25 目覚めるノルディカ
サソリとのリベンジマッチに燃えるノルディカ。
アドバイスをもらい戦いに挑みます。
あの日の屈辱をぶつけろ!ノルディカ!
深緑の森からロキシー王女の木の扉で、東部の街の更に東にある砂漠に、一行は瞬間移動しました。
以前この場所で、ロキシー王女とノルディカさんは巨大なサソリの魔獣と対峙したのです。
その時を思い出したのか、ノルディカさんの表情がとても険しくなりました。
紅炎様が砂漠を見渡しながら、
「私が魔獣をおびき寄せます。姿を現したらタイヨー様は、重力魔法でサソリをその場に押し留めていてください。」
「うん、わかったよ。」
と言うタイヨー君の返事を聞くと、紅炎様は威圧を弱く広範囲にかけました。
間もなくして叫び声とともに巨大なサソリの魔獣が現れました。
サソリはこちらを見ると、獲物を見つけたとばかりに牙をガチガチと鳴らし、威嚇しながら近付いてきました。
でも残念でした。
「はい。『重力魔法』。」
タイヨー君がそう呟くと、サソリは上から押しつぶされたかのように、その場に平伏しました。
驚くノルディカさんに紅炎様は、
「まずは敵をよく観察しよう。前回は夜だったので、よく見えなかったではないかな?。」
と言いました。
ノルディカさんはサソリを注意深く見ます。
全身を硬い甲殻で覆われており、剣などは通用しそうに思えません。
しかし……
「ん?頭の上にあるのは……目か?」
「目のようですな。」
「あの目を突いてそこから風魔法の『雷撃』を放てば……」
「何か思いついたようですな。早速試してみましょうか。」
「了解しました。タイヨー君、サソリの拘束を解いてくれ。」
「わかりました。」
そう言うと、タイヨー君は重力魔法を解きました。
暴れ出すサソリの魔獣。
風の如くサソリに接近するノルディカさん。
迫りくるサソリの爪をかわすその姿は、まさに風そのもの。
繰り出された爪の上を駆け上がり、サソリの頭の上に到達すると、渾身の突きをサソリの目らしき場所に繰り出しました。
「ヤーー!死ね!『雷撃』!」
物凄い発光の後に立ち登る黒い煙。
漂う焦げる匂い。
サソリは一瞬その身体を痙攣させると、力無く地面に倒れました。
「は……はは……。なんと……解ってしまえば他愛のないこと。」
倒したサソリの頭上で力無く上空を見上げ、笑うノルディカさん。
いつの間にか隣に立つ紅炎様。
「倒し方さえ理解してしまえばノルディカ殿の敵ではありませんでしたな。」
「私は慢心していたのかもしれない。相手をよく観察して作戦を立て挑む……こんな基本的な事を忘れていたようだ。紅炎殿、ありがとう。私は立ち直ることができた。」
「私も助力できて嬉しいですぞ。」
そう言って2人は握手を交わしました。
その様子を離れていた所から見ていたタイヨー君とロキシー王女。
「ノルディカさんはさすがだね。攻略方法さえ解ってしまえば一瞬で倒しちゃうね。」
「王国最強の騎士の名は伊達じゃないですわ。そして今回のリベンジを経て更に強くなりましたね。」
「ところでロキシーは大丈夫だった?以前襲われた時の恐怖を乗り越えたいと言っていたけど?」
「あの隕石の時に比べれば、もう恐れるものは何もない気がしますわ。それに今の私ならサソリ相手なら空を飛んで逃げれば良いだけですからね。」
そう言って翼を出現させ、大きく広げるロキシー王女。
「ははは……まぁそうだよね。」
タイヨー君、笑うしかありません。
「ところで倒したサソリはどうするんだろう?」
疑問に思ったタイヨー君は紅炎様に聞きました。
「ねぇ、紅炎。このサソリはどうするの?」
何しろ巨大なサソリです。馬車があっても大き過ぎて運べません。
「そうですな。私が東部の森の村まで運びましょうか。サソリの甲殻は素材としては良品です。売ればそれなりの金額になるでしょう。」
「それが良いね。きっとラング村長も喜んでくれるよ。」
話が纏まり、サソリは獄炎竜の姿になった紅炎様が運ぶことにしました。
タイヨー君達は紅炎様の背中に乗ります。
紅炎様はサソリを掴むと、空高く舞い上がりました。
森の村では村人達が農作業を行っています。
すると突然大きな影が日の光を遮りました。
疑問に思った村人達は空を見上げて恐怖しました。
「あの巨大な影は……ドラゴン!?」
「ドラゴンが襲ってきた!!」
「逃げろ!!」
村人達は大慌て。
ドラゴンは何やら大きな魔獣を掴んでいました。
それを空き地に卸すと、ドラゴンの背中からロキシー王女が現れました。
「みなさーーん!私です!ロキシーです!」
大きな声で叫ぶロキシー王女を確認して、皆は安堵しました。
するとドラゴンは紅炎様に変化、残されたのは巨大なサソリの魔獣。
そこに駆け付けたのはラング村長。
「ドラゴンが飛来したと聞いたので来てみれば、ロキシー王女とタイヨー君でしたか。そして紅炎様にノルディカ副騎士団長様までようこそいらっしゃいました。」
そう言って見上げるのは巨大なサソリの魔獣。
「ええっと……この魔獣は?」
サソリとロキシー王女を交互に見ながらラング村長は聞きました。
「先程、東の砂漠で倒してきたところです。倒すことが目的だったので、このサソリは素材としてお譲りしようかと思いまして。」
「それはありがとうございます。これだけの素材となれば、かなりの値段が付くと思います。早速街の商業組合に連絡しますね。今日はゆっくりされていきますか?」
「申し訳ありません。深緑の森に人を待てせておりますので帰らなくてはなりませんの。」
「それは残念です。またゆっくり来てくださいね。」
「ロキシー王女様!また来てくださいね!」
「聖女様!また遊びに来てください!」
「聖女様!またね!」
「聖女様ではありませんがまた来ますね。」
そう言ってロキシー王女は木の扉を出現させ、神さまの拠点に帰っていきました。




