35 強引なお誘い
入部する部活が決まったアトミック王子とスコット君。
しかし教室に戻る途中で見つかってしまいました。
しつこいお二人の部長さん達に。
「昼間のゴタゴタの時に、剣術部と魔法研究部に入る……なんて軽々しく言わなくて良かったね。」
「ホントだよね。まさか掛け持ちできないなんて。」
弓道部を出たふたりは教室に戻って行くところでした。
そこにやってきた2人の上級生。
まさに今、噂していた剣術部の部長ロクサと魔法研究部の部長ロームです。
「スコット君、探したぞ。是非我が剣術部に来てくれ。」
「いや!我が魔法研究部こそ相応しい。」
2人ともグイグイきます。
「すみません。僕はもう他の部に入部を決めてきてしまったのでお断りします。」
ハッキリ伝えた方が良いですよね。
「なるほど。ではまずは退部届が先だな。」
話になりませんでした。
「いやいや、困りますって。どちらも自分の希望で入部したのですから。」
「どちらも……という事は掛け持ちしたのか?」
「そうです。どちらもやりたかったので。」
「なんと。剣術は剣のみを極めるのが剣士への道ではないか!」
「魔法もだ。魔道を極めてこそ真の魔術師への道!」
「えーと、僕は剣士でも魔術師でもなく行商人ですよ。剣と魔法は護身のために遊びの中で覚えただけです。」
スコット君はサラリと言います。
間違ってはいませんが、遊び相手はドラゴン様や精霊様ですよね。
「王子の護衛が行商人のはずが無い。それは身の上を隠す為の偽りの姿だろう。」
なるほど。
確かに王子の護衛が行商人と言うのがおかしいと言えばその通りです。
「えーっと、アトミックも僕と幼馴染で遊び仲間なんですよ。なのでアトミックも同様に遊びの中で強くなっていますよ。」
「いやいや、僕は守備特化だからスコットには敵わないって。大体剣術なんて、ろくに練習していないんだから。でもね、スコットの家が行商人なのは確かだよ。まぁいろいろあって仲良くなってね。スコットの強さも、僕と仲が良い事も知っている父が、護衛を頼んだんだよ。それに、あまり部活に熱心になって、僕の護衛が疎かになったら困るじゃ無いか。」
と言って笑うアトミック王子。
「という訳で入部は出来ません。ごめんなさい。」
「ぐぬぬ……では我々と勝負しようじゃないか。我々が勝てば我々から学べる事もあるだろ?逆に我々が負ければ潔く手を引こう。」
何故すぐに戦いたがるのだろう……とスコット君は思いつつも、それも一理あるし、それで納得してくれるならまぁ良いか……とも思いました。
アトミック王子も同じ事を思ったらしく、
「それで納得してもらうしかなさそうだね。」
と言います。
するとロクサ部長とローム部長はニンマリとして、
「じゃあ早速訓練場に移動しようか。」
と、ふたりを案内しました。
さて、闘技場に着くなり数十人の剣術部員に囲まれるスコット君。
アトミック王子は観覧席で見ています。
「えーと、どうすれば良いですか?」
「決まった事よ!全員に勝てば君の勝利だ!始めるぞ!」
ニヤついた顔でロクサ部長が言い放ちました。
「野郎ども!かかれ!」
「ヒャーッハ!」
まるで盗賊です。
「剣士への道とはいったい……まぁ良いか、『威圧』」
途端に剣術部員は恐怖で動けなくなりました。
動けなくなった部員達の木剣をスコット君は木剣で次々と叩き落とし回収。
『威圧』を解き、
「これで終了です。」
と告げました。
「まだまだ!」
そう叫ぶのはローム部長。
「全員魔法攻撃だ!」
「ウインドカッター!」
「ファイアーランス!」
「ロックバレット!」
魔術研究部の部員達が、一斉にスコット君に攻撃魔法を仕掛けました。
「かっこいい魔法名だけど……威力が名前負けです……『結界』」
この世界の魔法の名前には、深い意味はありません。
自分がイメージしやすい魔法名を付けて具現化すればいいのです。
なので、ショボい魔法でも、本人がそれで良ければいいのです。
完全に名前負けな魔法研究部員達の魔法は、スコット君の前面を広く覆った氷の壁に、傷ひとつ付けることが出来ませんでした。
「では勝負はついたので、僕達はこれで失礼します。」
そう言ってアトミック王子を呼んで、帰り始めるスコット君。
「待て!まだ勝負は終わってないぞ!」
そう言ってロクサ部長は、自前の剣で氷の壁を壊そうとしましたが、やはり傷ひとつ付きません。
「なんだ!?この壁はどうなってる!?」
氷の壁でスコット君に近づく事もできません。
「ファイアーランス!……ダメだ!上級の火魔法でも溶けない!」
(え?アレが上級?)
スコット君は心に思っても言葉にしません。
紳士なのです。
「アレで上級の火魔法だって。笑っちゃうね、ね〜スコット。」
ケラケラ笑うアトミック王子。
王子は紳士ではなかったみたいです。
「ところで、あの氷の壁はどれくらいで消えるの?」
「んー30分位で消えるよ。あまり強固にしてないから。」
「じゃあ消える前に帰ろう。」
「そうだね。そうしよう。」
そそくさと帰るスコット君とアトミック王子。
「待て!待ってくれ!待ってくださーい!」
最後は半泣きの部員達でした。




