39 こんな日もあります
今日は学校がお休みです。
決して授業風景だと書くネタが無いとかそういう訳ではありません。
……おそらく。
今日は学校がお休みです。
スコット君は神さまの拠点で弓矢の練習です。
木に的を描いて、それに向かって矢を放つスコット君。
「もう少し肩の力を抜いたほうが良いな。」
そう言って指導してくれるのはノルディカさん。
彼女はその剣技が素晴らしく、どうしてもそちらの方が目立っていますが、彼女はエルフです。
剣を持つよりも先に、幼い頃から弓矢を扱って狩りをしていました。
じつはかなりの腕前なのです。
そんな彼女の指導を受けるスコット君。
背中にピッタリと張り付いて指導してくれるのは有難いのですが、どうにも照れてしまいます。
なにしろ結婚発言のあった美女ですから。
肩の力を抜くように言われても、どうしても緊張してしまいます。
「若いなぁ〜スコットは。」
同じ歳のアトミック王子がニヤニヤしながら言ってくるので、余計に意識してしまいます。
「アトミック王子、こちらも集中しなくては駄目ですぞ。」
ゲイル様に注意されていました。
冷やかしが終わったところで、スコット君は一度深呼吸をして集中しました。
「的に集中しながらも肩の力を抜く……」
「ヒュン!」
矢は的の真ん中を射抜きました。
「スコット君は弓矢の素質もあるんだな。さすが未来の旦那様だ。」
ノルディカさんが笑いながら言いますが、どうにも照れてしまうスコット君。
「若いなぁ〜スコット君は。」
今度言い出したのはタイヨー君です。
「スコット君の事はノルディカさんに任せておけばいいんですから。さぁ行きますよ。」
そう言って、タイヨー君はロキシー王女に襟首を掴まれて引きずられていきました。
タイヨー君とロキシー王女は、これからドライアドのライア様に、薬草について詳しく教えてもらうそうです。
3人で森の中に入っていきました。
2人目の冷やかしが去ったところでノルディカさんが、
「的を射抜くことは中々上手くなったぞ。今度は実際に動く的を狙ってみよう。さぁ私達も森に入るぞ。」
と言ってスコット君を森に連れて行きました。
「さて、静かになったところで、こちらも集中して練習いたしますか。」
ゲイル様はそう言うと、アトミック王子に向かって『風の刃』を飛ばしてきました。
すかさず土の壁を出現させるアトミック王子。
「良いですね。中々の速さです。では連続していきますよ。」
そう言って今度は連続して3回風の刃を飛ばしてきました。
「ぐっ!」
アトミック王子は2つ目までは完全に風の刃を防ぎましたが、3つ目は土の壁が脆く崩れてしまいました。
「2つ目までは完璧ですね。3つ目も発動スピードは問題ないのですが魔力の練度が甘かったようですな。今日は練度を高める訓練をしましょう。」
「はい!ゲイル先生!」
森の中で獲物を探すスコット君。
気配を探ると鴨がいました。
ノルディカさんが静かに合図をします。
スコット君は頷くと弓を構え狙いを定めます。
しかし鴨は歩き出してしまいました。
慌てて狙い直し矢を射ました……が、鴨のやや後ろをかすめただけでした。
驚いた鴨は慌てて逃げていきました。
「う〜ん……動く的はとても難しいですね。」
「そうだな。動物の場合は気配を消して近づき、相手が動かないうちに仕留めるのが基本だからな。動く相手となると、その動きを先読みしなくてはならない。これは練習あるのみだがな。」
そう言ってノルディカさんは笑いました。
「おふたりとも見つけましたか?」
タイヨー君とロキシー王女はライア様に、薬草、毒草、痺れ草の3種類を採取するよう指示を受けました。
ロキシー王女が、採取した素材をライア様にみせます。
「如何ですか?」
「ロキシー様、一応正解としておきましょう。毒草と痺れ草は問題ありませんが、薬草はもう少し鮮やかな緑色をした物の方が高品質です。」
「そうなんですね。ライア様の説明はとても分かりやすいですわ。」
「フフフ。ありがとうございます。こういう裏技もありますよ。」
ライア様はそう言うと、毒草に魔力を注ぎました。
すると、みるみるうちに鮮やかな緑色に変わりました。
「これは……?」
「簡単なことです。毒草に回復の魔力を注いだだけです。ロキシー様も、この薬草にやってみてください。」
「はい!」
そう言ってロキシー王女が回復の魔力を注ぐと、ややくすんだ色をした薬草が金色に輝きました。
「ロキシー様、力を与えすぎですわ。もはやこれは世界樹と同等の効果があります。完全回復の薬草ですよ。これはさすがにどこにも出せません。」
そう言って困ったように笑いました。
「ライア、僕も採取してきたよ。」
タイヨー君が戻ってきました。
「お疲れ様でした。では拝見いたしましょうか。」
微笑むライア様の眉間に徐々にシワが浮かんできました。
「ど、どうしたの?ライア?」
「タイヨー様。三つとも毒草ですよ。」
「え?そんなはずは……」
見ると全て同じ色をしています。
「タイヨー様、これを持ってください。さて拠点に戻りましょう。」
そう言ってライア様は薬草をタイヨー君に渡します。
よく分からないままタイヨー君は、薬草を掴んで歩き始めました。
拠点に着くと、アトミック王子がゼーゼー言ってます。
「ここからは練習あるのみですな。」
「ゼーゼー……わかりました、ゲイル先生。」
ちょうどスコット君も戻ってきました。
「次回は紐に的をぶら下げて、動く的を射抜く練習をしよう。」
「わかりました。ノルディカさん、」
その様子を見てタイヨー君は、
「今日はみんな課題を見つけた日のようだね。」
などと言ってます。
ライア様は、そんなタイヨー君を見て、ため息をつきました。
「タイヨー様、手にした薬草を見てくださいまし。」
「え?」
薬草を見ると変色しています。
それはどこから見ても毒草でした。
「な、な、何事!?」
「タイヨー様の魔力を吸収して毒草に変化したのですよ。タイヨー様も課題が見つかりましたね。」
「そんなぁ~」
どうやら上手くいかない日もあるようですね。




