56 宴会も終わって
夜も更けました。
宴会は終了し皆さんも解散します。
しかし解散しない人もいた訳で……
夜も更けてきました。
あんなに沢山あったワイバーンのお肉はすっかり無くなってしまいました。
そして冷却容器も空っぽ。
ライア様が精霊たちを集めます。
「宴会は終わりよ。あなた方も帰りなさい。」
フラックスちゃんが、
「みんな!今日は来てくれてありがとう!また遊ぼうね!」
と言うと、精霊たちは手を振り微笑み、姿を消していきました。
ただ1頭を残して。
ライア様が、
「あなたも早く帰りなさい。」
と言いますが、残った1頭、ペガサスは首を振りフラックスちゃんに寄り添います。
「え?ベガちゃんは私といたいの?」
フラックスちゃんの問いに、首を縦に振るペガサス。
「え?ベガ?名前まで付けちゃったの?」
ライア様が驚いてます。
そこにやってきたのは、ほろ酔いのユキ様。
「なに?あなたフラックスちゃんの側にいたいの?わかってるわよね?フラックスちゃんの側にいる面々の事は。それでも良いの?」
ペガサスは震えながらも首を縦に振ります。
「他の動物や馬に迷惑をかけたら食べちゃうわよ。ユニコーンとペガサス……どちらの方が美味しいでしょうか。」
微笑むユキ様に涙を流すペガサス。
「ダメー!ベガをイジメないで!」
フラックスちゃんがペガサスの前に立ちはだかります。
「ふふふ。フラックスちゃんに迷惑をかけなければ良いのよ。良い子にしていれば私が守護してあげるから。」
そう言って、ユキ様はフラックスちゃんの頭を撫でます。
「ところでフラックスちゃんはお馬さんには乗れるの?」
「うーん。乗ったことないかも。」
「じゃあ私と一緒にペガサスで夜空の散歩をしましょうか。」
「わーい!行く!」
ペガサスはビクビクしながらも、ユキ様とフラックスちゃんを乗せました。
「この子はね、フラックスちゃんの言葉が分かるの。だから普通のお馬さんより簡単よ。空をゆっくり飛んで……ってお願いしてみなさい。」
「うん!ベガ、お空をゆっくり飛んで。」
「ヒヒン」
ふたりを乗せたペガサスが、ゆっくりと空に浮かびました。
「すごい!」
フラックスちゃん大興奮。
「もっと高く飛んで!」
「ヒヒーン♪」
ペガサスも気を持ち直したようで、元気よく夜空を飛びました。
夜空を駆ける白いペガサスと、背には絶世の美女と天使。
とても美しい光景です。
「良いなぁ……」
タイヨー君とスコット君が羨ましそうに見ています。
「残念ですね。おふたりは乗馬は無理ですから。」
そう言って笑うアトミック王子。
「アトミックだってペガサスに乗れるかわからないぞ。」
悔しそうにスコット君が言うと、
「僕はユニが乗せてくれるから大丈夫だよ。」
と言って、ユニコーンの顔を撫でるアトミック王子。
「ぐぬぬ。」
スコット君、悔しさ倍増の結果でした。
「待った!スコット君!良いことを思いついたよ。」
タイヨー君が、絶対に良いとは思えない事を思いついたようです。
「うちの馬に馬車を引かせて僕とスコット君が乗るんだよ。それで僕の重力操作で空中に浮かべればペガサスのように飛べるよ!」
「面白そうですね!ではさっそく!」
もう嫌な予感しかしません。
馬車の御者台に座ったタイヨー君とスコット君。
「よし、行こう。」
馬車がユックリと動き出しました。
「よし、『重力操作』」
馬と馬車が浮かび始めました。
「よし!いいぞ!」
空を駆ける馬車。
地球で言うところのサンタクロースのようです。
しかしそのメルヘンも、長くは続きませんでした。
「あれ?あれ?どうしたの?」
馬が暴れ始めました。
当然です。
馬は地面を駆ける動物です。
ペガサスではありません。
そして臆病な動物です。
脚が地面についていないことに恐怖し、暴れ始めたのです。
「落ち着いて!落ち着いて!」
落ち着く訳がありません。
暴れる馬から馬車は外れ、馬も馬車もタイヨー君もスコット君も空中に投げ出されました。
「わー!」
叫ぶタイヨー君とスコット君。
『重力操作』
こうなる事を予想していたゲイル様が重力操作を発動。
馬もタイヨー君もスコット君も怪我をすることなく着地しました。
「やれやれ、ビックリした。ありがとう、ゲイル。」
「……馬にムチャな事をさせないでください。」
「……ごめんなさい。」
さすがにゲイル様に謝るタイヨー君とスコット君。
ゲイル様の後ろに隠れて涙を流す馬。
「ところで僕の馬車は……」
馬車はそのまま墜落していました。
当然、原型を留めることなく木っ端微塵です。
「あーー!僕の夢が詰まった馬車がぁ!」
タイヨー君は膝も手もつき項垂れました。
「自業自得です。馬車の使い方を間違っておりますので。」
でも簡単には諦めないタイヨー君。
「いや、まだまだだよ。一度の失敗でくじけちゃダメだ。またやるよ!僕は!お馬さん、また協力してね。」
馬にお願いすると、大きく左右に首を振りゲイルの後ろに隠れました。
「え?なんで?」
スパーン!
ライア様のハリセンが脳天を打ちました。
「なんで?じゃあありません!飛べない普通の馬を空に連れて行くんじゃありません!」
怒られて当然ですよね。
後ろでアトミック王子が、お腹を抱えて大笑いしていました。




