46 タイヨー君の馬車
タイヨー君は馬車を作ります。
スコット君と力を合わせて。
このふたりが力を合わせると……
翌日、スコット君とタイヨー君は、作成した設計図をもとに、縮小版のモデルを作り始めました。
「ちなみに、どれくらいの大きさの馬車を想定してるの?」
スコット君の質問に、
「それはもちろんスコット君のところの馬車だよ。ジロさんから何度も借りたからね。あの大きさが一番慣れてるんだよね。」
と答えるタイヨー君。
確かにいきなり大きな馬車を作っても、扱いにくかったら意味がありません。
まずは実用的な物から作るつもりのようです。
「実際に旅に出るとしたらロキシーとの二人旅になるだろうからね。」
「え?そうなんですか?僕は絶対に紅炎様とユキ様がついて行くと思うんですけど。」
「え?なんで?」
「いや、今までもそうだったし、何となくそれは変わらないような気がして。」
「でもユキは先生だよ?」
「あーそれは僕達のお目付け役……と言うか、僕達が学校にいると、何か起こりそうで面白いから先生をやっているのかと。事実ユニコーンの乱入とかもあったし。」
そんな雑談を交わしながらも、手は動かすふたり。
そして模型は完成しました。
「どうです?ライド部長。」
タイヨー君は模型をみせました。
「おっ?出来たんだね。どれどれ……うん、良いんじゃないかな?最初にしては良く出来ていると思うよ。何か見本があったのかい?」
「しばらくスコット君のお父さんから馬車を借りてた事がありましてね。それを思い出しながら作ったんですよ。」
「なるほどね。そしたら実際の物を作ってみようか。」
早速タイヨー君は、いつものように木を伐採してきました。
もう誰も驚きません。
その木を目的の長さにカット。
板状にカット。
目的の形にカット。
ひたすら部品を作ります。
苦労したのは車輪部分。
真円にしなくてはなりません。
とはいえ、ライド部長に教えてもらいながら何とか車輪を作りました。
タイヨー君とスコット君が揃えば馬車作りも早い早い。
怪力のふたり。
タイヨー君に至っては重力操作で物を空中に浮かせる事も出来ます。
大きくて重たい馬車の組み立ても、空中に浮いた状態なら簡単。
その日のうちには、ほぼ完成しちゃいました。
「君たち凄いね。」
ライド部長は呆れるしかありません。
「今日はここまでにして、続きは明日やろう。」
そして翌日。
早々に馬車は完成しました。
「君たち馬車の製作だけで充分やっていけるよ。」
ライド部長は笑うしかありません。
「じゃあ飼育部にまたお願いしようか。」
そして馬車を引いていくふたり。
「君たちは馬車を作る職人だけでなく、馬車を引く馬の仕事までも奪う気かい?」
またもや笑うライド部長。
そうして笑いながら飼育部の厩舎までやってきました。
すると、何やらユニコーンの馬小屋の辺りに人集りが出来てます。
そちらに向かうタイヨー君達。
「こんにちは。皆さん集まってどうしたの?」
するとロキシー王女がタイヨー君に気が付きました。
「あ、タイヨー君。じつは今日、盗人が入ったんですよ。どうやらユニを盗もうとしたらしくて。」
「え?それでユニは大丈夫だったの?」
「ええ。ユニの雷撃魔法でアッサリとやられちゃったらしくて。でもここまで盗人が入ったのも問題で、今いろいろ調べてるところなんですよ。」
「そうなんだ。それは大変だったね。ところでユニにお願いがあるんだけど、この馬車ちょっと引いてみてくれない?」
ちっとも大変そうな感じのしないタイヨー君が、これまた遠慮なくお願いしてきました。
「え?ユニに馬車をですか?どうでしょう?ユニ、できる?」
ロキシー王女がユニに聞きますが、ユニは何だか嫌そうな顔をしています。
「そこを何とか頼むよ〜ユニ〜」
タイヨー君とスコット君から、何か黒い、何か恐怖の、何か逆らえない気配が漂ってきてます。
ユニは震えながらも了承してくれたようです。
「良かった良かった。ユニが喜んで引き受けてくれて。」
「喜んでるようには見えませんが……」
ロキシー王女の呟きに皆が頷きました。
そうこうしている間にユニに馬具が装着され、馬車を引く準備ができました。
御者台に乗るタイヨー君が元気に、
「さあ!行こう!ユニ!」
と言うと、ユニはポックリポックリ歩き始めました。
それを見ていた人たち。
「ユニコーンが馬車を引いてる……」
「高貴なユニコーンが貧素な馬車を引いてる……」
「見ているこっちが切なくなる……」
「せめて豪華な馬車なら似合いそうだけど……」
「引くのはボロ馬車……」
「やめて……やめさせてあげて……」
散々な言われよう。
いくら気にもしない、遠慮もしないタイヨー君でも、さすがにいたたまれなくなってきました。
「……そろそろ終わりにしようか。」
「そうですね。僕は何だか悪い事をしている気分になってきました。」
タイヨー君とスコット君は、そそくさとユニを解放しました。
「御苦労さま。ユニ。」
ロキシー王女がユニコーンを撫でると、とても嬉しそうにしています。
「じゃあお礼に走らせてあげるわね。」
そう言ってロキシー王女はユニコーンに跨がると、颯爽と走り出しました。
生き生きと走るユニコーン。
いつも以上にキラキラしています。
「あーユニコーンはこうでなくちゃね。」
皆はウンウン頷きながら、その様子を見ていました。
その後ろでタイヨー君とスコット君は、コソコソ馬車を撤収させるのでした。




