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10 実戦……そして王子の思い

模擬戦で善戦するもノルディカさんには敵いませんでした。

そもそも実戦経験が違います。

そこで次はより実戦に近い形で戦うようです。

突然現れた扉から飛び出してきたフラックスちゃん。


「私もお兄ちゃんと一緒に戦うの!」

そう言ってスコット君にしがみつきました。


「えーっと」

スコット君、微笑みながら困り顔。


そこで紅炎様が、

「ではフラックス嬢は私の近くから移動せず、魔法での援護を認めることにしよう。どうかな?ノルディカ殿にスコット君。」


「それは面白い。私の訓練にもなる。是非やってみよう。」


「ノルディカさんがよろしければ、僕は大丈夫です。」


「よし決まりだ。」


観覧席で見ているタイヨー君。

「飛び入り参加しちゃったけど大丈夫かな?」


するとユキ様が、

「まぁあの場所から動かないという条件なら大丈夫でしょう。危なければ紅炎様が守るでしょうし。それよりも中々面白い戦いになりそうですね。」

ユキ様がクスクス笑います。


ノルディカさんが白いレイピアを抜きました。

「さて、真の実力を見せてもらおうか。」


「それは獄炎竜の魔剣……攻撃力も身体能力も剣士の魔力に応じて上昇するとか。では僕も、できる限り頑張ります!」


するとスコット君の何も無い右手に、氷の棒状の物が現れました。

それはやがて、とても美しい氷の剣になりました。

そして左手には、これまた美しい氷の盾が現れました。


「……凄いな。」

ノルディカさんが感嘆の声を上げます。


「それでは両者とも礼。始め!」

紅炎様の掛け声で、ノルディカさんが得意の、高速のレイピアによる突きを繰り出しました。

……いや、繰り出そうとしました。


「なっ!」

ノルディカさんは、その場から動けなかったのです。


すかさず突っ込むスコット君。

氷の剣を横薙ぎに振りました。

堪らず防御するノルディカさん。


「まだまだ!」

ノルディカさんはそう叫ぶと、素早く反撃に転じ、ものすごいスピードの突きを何十回も一瞬で繰り出しました。


思わず盾で防御しながら後退するスコット君。

強烈な突きで盾はかなり欠けましたが、そこは魔法の盾。

すぐに元通りの綺麗な盾になりました。


スコット君が間合いを取ったのを確認し、ノルディカさんは足元を見ます。

すると右足に草のツルがグルグルに絡みついていました。

フラックスちゃんの魔法です。


「既に先手を打たれていたとはな。ふたりとも本当に凄いな。」

そう言ってツルを切り取ると、

「ではこれならどうかな?」

と言って姿を消しました。


次の瞬間、ノルディカさんはスコット君の背後に。


「もらった!」

そう言ってスコット君に突きを繰り出します。


スコット君は慌てて『結界』と叫び、背中に氷の壁を出現させました。

そしてノルディカさんに『氷の槍』を打ちながら間合いを取りました。


ノルディカさんは氷の槍を避け、ふたたび姿を消しスコット君に襲いかかります。

スコット君の側面に現れたノルディカさんが、攻撃を仕掛けました。

しかしその場に留まることが出来ず、滑って通り過ぎていきました。


「なに!?」

またもや驚くノルディカさん。


よく見ると、小さい雪だるまが数体、スコット君を囲んで踊っています。

そして、その足元周辺が、まるでスケート場のようにツルツルに凍っていました。


スコット君は驚くノルディカさんに向かって、氷の槍を放ちながら盾と剣を構えて突っ込んで行きます。

それを迎え撃つノルディカさん。


「ぜやーー!」

気合とともにノルディカさんに斬りかかるスコット君。

そしてその気合とともに転び、ノルディカさんの後方に滑っていくスコット君。

「わぁーー!」


「キャハハハ!」

転んだまま止まらないスコット君に、その様子が面白くて大笑いのフラックスちゃん。


フラックスちゃんの召喚した『雪ん子』達が、踊りながらアチラコチラを氷の床にしてしまったのです。

その様子を見て、こちらも大笑いのノルディカさん。


「ワッハッハ!勝負あったな!勝者はフラックスちゃんだ!」


「ハハハ……フラックスには敵わないよ。」


ふたりとも笑顔でフラックスちゃんのところに向かいました。


「私の勝ちーー!」

フラックスちゃんは満面の笑顔です。


ノルディカさんはスコット君に手を差し出し、握手をしながら言いました。

「スコット君も大したものだ。私の背後からの突きに対して氷の結界魔法を瞬時に作って防ぐとはな。」


「いえ、偶然です。」


「それは違うよ、スコット君。私の攻撃を躱せたのは日々の鍛錬の賜物だ。経験から自然にあの動作が出来たんだよ。誇っていいぞ。」


「有難うございます!」

スコット君は満面の笑顔で元気に返事しました。


「それにしてもフラックスちゃんの精霊魔法には驚いたな。これは戦況を覆す魔法だよ。まったく対処できなかった。私もまだまだだな。ハッハッハ!」


「私の雪ん子ちゃん、凄かった?」


「ああ!とても凄かったぞ!」

そう言うノルディカさんに頭を撫でられたフラックスちゃんも満面の笑顔です。


笑顔でなく驚愕の表情の見せるのは観覧席のスミス王。

「あのノルディカが翻弄されるとは……。いや、フラックスちゃんの精霊魔法は本当に戦況をひっくり返す魔法だぞ!それにスコット君の氷の剣に盾。ノルディカの魔剣と対等に戦えるなんて……」


すると答えるのは白氷竜のユキ様。

「当然ですわ、スミス王。何しろ私の生徒たちなのですから。」


その美しい氷の微笑みにスミス王は身震いするのでした。


この戦いを見ていたアトミック王子は、

「僕もあの二人のようになれるでしょうか。対等に付き合えるでしょうか。」

と呟きました。


ロキシー王女はアトミック王子の頭を撫でながら、

「もちろん自らを鍛えることは大事です。しかしあなたはいずれ国王を目指す者です。彼らを信頼し、彼らから信頼してもらうのです。アトミックが正しく平和のために強い信念を持って行動すれば、信頼できる仲間は必ず力になってくれます。そのためにあなたに必要なものは、強い力より強い心です。」


それを真剣な面持ちで聞いていたアトミック王子は、

「わかりました。僕は強い心を目指します。その為にしっかり勉強し、自分の考えを持ちます。そして仲間を信頼し、信頼を得て、この国の平和を守ります。」

と言いました。

その眼光は強い信念の光を放っていました。

それはアトミック王子の成長の証でした。


「私の出る幕が無い……」

ロキシー王女とアトミック王子が熱く語っている後ろで、スミス王は目に涙を溜めるのでした。



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