28 怒るロキシー王女
突然のノルディカさんの結婚宣言。
驚く一同、怒るロキシー王女。
普段優しい人が怒るとそれはそれは……
「はぁ?結婚??」
スコット君、意味がわかりません。
ノルディカさんも、そのスコット君の反応がわかりません。
「何かおかしな事を言ったかな?」
すぱーーん!!
どこから出したのか、ロキシー王女がノルディカさんの頭にハリセンで一撃しました。
「ななな、何を言ってるんですか!?ノルディカさん!?」
一同、同じように激しく頷いています。
「何が『何かおかしな事を言ったかな?』ですか!?おかしいこと以外言ってませんよ!あなたは!」
ロキシー王女がアタフタして、おかしな事になってます。
「ロキシー王女、痛いじゃないですか。そもそも女が強い男に惹かれる……何もおかしな事ではないでしょう。そう言うロキシー王女も世界一強いタイヨー君と結婚したではないですか?」
サラッと言うノルディカさんに、
「そ、それは……」
と口籠るロキシー王女。
「そ、そうです、スコット君は行商人の長男ですよ。王国副騎士団長の結婚相手としてはいかがかと。」
思い出したかのようにロキシー王女は言いましたが、
「それを王女が言いますか。行商人を名乗っている得体の知れないタイヨー君と結婚しておいて。」
と、ノルディカさんに反撃されて、グゥの音も出ません。
堪らずスコット君が発言。
「あ、あの、僕はまだ子供ですよ。」
ごもっともです。
まずそこが問題でしょう。
ノルディカさんは若くてとても美人です。
だからといってスコット君は、まだ基礎科に入学したばかりの恋も知らない子供です。
いくら何でも……
ですがノルディカさんは笑顔で言います。
「私はエルフだよ。人族よりもかなり長寿でね、スコット君が大人になった頃でも、おそらく見た目は今と変わらないはずだよ。」
「え?そうなんですか?」
驚くスコット君。
「何なら君の方が私より先に老けてしまうかもしれないぞ。」
そう言って笑うノルディカさん。
「そうは言っても僕はまだ子供です。でもノルディカさんが目標なのは確かです。いつかきっと追いついてみせます。結婚については、その時になってみないと分かりませんが……」
「ははは、それでいいよ。私を目標にしてくれるとは光栄だよ。いつか私を乗り越えてくれると信じているぞ。」
「はい!頑張ります!」
握手する2人。
最強と挑戦者。
まさに青春です。
皆が温かい目で2人を見てます。
ロキシー王女だけは何となく納得出来ないといった感じですが……
ともかく勝負がつきました。
そこに土魔法の練習を終えたアトミック王子がやってきました。
「婚約おめでとう!スコット。」
ニヤニヤしながら言うアトミック王子。
「婚約とは違うでしょ?」
「でもノルディカ副騎士団長が婚約者だと言えば、もう誰からも交際の申し込みを受けなくて済むぞ?」
「あ、それは良いかも。」
2人は笑いました。
「結婚なんてダメーー!」
そう言ってスコット君にしがみつくのはフラックスちゃん。
「スコットお兄ちゃんは、私と結婚するんだから!」
困った顔をして笑うスコット君。
「「フラックスちゃん可愛すぎる。」」
少女の可愛い姿を見てホンワカする一同。
そこでアトミック王子が、
「あれれ?フラックスちゃんは僕のお嫁さんになってくれると思ったのになぁ。」
などと言い出しました。
「スコットお兄ちゃんとアトミックお兄ちゃん……どちらを選べば……」
途端に顔を真っ赤にしてモジモジするフラックスちゃん。
可愛すぎるフラックスちゃんに皆メロメロです。
ただひとりを除いて。
「なにー!フラックスをお嫁さんにだって!?フラックスと結婚するのは僕より強い男の子じゃなきゃダメだ!アトミック!勝負だ!」
プンスカのスコット君。
「望むところだ!スコットを倒してフラックスちゃんを手に入れてみせる!」
悪ノリするアトミック王子。
すぱーーん!!すぱぱーん!!
王女、本日二度目のハリセンです。
「あなた達もバカでしたか!」
「いたた……」
頭を押さえるアトミック王子とスコット君の前に、仁王立ちのロキシー王女。
「スコット君!あなたは先程ノルディカさんとの戦いで大怪我をしたのですよ!忘れましたか!?回復魔法で治ったら忘れちゃいましたか!?」
「ごめんなさい……」
あまりの迫力に、震えながら謝るスコット君。
「アトミック!あなたも怪我人相手に何がスコット君を倒す!……ですか!しかもあなたは王子でしょうが!軽々しく結婚なんて言っては駄目です!」
「ごめんなさい……」
いつも優しいロキシー王女の怒った姿に、こちらも震えながら謝るアトミック王子。
「まぁまぁロキシー落ち着いて。」
タイヨー君は困ったように笑いながらロキシー王女をなだめます。
「ハリセン片手にそんなに怒ったらライアみたくなっちゃうよ。」
「……タイヨー様。何かおっしゃいましたか?」
そこにはハリセンを片手に持つライア様。
「ち!ちがうよ!そんなつもりじゃないんだよ!」
「だったらどんなつもりですかぁーー!」
すぱーーん!!
乾いた小気味よい音が、夕焼け空の深緑の森に響き渡りました。




