49 エルフの森に出発
エルフの森に出発しました。
皆それぞれの思いを胸に。
タイヨー君の馬車も大丈夫でしょうか……
皆で揃ってエルフの森に出発です。
とは言っても『木の扉』で自宅の庭から深緑の森近くまで瞬間移動。
相変わらず便利な魔法『木の扉』
馬車ごと集団で移動が可能です。
元々はライア様のオリジナル魔法でしたが、今はロキシー王女とフラックスちゃんも使えます。
なぜ木の扉を使ったかと言うと、既に自宅に帰ってくるまでの間に、ロキシー王女が騎乗するユニコーンが街の人々に目撃され、大騒ぎになってしまったからです。
決してライア様が、タイヨー君お手製馬車での長距離移動が怖かったからではありません。
ライア様が率先して木の扉を使ったのは確かですが。
深緑の森近くの街道に移動した一行。
しかし深緑の森は木々が生い茂り、馬はともかく馬車で走るのは困難です。
馬車の御者台にいるタイヨー君が聞きます。
「ライア、ここからどうやって馬車で行くの?」
「それは任せてください。『木々よ道を開けなさい』」
ライア様がそう言うと、周囲の森の雰囲気が変わりました。
ザワザワと揺れると、木々はまるで歩くように移動します。
そして馬車が通れる程の道ができました。
「さすが精霊様です。」
ノルディカさんが感激しています。
ノルディカさん達エルフにとって、森の管理者であるライア様は崇拝する御方。
今でこそ普通に接していますが、ノルディカさんが幼い頃から尊敬している精霊様である事には変わりません。
しかし感激しているのはノルディカさんだけではありませんでした。
アトミック王子にジロさん家族、ユニまで驚いています。
「す、凄いな……さすがドライアド様だ。」
「本当です!こんな奇跡が起こせるなんて……」
「さすがライア先生です。」
「ライア先生ーすごーい!」
皆が感激しています。
「それ程でもありませんわ。」
ライア様はすましていますが、とても嬉しそう。
今出来たばかりの道を、ノルディカさんを先頭に進み始めました。
道は皆が通り過ぎた後ろから、ふたたび木々が生い茂り塞がっていきます。
精霊様の力は本当に絶大でした。
その道を行くタイヨー君の馬車も、以外としっかりと走ります。
「意外ですわ。」
「まったくですね。」
「すぐにバラバラになるかと思いましたわ。」
なんとも酷い言われようですが、じつはタイヨー君の重力魔法で馬車の重量は軽くなっています。
馬の負担も少なければ馬車にも負担がかかりません。
じつはこれは、タイヨー君が無意識でやってしまっているのです。
何故って?
正直なところタイヨー君自身も、馬車がバラバラになるんじゃないかと潜在意識の中で不安だったからです。
この一行における最大の不安要素は無意識のうちに回避され、無事にエルフの村が見えてきました。
「見えてきたぞ。」
先頭を行くノルディカさんが村の入り口の方に向かいました。
そして警備している若者に声をかけます。
「やあ、久しぶりだな。」
「おお、ノルディカ、久しぶり。話は村長から聞いているぞ。ちょっとここで待っていてくれ。今呼んでくるから。」
若いエルフは、村のなかに走っていきました。
「ここがエルフの村なんですね……」
初めて来たアトミック王子は周囲を見て感動していました。
木々の上にあるツリーハウスのような家々。
とてもメルヘンです。
「とても素晴らしいですね。」
「アトミック王子に喜んでもらえて、私も嬉しいですわ。」
ライア様が言いました。
「エルフは自然と共に生きる道を選んだ種族です。現状の自然をあまり壊すことなく、それでいて自分達が住みやすい環境を作り暮らしているのですよ。」
「自然と共存と言うことですね。しかし言葉にするのは容易いですが、自然の厳しさや魔獣の脅威など大変な事も多そうです。」
アトミック王子の感想に、ライア様は満足そうに頷きました。
「そうです。なので彼らも工夫し自らも鍛え生活しているのです。こういった文化もあるということを、王子も肌で感じてくれると嬉しいですわ。」
「はい!今回はしっかり勉強したいと思います。」
森の様子に感動していたのはジロさん家族も同じです。
「すごーい!木の上に家が建ってるよ!」
フラックスちゃんが目をキラキラさせて見上げています。
「本当だね!僕もこんな景色は初めて見たよ!」
スコット君も感激しています。
「私の家も木の上よ。」
フラッチさんのひとことに、ふたりのテンションはマックス。
「早く行きたーい!」
突っ走る寸前のフラックスちゃんを、フラッチさんが草のツルでぐるぐる巻きにしました。
「カマイタチちゃん!助けて!」
カマイタチが召喚されましたが、フラックスちゃんを見上げているだけ。
「そうよ。良い子ね、カマイタチちゃん。」
カマイタチを撫でるフラッチさん。
「そんなぁ~」
カマイタチは、ちゃんと状況を理解できるようです。
「まだちゃんと挨拶が済んでないでしょ!落ち着きなさいな、フラックス。」
お母さんに言われて落ち着いたフラックスちゃん。
「ごめんなさい。」
と誤って解放してもらっています。
その近くでジロさんが、身体をガチガチにして固まっています。
「初対面のフリッチのご両親……はじめまして。娘さんと結婚した……」
何やら、ぎこちなく呟いていました。




