もまったく分からずに、この世界に来てしまった、ドラゴン様達をも遥かに凌ぐ力を持った創造神だったのだ。)
(は?何を言っているんですか?)
(じつはロキシー王女に聞いたのだ。ロキシー王女自身が世界樹の力を持つ生命神だからな。そのロキシー王女にタイヨー様は破壊神かと尋ねたんだ。)
(そうしたらなんと?)
(彼は太陽の意思を持つ者で、この世界そのものを作り出した張本人、創造神だ。そしてこの世界を作ったと言うことは……)
(……この世界を壊せる……と?)
(ああ……。以前起きた流星群、あれは元々がひとつの超巨大隕石で、それがこの世界に向かってきていると知った創造神が、遥か星の彼方まで行って破壊したそうなのだ。その破壊した破片があの流星群だと言うのが真相だそうだ。それでも相当に力を抑えたらしく、全力で隕石を攻撃したら、その余波でこの世界も一緒に消し飛ぶと言ってたそうだ。)
(……そんなバカな……)
(そう思いたいが、おそらく事実だろう。流星群をさらに細かく破壊し、この世界に結界を張って守ったのが、今ここにいるドラゴン様達と、王都を守ったロキシー王女で、その本人が言っているのだからな。)
(だとしたら本当に破壊神……)
(それは違う。事実この世界を守ってくれたのだからな。創造神は、この世界を観察しに降り立ったそうだ。自ら作った世界で、生命はどのように生き、生活しているのか、それを観察しに来ているというのだ。)
(それだけのために……)
(それだけと言うが、考えてもみろ。何もないところから、自ら作り出した世界だぞ。おそらく最初は孤独であっただろう。生まれ出た生命に興味を持つのは当然ではないか。)
(なるほど。では脅威では無いのですね。)
(それも違う。)
(どういう事ですの?)
(先程の馬車の件もそうだ。常識というものを全く知らないのだ。)
(やはりお馬鹿だと?)
(ただのお馬鹿ではない。世界を滅ぼす力を持ったお馬鹿なのだ。)
(なるほど……自覚のない破壊神ということですね。)
(そのとおり。そして、その脅威を未然に防ぐために、ドラゴン様と最上位精霊様が集ったという訳だ。)
(なるほど理解しました。何かを起こす……のではなく、何事も起こらないように守っているのですね。しかし、それならあなたが監視する必要もないでしょうに。)
(警戒対象が創造神だけならば……な。)
(確かに……あなたが見守るロキシー王女も生命神でしたね。)
(ああ……彼女も神の力を持ちながら、王女が故に常識知らずだ。先程もやらかしただろ。深緑の森全体が活性化したぞ。)
(凶暴化したワイバーンが襲ってきましたね。それに私を呼んだフラックス嬢の力も見過ごせません。あの力を悪意ある者に利用されたら世界に混沌が訪れるでしょう。)
(とにかく分かっていることは、ドラゴン様と最上位精霊様は、この世界の平穏を守るために集っているという事だ。)
(そうですね。ドラゴン様達は、私達に敵意は無いということですね?)
(そういう事だ。)
(……本当ですか?)
(敵意は無いが……怖い。)
(そうね……怖い。)
(私達は、力ある王女や王子、子供達を害意から守る事に尽力しよう。)
(そうしましょう。)
(この世界を守るためにも。)
(我が身を守るためにも。)




