26 ドラゴン様の領域
ユキ様が禍々しい巨大な剣を出現させました。
その剣をスコット君に向けて言います。
覚悟してください……と。
ロキシー王女とタイヨー君、ノルディカさん、紅炎様が『木の扉』でサソリ退治に向かった後。
ユキ様が巨大でとても禍々しい氷の両手剣を、笑いながら片手でブンブン振り回していました。
「スコット君。それでは行きますよ。覚悟してください。」
そう言って両手剣をスコット君に振り下ろしました。
焦ったスコット君、たまらず氷の剣を出現させユキ様の剣を受け止めました。
しかし、一度攻撃を受けただけで、スコット君の氷の剣は簡単に折れてしまいました。
「とんでもない破壊力じゃないですか!」
「そんな弱い剣では私の攻撃は止められませんわよ。」
「ちょっと!ちょっと!待ってください!」
慌てるスコット君。
ユキ様は、
「そんな事を言っても敵は待ってはくれませんよ。でもまぁこの剣の破壊力はドラゴン級ですからね。少し考える時間を与えましょう。」
そう言うと、ユキ様はまるで切れ味を試すように、森の木を伐採し始めました。
いとも簡単に木を切り倒す、強烈な破壊力の剣とユキ様のパワー。
「とにかくいろいろ試してみるしかない。」
そう思い、スコット君は真っ赤に燃える炎の剣を出現させました。
「なるほど。氷の剣には炎の剣ですか。では早速打ち合ってみましょう。」
ユキ先生はそう言うと、大剣を振ってきました。
氷の剣と炎の剣がぶつかるも、ユキ先生の氷魔法は最強レベル。
炎さえ凍らせてしまいました。
「うぁーー!」
一目散に逃げるスコット君。
「ホーッホッホッホ。スコット君、まだまだですね。」
と、高笑いのユキ先生。
「魔法だけで作った剣じゃあ全く敵わないよ。」
スコット君、考えます。
「ユキ先生、先程切り倒した木をもらいますね。」
そう言うと、その木の中から程よい太さの木の枝を選び、適度な長さに切りました。
その枝を、う〜ん……と唸りながら振り回すスコット君。
その様子をおかしそうに眺めながら、ユキ先生が話します。
「スコット君。ダイヤと言う鉱石を知ってますか?」
「はい。とても高価な宝石ですね。そしてとても硬いとか。」
行商人の父を持つスコット君は、見たことはないけど話は聞いたことがあります。
「よく知ってますね。そのとても硬いダイヤですが、炭と元素……まぁ大元の素材はよく似た物なんですよ。高温高圧を加える事で性質が変わるとか変わらないとか。」
詳しくは知りませんがね〜と笑うユキ先生。
スコット君は考えました。
ダイヤにはならなくても、木の枝を硬く変化できないか。
そこで、手にした木の枝を地面に置いて火魔法をかけました。
真っ赤な炎で燃える木の枝。
違う……もっと高温で……グッと押し潰す感じで……
真っ赤な炎は、やがて真っ黒な炎に変わりました。
圧力を受けた木の枝は、次第に木刀の形になっていきます。
ユキ様の表情から笑みが消えました。
黒い炎が収まると、そこには真っ黒く光る木刀がありました。
スコット君は黒い木刀を掴むと、ユキ先生に向けて構えました。
構えた木刀は黒い炎を纏います。
「来なさい。スコット君。」
ユキ先生が真剣な顔で言います。
「はい!行きます!」
スコット君は素早く接近し黒剣を振ります。
そしてユキ先生の氷の剣と撃ち合います。
氷と炎がぶつかり合い、強烈な光が飛び散ります。
しかしスコット君の剣が折れることはありません。
何度か撃ち合った後、ユキ先生は距離を取りました。
そして優しく微笑みます。
「スコット君、よくやりました。私の氷の剣と打ち合うことが出来るとは、大したものですわ。」
「ありがとうございます!炎の剣を習得した気がします。」
するとスコット君はユキ先生に頭をポカリと叩かれました。
「まだまだですわよ。紅炎様の炎の剣を見ましたか?白に輝いていましたね。アレは黒い炎の剣を遥かに上回る高温を発しています。まだまだ精進しなくてはいけませんよ。」
そうでした。
まだこれが最高地点ではないのです。
「まだ目標は先にあるのですね。頑張ります!」
「ちなみに私も、氷の剣の更にその上の剣があるのですよ。」
紅炎様に白い炎の剣があるように、ユキ先生にも更に強力な剣があるのでしょう。
「是非見たいです!」
スコット君は目をキラキラしながらお願いしましたが、
「それはスコット君の攻撃に、氷の剣では対抗できなくなった時に見せてあげますわ。」
と言って、ユキ先生は笑いました。
そうです。
この世界の最強のドラゴン様。
その技に簡単に手が届く訳がありません。
スコット君は気持ちが高ぶりました。
「いつか先生の領域に辿り着いてみせます!」
スコット君が決心したところに、サソリを倒し終えたノルディカさん達が帰ってきました。
神さまの拠点に帰ってきた紅炎様は、スコット君の手に握られた黒い木刀を見ると、大きな声で笑いました。
「ワッハッハ!やりましたな、スコット君。その木刀を手にする迄に至りましたか。これはノルディカ殿も、うかうかしておられませんぞ。」
それを聞いたノルディカさんの目が魔獣の眼光のように光りました。
「なるほど。では早速勝負と行こうか、スコット君。」




