40 放課後の騒動
放課後は部活動。
技術部は牧場で馬車のテストをするそうです。
その牧場は今、大変なことに。
今日も無事に基礎科の授業が終わりました。
スコット君は、放課後に技術部へと行くつもりです。
「じゃあ僕は園芸部に行ってくるね。」
アトミック王子は足取りも軽く、園芸部の畑に走っていきました。
アトミック王子は土魔法の上達に貪欲です。
「頑張ってるなぁ。」
スコット君は他人事のように呟きながら技術部に向かいました。
「こんにちはー。」
「お、スコット君よく来たね。」
そう言う先輩は、例のキャンピングカーのような馬車を整備してました。
「あ、この馬車、完成したんですか?」
「そうなんだよ。そこで今日は飼育部と協力して、実際に走らせてみようかと思ってね。」
飼育部の馬に引いてもらうんですね。
でも……
「じつは、僕は飼育部の馬達に怖がられているようでして……」
「え?そんな事あるの?」
「はい……森で魔獣狩りを何度もやったせいか、殺気を感じ取るらしくて。」
「それはなんとも残念だね。でも自宅の馬は平気なのかい?」
「はぁ、自宅には僕よりも更に恐ろしい人達がいて、馬達は完全に平伏しちゃっているんです。僕なんか相手にしていないようです。」
「スコット君より恐ろしい人って、やっぱり凄い先生がいるから君は強いんだね。でもそれじゃあどうしようか?」
「はい。ちょっと僕も馬車に興味があるので自主勉強していますよ。」
「残念だけどわかったよ。じゃあちょっと行ってくるね。」
そう言って先輩は、ライド部長とふたりで馬車を押し始めました。
しかし全然動きません。
「……馬車を運ぶのは手伝いますね。」
「ごめんね〜スコット君。」
スコット君は新入生ながら怪力なので、ガンガン重たい馬車を引いていきます。
「凄いなぁ!スコット君がいれば馬は要らないじゃん!」
「ライド部長……それはアンマリです。」
そんなやり取りをしているうちに厩舎に着きました。
その厩舎……と言うか、牧場の方が何やら騒がしいです。
「何かあったんですかね。」
スコット君は騒ぎの方を見ました。
「よく分からないけど、とりあえず馬車は置いておいて見に行ってみよう。」
技術部員が揃って騒ぎの方に向かうと、何やら暴れ馬が1頭。
飼育部の馬達は怯えて隅に固まっています。
まるで誰かさんが訪れた時と同じです。
その怯えた馬達を、飼育部の部員達は何とか守っています。
「どうしたんですか!?何があったんですか!?」
ライド部長が飼育部顧問に尋ねます。
「魔獣が迷い込んだ!ユニコーンだ!」
見ると、暴れているのは白い馬のように見えますが、その馬体は大きく頭部に長い角が生えています。
ユニコーンはスコット君がその場に訪れると威嚇してきました。
「僕を威嚇するのかい?先生、コイツは倒して良いですか?」
そう言ってスコット君は氷の剣を出現させました。
「いや!馬達の見ている前でユニコーンを殺すのはマズイ!ユニコーンは馬達の上位の存在だ。それを害したら馬達は人間を信用しなくなる!」
「なるほど。」
スコット君は氷の剣を消すと、
「僕に任せてもらえませんか?傷付けることはしません!」
とユニコーンを睨みます。
「いや!生徒にそんな事はさせられない!」
先生はそう言いますが、
「先生、どうやらユニコーンは僕を敵と見定めたようです。」
と言ってスコット君はユニコーンと向かい合います。
その時、ユニコーンの角がバチバチ音を立てて光始めました。
「まずい!ユニコーンの雷撃魔法だ!」
先生が叫びます。
『結界』
スコット君が呟きました。
その瞬間、ユニコーンの角からスコット君に向けて雷撃が走りました。
「残念だったね、ユニコーン。雷撃は既にノルディカさんにヤラれて対策済みだよ。」
スコット君の結界は地面に接地してあり、電撃は全て地面に流れました。
「では次はこちらの番だね『威圧』」
スコット君は威圧を放ちました。
それもかなり強めの。
周囲の空気がガラリと変わりました。
スコット君から『恐怖』がユニコーンに向けて放たれます。
途端、ユニコーンはガクガク震え、その場にうずくまりました。
「あらあら、何事かと思って来てみればユニコーンとは珍しいわね。」
そこに現れたのは白氷竜のユキ先生。
「あ、ユキ先生。」
「スコット君、威圧を解いてあげてください。ユニコーンがあんなに震えていますよ。可哀想じゃないですか。」
ユキ先生は、まるで大した事ないといった感じでユニコーンに近づいていきます。
指示通りに威圧を解くと、ユニコーンは再びスコット君に敵意をみせました。
が、すぐにユキ先生に気がついたようです。
そして体を硬直させ、その場に直立不動になりました。
ユキ先生がユニコーンに近づいていきます。
「まぁまぁ、とても綺麗な馬体に立派な角ですこと。」
ユキ先生は、ユニコーンを撫でながら言います。
ユニコーンは硬直したままプルプル震えています。
「とても美味しそうですね。」
ユニコーンの耳元で話すユキ先生の呟きは、ユニコーンとスコット君にしか聞こえません。
ユニコーンは涙を流して絶望の表情です。
「まぁ大人しくしていれば何もしませんわ。ここの生徒や他の馬達に迷惑をかけてはいけませんよ。」
ユキ先生がそう言うと、ユニコーンは首を縦にブンブン振りました。
「あなたの気配も匂いも覚えましたから、逃げようなどと思わないでね。大丈夫。ここにいれば快適に過ごせるから。」
再び首を縦に振るユニコーン。
流れる涙は止まりませんでした。




