16 実技試験
いよいよ問題の実技試験です。
ロキシー王女は問題ないでしょう。
タイヨー君、くれぐれも怪我人を出さないように。
これからタイヨー君にとっての難関、実技試験です。
そう言えばタイヨー君は、対人戦というものをちゃんと見たことがありません。
いつも見ているのは、人とドラゴン様の模擬戦です。
タイヨー君自身が人を相手にしたときは、威圧するだけで相手が行動不能に陥りました。
なので、まずは他の受験生の様子を見ることにします。
あ、早速始まるようです。
「では用意してある練習用の武器の中から得意な物を選んでくれ。相手は係員が務める。では最初の者、前へ。」
すると、至って普通の男性が、木剣を片手に進み出ました。
「お願いします!」
そう言うと受験生の男性は、剣を構え相手に向かっていきました。
そして剣を打ち合います。
タイヨー君は、その様子を見てロキシー王女に尋ねました。
「かなりノンビリした動きですね……」
ロキシー王女は少し困ったような笑顔で、
「タイヨー君。騎士でもない商業科を目指す普通の人の剣術はこんなものですよ。」
タイヨー君が普段見ている剣技はとても凄いものなんです。
それを行っているスコット君の特異性をハッキリと実感しました。
「スコット君はとんでもない子供だったんだね。」
「私達の拠点にいるとわかりにくいですけどね。スコット君もフラックスちゃんも、じつはとても凄い子達なんですよ。」
ロキシー王女はよくわかっているようです。
しばらく見ているうちに、ロキシー王女の順番になりました。
「お願いします。」
と言って構えるロキシー王女と係員。
今までの受験生とは明らかに違う、素早い動きで剣を繰り出す王女。
とはいえ相手は試験官。
難なくロキシー王女の攻撃を受けかわしています。
しばらく打ち合った後、終了の合図でロキシー王女の試験は終了しました。
戻ってくる王女に、
「凄いね。しっかり練習してきたんだね。上手かったよ。」
と、労うタイヨー君。
「ありがとうございます。次はタイヨー君ですよ。頑張ってくださいね。」
「うん!行ってくるよ。」
そう言ってタイヨー君は武器の中から木槌を取ると、壊れないように予め強固な性質に木槌を変化させました。
そして、とりあえず片手で木槌を持ち軽く振って、地面を叩いてみました。
ドガン!と大きな音と共に、直径10メートル程のクレーターができました。
どうやらタイヨー君の馬鹿力にも耐えれそうです。
安心したタイヨー君は前に出ていき、
「お願いします。」
と挨拶しました。
そこには顔面蒼白の試験官。
「で、では始める。」
震える声でそう言うと、試験官は先手必勝とばかりにタイヨー君に向けて剣を振り下ろしました。
(ここで予定通り超短距離瞬間移動!)
タイミング良くタイヨー君は、後ろに瞬間移動しました。
「へっ?」
変な声を出して木剣を空振りさせる試験官。
すかさず木槌を地面に軽く振り下ろすタイヨー君。
ドガン!と言う音と共に出現するクレーター。
先程と違うのはクレーター出現と同時に、飛び散る石や土と一緒に試験官も、
「ギャーー!」
と言う叫び声と共に飛ばされてました。
「ストップ!ストップ!そこまで!」
慌てて別の試験官が止めに入りました。
「君の力は充分に分かったから下がってよし!」
そう言うと、尻もちをついて動けなくなっている試験官を引っ貼り起こし、連れていきました。
受験生のところに戻ると、こちらも顔面蒼白の受験生に、困ったような笑顔のロキシー王女。
「まぁ何というかお疲れ様でした、タイヨー君。怪我人が出なくて良かったですわ。」
「出来るだけ力を抑えたつもりだけど……」
申し訳無さそうなタイヨー君。
残りの受験生の実技試験も終わると、
「これで試験は終了だ。結果は1週間後に学校前に掲示されるので各自確認に来るように。以上。」
と、試験官の挨拶で解散となりました。
試験が終了した後の商業科職員室では、今日の試験の話題で持ちきりでした。
「王室からロキシー王女が試験を受けに来ると聞いた時は何事かと思ったが、あの一緒にいたタイヨーと言う少年は何者だ?」
「王室から伺っている情報では、ロキシー王女の命の恩人で、スミス王やノルディカ副騎士団長殿も信頼を寄せる人物だそうです。そしてロキシー王女の婚約者との事です。」
「なんと!?」
「ただ、それ以上の事は機密事項だそうです。」
「何かあるのだろうか……。試験の時のあの攻撃を見たか?攻撃と言うか破壊というか……かなり力を抜いて木槌を振り下ろしたようだったがクレーターができるなんて……。それに回避の動きを見たか?いや……あれを動きと言っていいのか?まったく動く動作を感じなかった。」
「それ程の脅威ともいえる少年がなぜ商業科を受けたのか……。王室の関係者なら騎士科だろ?どう考えても。」
「う〜む……わからん。王室は何かを隠しているのか?ともかく王女とタイヨー君は要注意だ。」
タイヨー君は行商人としての知識を得たいだけなのに、何やら危険人物扱いをされてしまいました。




