53 ジロさん自己紹介をする
やっと自己紹介のチャンスを得たジロさん。
緊張せずリラックスですよ。
ノルディカママとスコット君の模擬戦は、スコット君が動けなくなった事で終了となりました。
「スコット君、あなた大したものだわ。私とここまで戦えるのはノルディカくらいしかいないのよ。私にとっても久しぶりにいい訓練になったわ。ありがとう。」
そう言って手を差し出すノルディカママ。
その手を取るスコット君。
「僕の方こそありがとうございました。僕なんてまだまだと言うことが、とても良く分かりました。もう少しまともに戦えるようになりましたら、またお相手お願いします。」
「あら、困ったわ。スコット君からプロポーズされちゃった♪」
ノルディカママが、クネクネしながら何やら言ってます。
「ママ!ダメですからね!」
ノルディカさんがプンスカ。
「でもママ、油断禁物ですよ。スコット君と妹のフラックスちゃん、アトミック王子の3人によるパーティーには、ママでも負けるかもしれないですよ。」
「え?そうなの?」
「はい。アトミック王子の指揮力と防衛力、フラックスちゃんの精霊魔法が脅威ですね。」
「え?フラックスちゃんが精霊魔法を?でもそうか……フリッチさんの娘だもんね。」
「なにしろドライアド様やウンディーネ様も召喚しますからね。」
「……それはさすがに勝てそうにないわね。」
ノルディカ母娘が微笑みあってます。
エルフの美女ふたりが微笑みあっているだけで美しい絵画のようです。
村長さんは戦いが終わると、
「それじゃあ宴の準備をしようか!」
と言い、皆を動かしました。
今日はフリッチさんは客人扱いなのでエルフの人々から、
「座っていてくださいな。」
と口々に言われています。
「何だかじっとしているのも落ち着かないねぇ。」
普段は家事全般を担っているフリッチさん。
働かない事が落ち着かないようです。
「今日のあなたはお客様なんだから、じっとしていればいいの。」
そう言ってきたのはフリッチさんのご両親。
「それよりも、まだ旦那さんの事をちゃんと紹介してもらっていないんだけど。」
そうでした。
スコット君とフラックスちゃん、アトミック王子はちゃんと自己紹介しました。
スコット君は、その実力も披露しました。
アトミック王子はスーリーさんの兄について話しました。
しかしジロさんだけ挨拶のタイミングを逃したまま、普通の人族という紹介しかされていません。
「そうだだったわね。紹介するわ。どこに行ったのかしら?」
ジロさんを探すと、盛り上がっている人たちの中心にいます。
「これは今各地で話題の商品で、樽の中身を冷やして保管できる冷却容器です。それに注ぎ口を付けた飲み物専用でして、中にビールと果実水を入れて持ってきました。是非皆さんで飲んでください。」
「おー!ありがとう!フリッチさんの旦那さん。」
「ゴクゴクゴク………」
「ゴクゴクゴク!」
「プッハー!これは最高だ!」
「本当だ!最高に美味いぞ!」
「果実水も冷たくて美味しい!」
「凄いよ!フリッチさんの旦那さんの普通の人。」
「本当だよ!普通の人。」
「あの……ジロって言います。」
「そうだった!ジロさん最高!」
「凄いぞ!ジロさん!」
「えっ?ちょっと待って!」
ジロさんが酔ったエルフ達に抱えられました。
「そ~れ!わっしょい!わっしょい!」
ジロさん、胴上げされてます。
「わー!わかりました!わかりましたから降ろしてください!」
フリッチさんとご両親は、その様子を見て大笑い。
「ははは、なんとも楽しい人だね。」
「とても良い人柄だと言うのがよくわかりましたわ。」
「あの人は、だいたいいつもあんな感じなんですよ。」
人集りからジロさんがヨロヨロとやってきました。
「やれやれ、激しい歓迎で参ったよ。」
「ははは、大変だったね、ジロ殿。」
「あ、これはフリッチの……ご挨拶が遅くなって申し訳ありません。私は……その……勝手ながら娘さんのフリッチさんとけ、け、結婚しましたジロと言います。」
もう見ていられないほど、ジロさんはガチガチに緊張しています。
その様子を見て、フリッチさんのお父さんが微笑みながら話しました。
「いえいえ。そう緊張なさらずに。先程の胴上げを見ていて、あなたがとても良いお方だというのが分かりました。私はフリッチの父でスーリーと言います。まぁ元々は前国王の弟ですが、今はこのエルフの村に身を置いて余生を過ごしています。」
そう言うと、ジロさんに握手を求めました。
ジロさんはその手を取りました。
「私は行商人をしていますが、スコットの入学を期に今は王都に住んでいます。どうぞよろしくお願いします。」
「私はフリッチの母でフェノムです。お転婆な娘をもらってくれてありがとう。それにとても可愛くて強い孫も連れてきてくれてとても嬉しいわ。」
そう言って笑うフェノムさんは、フリッチさんとあまり歳が変わらないように見えます。
いや、顔立ちのせいかとても若く見えます。
「はじめまして、ジロです。何と言うか……とてもお若いのですね。」
「ホホホ、嫌ですわ。これでも主人より年上なんですよ。」
驚くジロさん。
「なるほど、どおりで。それなら確かに何年か後にスコットとノルディカさんが結婚してもおかしくないか……。」
「フフフ、そうですね。でもそれ程先でもないかもしれませんね。スコット君は本当に強い子ですから。」
と言ってスコット君の頭を撫でます。
「私もお兄ちゃんに負けないもん!」
手を振って主張するフラックスちゃん。
「私のお友達を呼ぶね。森の精霊ちゃんたちおいでーー!」
地面が光りました。
魔法陣のような模様が描かれています。
すると、離れたところで村長さんと話をしていたライア様が、突然フラックスちゃんの目の前に現れました。
「え?どうしたのです?」
ライア様の質問に、フラックスちゃんがニコニコ答えました。
「森の精霊ちゃんを呼んだのー!」
「え!?」




