24 ノルディカのリベンジ
努力し実力を高めるアトミック王子。
その様子に触発されるノルディカさん。
そしてついでに触発されるロキシー王女。
「次の段階に行きましょう。」
ゲイル様はそう言うと、今度は耕した土に小さな土の壁を、手を使って作りました。
執事服の紳士が土遊びをしているシュールな光景です。
「この小さな土の壁は私が魔力を込めて作りました。壊してみてください。」
そう言われたアトミック王子は、叩いたり蹴ったり水魔法で攻撃したりいろいろ試してみましたが、とても硬いレンガのようで壊すことが出来ませんでした。
「ゲイル様、無理でした。」
力なくアトミック王子が応えると、
「深緑竜である私の魔力で作った、小さくとも強力な壁です。壊すのは難しいでしょう。」
と、ゲイル様は微笑みながら言いました。
そして、
「今私がやったように、まずは手を使って硬い小さな土の壁を作ってみてください。」
と、指示しました。
「わかりました!」
アトミック王子はそう言うと、一生懸命に小さな土の壁を作りました。
そして何度か作った後にゲイル様に合格点をもらいました。
「ではここからが本番です。今作った土の壁を、手を使わずイメージで出現させるのです。水分を含ませ魔力を込めた硬い土の壁をイメージし願うのです。」
アトミック王子は自らが作った畑の土を凝視しました。
そのままでは水分が少なくパサついた土です。
その土が固まるように水魔法で水分を含ませながら土を隆起させて、より硬くなるようにギュッと押し固めるイメージで土を固めました。
そうして不格好ながらも1メートル程の高さの土の壁を作りました。
「ゲイル様、出来ました。」
荒い息を整えながらアトミック王子は言いました。
ゲイル様は土の壁の端を摘み、力を込めて少し砕きました。
そしてアトミック王子をみると、満足そうに言いました。
「素晴らしい。よくもこの短時間に土の壁を魔法で作りました。お見事です。ここからはひたすら練習です。より強く、より大きく、より早く、そして綺麗に。一度土の壁が生成できれば、後はそのイメージをより精密にしていくだけです。この場所では魔力が枯渇する事はありません。存分に練習してください。そして土魔法は、土をよく知れば知るほど上達します。日頃から土を親しむと良いでしょう。」
アトミック王子は、
「ありがとうございます!」
と、満面の笑みで返事をしました。
(もっと練習してちゃんと土魔法を習得するんだ。そうすれば皆を、大事な人達を守る事が出来る)
思いを新たにアトミック王子は夢中で練習しました。
アトミック王子の様子を見ていたノルディカさん。
王子のすざましい成長ぶりにジッとしていられません。
「ゲイル殿。じつは相談したい事がありまして……」
珍しいノルディカさんの相談事にゲイル様は少し驚きました。
「どうかされましたかな?ノルディカ殿。」
「私は以前対峙したサソリ型の大型魔獣に手も足も出ませんでした。挙句の果てにロキシー王女を死の間際に追い込んでしまうという大失態。未だに後悔の念が絶えません。何とかもう一度戦い、勝利したいのですが……。」
ノルディカさんが悔しげな顔をします。
ゲイル様は少し考えると、
「では適任者は私ではなく紅炎殿ですな。」
と言って、スコット君と模擬戦をしている紅炎様を呼びました。
「どうかしましたかな?ゲイル殿。」
「じつはノルディカ殿が、東部の街の東に棲息するサソリの大型魔獣との再戦を望んでおられてな。手を貸してやってもらえないかな。」
「なるほど。リベンジですな。そういう事でしたらロキシー王女の木の扉で向かいますか。王女も因縁のある場所ですし。」
それを聞いていたロキシー王女は、
「是非私も行かせてください。私もあの時の恐怖を克服し、乗り越えたいと思います。」
と、右手を握りしめ、やる気を見せます。
ちなみに左手にはタイヨー君の襟首が握られてます。
「くるしい!くるしい!」
呼吸すら必要としないタイヨー君がもがいています。
ノルディカさんは心配顔で、
「大丈夫でしょうか?ロキシー王女。」
と聞きますが、ロキシー王女はもう止まりません。
「大丈夫です!さぁ行きましょう!『木の扉』」
そう言って、ロキシー王女は左手にタイヨー君を掴んで、引きずりながら木の扉をくぐって行きました。
「アトミック王子達は私達にお任せください。」
ゲイル様がそう言って送り出してくれます。
ここにはユキ様もライア様もディーネ様もいますから全く問題ないでしょう。
そう考え、ノルディカさんも木の扉を潜りました。
「ではここはお任せします。」
紅炎様がそう言って最後に木の扉を潜ろうとすると、ユキ様が、
「スコット君の相手は、今日は私がしてあげますからご安心ください。最近学校で暴れていますから、お仕置きも兼ねまして。」
と笑いながら見送りました。
「え?ウソですよね?ユキ先生。お仕置きなんて……」
「さぁ、どうでしょう。ではスコット君、こちらはこちらで始めましょうか。」
ユキ様は笑顔でそう言うと、とても巨大な両手剣を片手でブンブン振り回し始めました。
「ユキ先生……初めて剣を持つ姿を見ましたが……なんですか!?その禍々しい巨大な氷の剣は!?」
スコット君、絶叫しました。




